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僕がお姫様!?  作者: ゼクスユイ
第1章 追究編
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第9話 Cの世界

 ドラゴン騒動から数週間が経った日、ユキは王様のアルベルトとその護衛であるセルゲイらと共にアシロ王国の王宮へと向かっていた。なお、レモンはマリアと一緒に留守番している。

 アシロ王国の第1王女はかつて魔王によって呪いをかけられており、危篤状態にあったが最近になってその呪いを解く方法が見つかったらしい。その解呪が成功した祝いとして様々な著名人にパーティへの案内が届けられた。本来ならばマリアが行くべきだが、招待状の最後の方に

『娘のドロシーもマリア姫との対談を心から頼みにしております』

 と書かれており、それを見たマリアが

「あんな小難しいことを聞くくらいなら、ドラゴンを1人で狩る方が良い!」

 と拒絶反応を起こしたため、ユキが行くことになった。

(魔王にかけられた呪いは魔王討伐したら解けるものだと思っていたけど、現実はゲームよりも甘くないみたいだ)

 呪いはかけた本人が死亡しても効果が続くようにするため、かけられた呪い自体を特定の手順で解かなければならない。簡単な呪いならば、解呪方法も容易ではあるが、複雑な呪いとなるとその道の専門家が集まって何か月もかかってしまう。ユキは不謹慎ではあるがまるでパスワードの解除方法みたいだと思っていた。

 なお第1王女にかけられた魔王の呪いとは対象者に死んだ方がマシと思うほどの苦痛を与え続け、苦痛を与えている間にショック死しなければ、魔王の任意のタイミングで殺されるというものだ。魔王が討伐されたため、第1王女は魔王によって殺されることなく、死までの時間を大きく稼ぐことができ第1王女を救うことに成功した。


「アシロ王国は距離が遠く極寒の国と聞いたので、寒い中何日もかけていくのかと思っていましたけど、転移魔法陣を使うとは思いませんでした」

 転移魔法陣とは魔法陣から特定の人物のみを別の魔法陣へと移動させる手段のことである。転移魔法陣を使うには魔法陣を持っている者(この場合は王様同士)が普段封印している転移魔法陣を両方とも解除する必要があるため、一方から乗りこまれて襲われるような心配はない。また、簡易転移魔法陣と呼ばれる使い捨てのマジックアイテムはあるが、作れるものが少数しかいなため値段が高く一般人が気軽に買える品物ではない。

 今回、ユキたちが使用した転移魔法陣はセウロパ王国からアシロ王国の首都の近くに行くことができるものである。

「ユキ姫がそう思っても仕方がありません。この転移魔法陣は軍事的な意味でも重要なものであるため、王宮の中でも一部の人間にしか知らされていません。またアシロ王国には特殊な結界が張っており、極寒の地から身を守っていると聞いております」

 ユキの言葉に答えるセルゲイ。それも仕方が無いと思ったユキは特殊な結界や魔法陣に興味はあったものの機密上にかかわる話はやめて王宮へと向かった。


「本日は皆さんに集まって頂き誠にありがとうございます。つもる話はありますが、まずは乾杯を」

 アシロ王国の王様であるデルマイユ王が直々に乾杯の音頭をとる。

 デルマイユ王の隣にいる白い髪の女性が第1王女であるリリーナ姫だ。本来は妹のドロシーや母親のカテリーナとブロンズの髪をもっていたが、魔王の呪いによる影響によって髪の色が変わったらしい。しかし、彼女の髪の毛が白くなったところで美しさは変わることなく、むしろ彼女の持つ不思議な魅力によって幻想的な美しさを醸し出していた。

 リリーナはユキのところへ向かい、互いに会釈した。

「マリア姫、魔王を討伐していただきありがとうございます。おかげさまで私の呪いを解くことができました。あの勇者様のことはお気の毒に……」

「リリーナ姫、勇者ガイの死はショックでしたが、今では気持ちの整理はついていますのでお気になさらずに」

「そうですか……」

 ユキの言葉を聞いて悲しそうな表情するリリーナ。

 なぜリリーナが悲しむのだろうとユキが疑問に思っていると

「マリア姫、お久しぶりです」

 ドロシーがユキのもとにやってきた。

「実は新しい魔力エネルギー機関の理論ができたのですが、少しマリア姫の意見を聞きたいのですがよろしいでしょうか」

(あちゃ~、この前のパーティでちょっと不明な点を聞いたのがまずかったか。マリアなら間違いなく寝ているからなぁ)

