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僕がお姫様!?  作者: ゼクスユイ
第1章 追究編
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第10話 消えた王女

 アシロ王国の一件以来、ユキは1人で(正しくはレモンがいるため1人と1匹だが)悩みこむことが多くなった。そのようなユキの様子をみたメイドのアルはマリアに話したところ、マリアはすぐさまユキの部屋に行く。

「何をうじうじと悩んでいる!悩み事あるなら姉に相談しろ!!」

 ユキの部屋に入るや否やマリアはユキの胸ぐらをつかんで怒鳴る。相談されなかったことがよほど腹にたったらしい。マリアの剣幕に押されてユキは今分かっていること、つまりはこの世界がユキの世界の未来なのかもしれないことを伝える。

「ぼ…私が未来の世界であるこの世界に居続けると、私の世界で私が本来の歴史で行うべきことが行われなくなります。それによってこの世界の歴史自体が変わってしまうかもしれない。いわゆるタイムパラドックスが起こる可能性があります」

 ユキが一人称を訂正したのはマリアがものすごい形相で睨んできたからだ。ユキ一人だけならそこまで大きな影響はないかもしれないが、本来の歴史で生まれてくるであろうユキの子孫まで考えれば、タイムパラドックスが起きてもおかしくはない。

「なるほどよく分からん」

 マリアの一言にユキは思わずズッコケてしまう。

「私には難しいことはよく分からないが、ユキがこの世界に居続けるとよくない影響がでるというわけだな」

「その通りです。だから早く私の世界に戻らないといけない。でもその手段が全く思いつかない」

 そもそもどうやってこの世界にきたのかさえ分からないユキは、例えドロシーが研究しているような最先端の技術を用いたとしても、自分の世界に帰れる手段が思いつくことはなかった。

「こういう時は気分転換も重要だ。

 いいところにカメリアのシューベルト王子から演劇と遺跡見学のお誘いがあった。父上と行く予定ではあるが、私が父上を説得するからユキと行こうではないか」

 マリアはまるで彼氏をデートにでも誘うような目でユキをみる。

(カメリア……僕の推論が正しいなら未来のアメリカのはず。もし、アメリカの建築物があればこの推論が正しい可能性が高くなる)

「ありがとう」

 ユキの中で色々と算段はあったもののマリアと一緒に劇を観に行くことにする。

「でも、私が行っても大丈夫?」

 ユキは王様の代わりに行くことと同じ顔を持つ人間がまずいのではないかということを伝える。

「ユキが平民の格好に変装すれば問題なかろう」

「その格好だとシューベルト王子と一緒にはいられないよね。それに王様の代理という立場上、平民の人がいくのもおかしい」

 自信ありげに言ったマリアは「あっ」という言葉をもらす。そこまで考えていなかったようだ。

「護衛の人とは一緒に行くの?」

「ああ。3人までなら良いと言っていた」

「それなら私が黒スーツに着替えてSP、要人を護衛する警備員のような格好に着替えさせてもらったらそこまで不自然じゃないでしょう」

 またこの案を採用すると護衛2人で3人の人間を守らない以上、危険にさらされる可能性が高くなることため王様の許可が必ず必要になるということも説明した。

「私ではその考えは思いつかなったぞ。さっそく父上に話してみる」

 マリアはその案に乗ることにした。そしてマリアは王様と話し合った結果、アンドレイとエーカーを護衛に連れて行くことで同意させる。

 今晩、ユキの目の前には寝巻に着替えたマリアが仁王立ちしていた。

「1人で悩むなら1人にさせないからな!」

 この日以来、マリアがユキと一緒に寝るようになってしまう。それが良いとこなのか悪いことなのかは本人たち次第だろう。


 向こう側からの招待ということもあり、転移魔法陣の使用許可が下りている。レモンを連れて行くわけにはいかないので、今回もお留守番だ。ちなみに護衛の二人はユキと同じく黒スーツに着替えている。鎧を着て劇場に行くわけにもいかないらしい。

 転移魔法陣がある建物から出たユキたちが見たのは、レンガでできた建物がズラリと並んでいるヨーロッパ風の街だった。街にはたくさんの店が並んでおり、広場ではオークションが開かれていた。

「古の魔導書、1000ダラーからスタートだ!」

 商人たちの手が上がり、値段をつけていく。

「2000!」

「甘いな、俺は5000!」

 そしてどんどん値段が上がっていき、すぐさま6桁目に突入した。その活気にあふれた様子を見たユキはさすがは商業が世界一栄えているといわれることはあると思いながら王宮に向かった。王宮は小高い丘の上にあり、周りを石でできた城壁で囲まれて門の前には門番が数人立っていた。マリアたちが門の前に到着すると門が開いていく。

「お待ちしておりました。アルベルト王、マリア姫」

 門からシューベルト王子が現れ、丁重な態度で2人を迎える。シューベルトの案内に従い、マリアたちは奥へと進んでいく。王宮の中には高価そうな彫刻が数多く並び、アルベルト王は興味深そうにそれらを見ながら、1つの要件を切り出す。

