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~プロローグ~

山ガール


~プロローグ~


メグはリビングの床にゴロゴロと寝転がりながら、大好物のフライドポテトを満面笑みで食べている、その様子を奥のダイニングで、京子がファッション雑誌のページを、パラパラと興味なさそうな顔で、めくっている。


メグは塩の付いた指をペロリと舐め、ダイニング方へ頭だけ向けると、ファッション雑誌を読んでいる京子へ話しかけた。


「ねぇねぇ、京子たんさぁ、今度、山登りに行かない?」

「はぁ~」


京子は、その誘いに鬱陶な顔をしながら、ファッション雑誌を閉じると椅子から立ち上がり、寝転がっているメグの方へ歩み寄ると、その隣に座わった。


「どうしたの、急に、メグが山登りなんて、そんなん、めんどくさいし、疲れるから、私、行かないよ」


京子はメグが食べている、フライドポテトを1本抜き取り、口に頬張った。


「京子たん、山ガールって、知ってる?(私のポテト、今、食べたでしょ!キッ!)」


メグの鋭い目つきが京子に突き刺さる。


「(怖っ、ポテト食べたの見てたのか)山ガール?あ~、それ、流行に流されてる、バカな女達の事じゃないの」

「ふむぅ~、そうきたか、そういやぁー、京子たんって、流行を追わないよね」

「はん、別に、興味ないだけ、山なんて、行かないよ、あっ、そううだ、ヤーナ、やらないと」


床から立ち上がり、ケースからDVDを取り出し、デッキにセットした。


「ねぇ、京子たんって、いつも、そればっかりやってない?(モグモグ)」


床をゴロゴロしながら、テレビの前に接近し止まった。


「メグもやれば良いじゃん、そんな、ポテトばっかり食べてないでさぁ」


大好物のポテトを侮辱されたメグは、立ち上がる姿勢は見せたものの、立ち上がるの面倒なのか、そのまま床に寝転がりながら、ほっぺたを膨らまして、怒っている意思表明だけをしている。


「なにぃ~、そんな、ポテトってね、ポテトを馬鹿にしないで欲しいな~、それにね、ばっかりって、昨日は、食べてないもん!」

「昨日、なんか、外に食べに行かなかった?」

「そりゃ~、蒙古タンメンは食べたけどさぁ~」

「蒙古タンメン?、また、食べたの?好きなだね~メグ、相当ポイト溜まったでしょ」

「うん、溜まったよ、蒙古タンメンパーカー貰ったもん」

「えーっ!パーカーって、そんなのラーメン屋で貰えるの?へぇー、そりゃー、そうなるわ」

「ひどっ、あたい、傷つくわぁ~、(モグモグ)だってさ、蒙古タンメンが私を呼んでいるんだもん(こっちだよ~って)だから、食べにいってあげないと(モグモグ)」

「そんで、メグ、ヤーナ、やらないの?」


京子は、リモコンを操作して、運動メニューを選んでいる。


「だって、それ、すごく疲れるんだもん、嫌だ~よ」

「疲れるって、山登りも一緒じゃん、疲れるだけよ」

「違うもん、山は楽しいんだよ、空気は良いし、お弁当も美味しいし、だから、行こうよ!行こうよ!」

「(結局、食べ物もんじゃん)はい、はい、邪魔、邪魔、どいて、どいて」


京子に蹴り転がされて、寝転がっていたメグは、部屋の隅に転がっていった。


「転がりやすい子だな~」

「転がりやすいなんて、失敬な!まったく、もう、ここ、私の家なんだよ、何で、私がどかないといけないのよ、居候の分際で、この~(あれれっ、コロコロ)」


京子は、リズムに合わせながら、床に座ってストレッチを兼ねた準備運動を始めた。


「何これ、メグのパンツ?」

「はーん、そうだけど」

「はーん、じゃないよ、なんで、パンツが床に転がっているのさぁ、もう、ちゃんとタンスに仕舞ておいてよ~(派手なんだね、これ、サイズ小さくないの?)」


京子は、レースのパンツを指で摘んでヒラヒラさせている。


「あっ、それ、いいの、明日、穿くやつだから、その辺に置いておいて」

「ったく、だらしないなぁ~、ほぃっと」


メグのフリフリのパンツが宙を舞っている。


「だからって、投げなくてもいいじゃん」


再び顔を膨らまして、怒った表情をしても、テレビ画面の動きに合わせて、リズミカルに踊っている京子に、メグの思いは伝わなかった。


「~ワン~ツー~スリー~」


部屋にリズミカルな音楽が流れるなか、メグは追いやれた部屋の隅で、ポテトを幸せそうな顔で食べている、その姿を横目で見ながら考えを巡らせた。


こんな風にメグとは昔から付き合っている友達のように、お互い遠慮せずに言いたい事を言っているけれど、メグと知り合ったのは半年位前に、私が滅多に買い物しないコンビニで、滅多に買わないフライドポテトを買った時に、たまたま、私の後ろにメグが居たらしい。