 過去の自分の行動に反省しながらも、

「ええ。かまいませんわ」

 ドロシーの意見を受け入れ、別室に案内される。


 ドロシーに案内されたのは本が所せましと置かれている部屋だった。右を見ても、左を見ても、正面を見ても、上を見ても本しかなかった。頭上にある本棚は魔法による重力制御で本の落下を防いでいるらしい。

「ここにある本は世界中から集めたものですわ。マリア姫も興味があるのでしたら読んでもかまいませんわ」

 ユキは近くにあった本棚から本を1冊取り出して読んでみた。相変わらず異世界の言葉で書かれているが、エネルギー関連の本ということはなんとなくは分かった。

「私が新たに書いた論文はこれですわ」

 ドロシーが本棚の中に埋もれていた机から論文を取り出し、ユキに渡す。ユキは真剣な表情でその論文を読み始めた。

(確かにこの理論通りにエネルギーができるなら画期的だけど、この実験で用いられている薬品や機材が公かな素材を使っているものが多いような気がする。これくらいの質問なら大丈夫かな?)

 ユキはドロシーにエネルギー生成に必要な器具などのコスト面について尋ねた。

「やはりそこが唯一の弱点となっているのは分かっていましたが……

 もう少し、コストダウンの方を考えてみましょう。貴重なご意見ありがとうございます」

 ドロシーが礼をすると、ユキの背後にあった本棚が倒れドアを塞いでしまった。

「論文を書く前に片づけをしないといけませんわ」

「私も手伝いましょうか?」

「……よろしくお願いします」

 ユキの突然の発言に対し、ドロシーは少し考えた後頭を下げた。


 二人は本棚を元の位置に戻した後、本棚から落ちてきた本や論文を拾い始める。ユキは本棚にそれらを戻していくうちに1冊の論文を見つけた。

 タイトルには

『A new energy theory

H.Kondo,J.Smith,C.Clark,R.Carter』

 と書かれていた。

(この論文、シンデレラと同じく英語で書いてある)

 本棚にはほとんどの本が入っており、もう少しで片付くだろうと思ったユキはドロシーにこの論文のことを尋ねる。

「この論文はどこから手に入れたのですか?」

「えっ~と、確かそれはそれなりに古いものでどこで手に入れたかまでは分かりませんわ。この国がアシロ王国ではなくクルシア王国と呼ばれていた頃といえば分かるでしょうか?もっとも解読できているのは5~6割程度ですが」

 この国がアシロ王国と呼ばれるようになったのは稀代の王様であるアシロ王が即位してからで、それまでは大国が注目するような国でもなかった。その国を今ではセウロパ王国と比肩するほどまで成長させたアシロ王の政治的手腕が大きなものだと言わざるを得ない。

「ええ、よくわかります。およそ200年以上くらい前のことですね」

「さすがにその論文を貸すわけにはいきませんが、今でしたら特別に読んでもかまいませんわ」

 ユキはドロシーに感謝しながらも再びその論文に目を通し始める。文字はシンデレラの時とは違い、一部はかすれているが、大部分に関してははっきりと書かれていた。

 そしてその論文の発行年を見たとき、ユキは大きく目を見開いた。

『Accepted 12 October 2815』

(2815年10月12日に受理しました!? まさかこの世界は未来の世界とでもいうのか……)

 ユキはおよそ800年先の日付を見て驚愕の表情を浮かべる。

(クルシアのときにこの論文を手に入れたのだからこの世界は少なくとも西暦3000年以上の世界ということになる。それにこの世界に来てからの不思議に思ったことはある。

『America』(アメリカ)→『C』amaeria(カメリア)

『Europa』(ラテン語でヨーロッパ)→『C』europa(セウロパ)

『Africa』(アフリカ)→『C』africa(カフリア)

『Russia』(ロシア)→『C』russia(クルシア)

 地球の地域や国名の頭に『C』を付けるだけでこの世界の地名や国名になるのも偶然じゃないのか。それならこの『C』には何の意味があるんだ?)

今はそれを裏付ける物証がほとんどないため、気持ちを無理やり切り替えてドロシーにその論文を渡す。

そしてユキとドロシーはパーティ会場に戻ると

「ドロシー、貴女が研究のことを聞くのを構いませんが、マリア姫のことも考えて行動するように」

ドロシーはリリーナに怒られた。そしてリリーナはユキに謝罪する。

「マリア姫、申し訳ありません」

「いえ、私もドロシーの研究については興味がありましたので……」

頑張ってドロシーをフォローするユキであった。

その後、マリアのところに定期的にドロシーの難解な論文が送られるようになったのはもう少し先のことである。

この世界の地名で気づいた人もいるかもしれないけど、ネタ晴らしの回です。

サブタイトルのCの世界とは、マリアの世界のことでした。

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