第2話 お姫様は大変
この世界の設定なども書いています。
王様の「もう一人の娘になる」宣言について考え込む祐樹。
(見ず知らずの人間を自分の娘に……?
何か裏があるんじゃないのか?
でもこの提案を断れば、衣食住どれも手に入らない。
この提案を受け入れば、最低限の暮らしはできるか……)
祐樹は断った方がデメリットが大きいと判断し、
「不束者ですがよろしくお願いします」
その提案を受け入れることにする。
「そうか、なってくれるか。それでは……」
何処からともなく多数のメイドさんたちが現れる。
祐樹ははめられたかと思い、先の条件をすぐさま反故するような人を王とする異世界の人間の言葉を信じるべきではなかったと後悔していた。
「それではお姫様としての心構えとマナーを学んでもらいます」
メイドの言葉に祐樹は困惑した表情を浮かべていた。
「一体何が起こっているのかわからないようじゃな」
「当たり前だ」と言いたかった祐樹だが、目の前にいるのが王様なので、失礼なことが言えなかった。
「実はそこのバカ娘が姫としての振る舞いが苦手でな。さらには自ら前線にでてくるという始末。そこでお主を影武者代わりにしようとした」
(ひどい言われようだな、お姫様)
言うと厄介なことになりそうだったので口に出さなかった。
お姫様もショックを受けて……
「うむ。お主は私の妹みたいに接するからな。呼び名はユキでいいな」
……いなかった。というより、スルー?
「それではお勉強の時間です」
メイドさんに腕をつかまれ、王様がいる部屋を後にした。
こうして武藤祐樹からユキ・ミュートンとしての生活が始まるのであった。
-勉強部屋-
「……読めない」
ユキは本を読んでいるのだが、書かれている文字が英語のような別の言語で書かれており、全く理解することができない。
「ん? それなら話し言葉は理解できたんだ?」
「それは翻訳魔法が使われているからです」
メイドさんが言うには翻訳魔法とは過去・現在に存在していた言語ならば、話し言葉のみ互いに理解できるという魔法らしい。
メイドさんの言葉を聞いてユキは過去に日本語を使う人がいたのかと心の中に疑念が生まれる。もし日本語を使う人がこの世界にいれば、元の世界に帰れる方法もあるかもしれないと元の世界に戻れる希望を抱く。
「それよりもまずは書きの勉強です」
メイドからこの世界の言語について学ぶことになった。文法自体は英語に似ているが、文字や単語は別ものだったので習得に苦労する。
「それではこの世界について説明させていただきます」
この世界には大きな大陸があって、各王国が自分の領地を統治している。
セウロパ大陸には大きく分けて2つの王国、ユキがいる緑豊かなセウロパ王国とセウロパ王国から少しはなれたところにある極寒のアシロ王国がある。
セウロパ大陸以外にも海を渡ることで遺跡発掘が盛んに行われ、また商業が発展しているカメリア大陸、砂漠が広がるカフリカ大陸といった巨大な大陸がある。
それ以外にも大陸はあるようだが、交流が盛んでないせいか詳しいことは分からないらしい。
この世界の通貨はダラーと呼ばれる。1ダラーで買えるものを列挙してもらうと大体1ダラー=100円程度であることが分かった。
ユキにとっては大学の講義のような形式で進むため、精神的にも楽な授業であった。
「次に魔法の勉強です」
この世界には魔法が存在している。
風、炎、水、土、光、闇属性が存在しており、風は土に強く、土は水に強く、水は炎に強く、炎は風に強い。闇は4属性(風、炎、水、土)に強いが、闇に弱い。光は4属性と調和しているため弱い属性は存在しない。そして光属性を操れる人物から勇者は選ばれる。
「貴方の魔法の資質を特定するため、この水晶玉に触れてください」
ユキが水晶玉に触れると何らかの文字が浮かぶ。まだ言語に関しては習得中のため読めないので、ッメイドさんに読んでもらう。
「貴方の得意属性は炎。スキルは強化。魔力は……一般人レベルです」
お姫様の魔力は何十倍も高く、得意属性は風(本人は火力重視の魔法が多い火属性も習得している)であるため、恐らく魔法の資質は魂に依存しているのだろう。そして魔法の素質がほとんどないことが判明した。
スキルは各個人にいくつか存在しており、ユキの強化スキルは自身の身体能力をあげる地味なものであった。ちなみに姫は6つのスキルを持っているらしい。
魔法の練習を何週間か続けて、ようやくマッチ程度の火が付く程度だった。そのためユキにとっては一番苦痛の授業になっていた。
「それでは剣術の修行を始めるぞ」
なぜかお姫様直々に教えてもらうことになったユキ。ユキはマリアから練習用の剣を受け取った。
「もう少し重いと思ったら、意外と軽い……」
「当たり前だ。いくら身体が私と同じとはいえ、本物の材質でできている剣を渡すはずがなかろう」
それもそうだと思ったユキは剣術の練習を始める。
身体がマリアのものであるためかユキにとっては魔法よりもしっくりときた。だが、肉体的には一番きついというのは当たり前である。
そしてダンスの練習やらマナーの練習もさせられ、ユキはくたくたになっていた。
この世界にもお風呂に入るという習慣があり、ユキは着替えに手間取りながらもお風呂に入ることにした。
そして風呂場にある鏡で自分の姿をまじまじとみる。鏡に映っているのはやや疲れた表情をする長い金髪の髪で碧眼の女性。
(カップ数はよく分からないが)胸もしっかり出ており、くびれもある。間違いなく美人な分類だろう。今の自分の姿を見て本当に元の身体に戻れるのかとため息を吐いてしまう。
今、起こっていることがなかなか受け入れられずにいた。そして身体を優しく洗った後、ユキは寝ることにした。
この話から主人公の名前を祐樹からユキに名前を変更します。