「アルトゥール王のご容態はどうですかな」

「アシロ王国から魔王の呪いの解呪方法を教えてもらったおかげで、わが父は順調に回復しております」

「それはよかったです」

 アルベルト王とシューベルト王子のやり取りを聞いたユキはここにも魔王の呪いがあったのかと思う。

「暗い話はここでにしておきましょう。このたびはお二人に我が国で最も評判が高い劇団の演劇を見ていただくためお誘いしました。

 また、最近になって見つかったばかりの遺跡にも案内させていただきます」

「それは楽しみですな」

 と楽しそうな声で答えるアルベルト王と興味なさそうに聞いているマリアであった。


 劇場には立て看板で劇団の名前が大きく描かれ、長い行列ができていた。シューベルトたちは関係者用の出入り口から入ったため、行列を並ぶことはなかった。VIP席から劇場を見ると満員だったことから、ユキはこの劇団がどれだけの人気があるかはすぐさま分かる。

 演劇には家に帰りたい少女と頭がよくなりたいスライム、心がほしいデュラハン、勇気がほしいドラゴンが協力して魔王をたおすというどこかで聞いたような物語であった。

(少し登場人物が違うけど、これってオ●の魔法使いだよね)

 演劇を見たユキの正直な感想である。ちなみにマリアは途中から寝ており、アルベルト王とシューベルト王子は楽しそうに演劇を見ていた。また、エーカーは(立場上ユキも)護衛のためと言いVIP席の中に入り、アンドレイは不審者が入らないように部屋の外で護衛することになっている。

「私が見た中でも最高に素晴らしい劇でした」

「それはなによりでございます。次は遺跡案内をさせていただきます」

 シューベルトがパチンと指を鳴らすと、空からペガサスが現れる。ペガサスは馬に羽が生えたモンスターで、知性も高くむやみに人を襲うようなことがないことから、領土が広いこの国では空を移動する手段として飼っている人もいるらしい。もっとも個体数が少ないことから値段が高く、貴族や王族でないと買えないが。

 そしてユキたちはペガサスに乗り、遺跡の方へと向かった。マリアたちが空からの風景を楽しんでいる一方で

(飛行機事故以来、空を飛ぶ乗り物は苦手だから早く遺跡についてくれ)

ユキは飛行機事故によるトラウマを思い出し、下を見ないとように目をつぶり、振り落とされないようにペガサスにしがみつく。


 ユキたちが遺跡に着き、辺りを見渡すとそこでも商業を営んでいる人が多数いる。遺跡の絵が描いてある饅頭らしきものやクッキー、縁結びグッズ、架空のモンスターをモチーフにしたグッズを売っているようだ。

(発掘現場と聞いたから、黙々と作業している人がたくさんいるとおもったけど、意外に活気あふれているなぁ)

 この光景をみたユキの素直な感想である。シューベルトについて行くと洞窟が見えてくる。

「新しく見つかった遺跡はこの先の洞窟の奥にあります。なお、モンスターがいないことは確認済みなのでご安心を」

「つまらんな」

 と文句を言うマリアであった。どうやらモンスターと戦えることを期待していたらしい。

 洞窟の中に入っていき、少し狭い通路を通って奥へと進むと急に広場が現れる。

「ここが最近になって見つかった遺跡です」

 広場には考古学者らしい人が資料をもって、作業員と思われる男性たちに指示している。広場には何に使われるのかわからない古ぼけた機械が多数存在していた。また広場自体はドーム状になっている。

「これは素晴らしい。この遺跡は世紀の大発見かもしれませんな」

 アルベルト王はこの遺跡の価値を一瞬で理解したらしい。

「その通りです。この遺跡にはオーパーツと思われるものが多数発掘されており、現在確認されたもの数十個あります。しかもこの遺跡にはまだ奥があり、そこに関してはまだ調査中です」

 うんうんと頷くアルベルト王と?を浮かべるマリアであった。

「そして私たちがこの遺跡で発見し、復元した銅像がこちらにあります」

 シューベルトがこことは別の場所に案内する。その場所は天井が無く、吹き抜けになっていた。そこにあったのは左手は失われているが、右手に松明をもった女神像だった。

(これは間違いなく自由の女神像……やはりここはアメリカだったんだ)

 自分の仮説が正しいと思い始めるユキであった。そしてユキたちは先ほどの広場へと戻った。

「やはり遺跡現場はつまらなかったな」

 とマリアが適当な場所に座り、辛辣なことを言い放つ。

「これこれ、そんなことをいうでは……」

 アルベルト王がマリアに対し、注意しようとしたとき遺跡が虹色に光りだした。そして古ぼけた機械が音を鳴らし動き始める。

「一体何が起こっているんだ!?」

 シューベルトの疑問に答えるものはおらず、考古学者や作業員がパニック状態になり逃げ出していく。

「皆さん、落ち着いてください」

「皆の者、落ち着くんだ」

 エーカーたちがパニック状態になっている人たちに声をかけている中、ユキはすぐさまマリアの傍に駆け寄った。

「うっ…………」

(この感じ、この世界に来た時と同じだ……)

 ユキは胸を押さえ、苦しみだす。

 そして光が収まるとマリアの姿はなく、ユキが倒れていた。


 慌ててシューベルトが事情を聴くためユキを起こそうとする。するとサングラスが落ち、そこにはマリアと同じ顔を持つ女性がいた。

「マリア姫が二人……?」

 アルベルト王は娘たちのことやこれからの対応に悩んでいた。

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