ど うやら、私が買ったフライドポテトが新製品で、それが、最後の1個だったらしい、そして、私が会計をしている時に、凄まじく後ろから痛嘆の表情で私を見つめている子がいたので、怖くて店から出ようとした時に「私のポテト・・・」という悲痛な声が聞こえたので、怖くてポテトを譲ってあげたのが、メグとこう して付き合うきっかけとなり、時々、メグの家を訪れては、こうして、居候してまったりとした時間を過ごすのが、私のライフスタイルになった。


そんで、私がメグの家に来る度に、コンビニでフライドポテトを大量に買うものだから、すっかり、コンビニの店員に、覚えられてしまって、店内に入ると急いで店員がポテトを揚げ始める始末になってしまった。


まぁ、それは、別に構わないけど。


でも、こんな、得体の知れない私を、こんなに長い間、自分の家に泊まらせておいて平気なのかな?と、余計な心配をしてしまう、メグは私の事を京子けいこたんと呼ぶけど、私の名前は「優華ゆうか」なんだけど・・・。


京子は、私の高校の親友の名前なんだけど・・・。

どうしてメグは、私の事を京子たんと呼ぶのかは謎のまま、私もめんどくさいから訂正しないでいる。


まぁ、メグはあの通り(手をパンパンして、なにをしてんだ)、ざっくばらんで、ずぼらな子だけど、裏表が無くて素直で、本当に良い子だなって思っている。

私も、つい居心地が良くて居座ってしまっているけど、本当は迷惑しているのかな?


「ねえ、メグ」

「なんすかぁ?」


メグは最後の一本を口にほおばり、手に付いた塩をパンパンと払っている。


「私、邪魔かな?」


メグは空になったフライドポテトの紙袋を愛おしそうに見つめた後、フライドポテトの塩が予想以上に床に散らばっている事に気がついた様子で周囲をキョロキョロ見回して、その床の塩の処理を考えているのだろう。


「はぁ~ん、別に~」

「そう、なんか、私、メグの家に居すわちゃって、悪いかな?、とか、思って」

「そんな事はないよん、だって、さぁ、夕飯を作ってくれるでしょ、掃除もしてくれるでしょ(サッサと)それから、ポテトも買ってくれるから、私的には、京子たんに居てもらった方が助かるんだけど(塩無くなった)」


結局、適当な物が見つからなかったのか、面倒なのか、メグは床に落ちた塩を手で拡散させて、目の前から塩の粒が無くなった事で満足している。


「そう、メグがそう言ってくれるなら、もう、ちょっと、居ようかな(ポテトの塩を散らすなっ!)」

「あん、そうしてくれると助かる、そういや、京子たんは、彼氏、いるの?」


メグは、近くあったバッグの中をのぞき込みながら、何やらゴソゴソと何かを探している。


「はぁ~、なに言ってるの!メグ、彼氏なんていねーんですよ」

「ふぅ~ん、そうなんだ、それじゃ、やっぱり、山に行こうよ!(あった!たこ焼き!)」

「なんで?男と関係ないじゃん、そんな、山なんて、行かないよ~」


メグはバッグの中から、たこ焼きを発見し、臭いを嗅いでいる。


「メグちゃん?また、食べるつもりなの?(てか、それ、どこから出してきた?)」

「いや、いや、お客さんから貰った、たこ焼きをバックに入れたままにしてたのを思い出しちゃったもんで、つい、まぁ、腐ると勿体ないし、京子たんも食べる?」


ソースの匂いが部屋に充満している。


「いらないよ、ってか、それ、いつもらったやつなの?」

「たぶん、うーん、昨日かな、あれっ、一昨日だったかな~、忘れた」

「それ、腐ってないの?」

「あん、知らん、(パクッ、モグモグ)あー、でも、美味しいから、平気なんじゃない(ちょい冷たいやチンしようかな~)」

「なにそれ、美味しい基準なの」


「(コロコロ)」


メグはたこ焼きの箱を持ったまま、器用に転がってきた。


「(メグちゃん、座って食べなよ)」

「そんで、京子たん、山登りどうするんの?(パクッ、モグモグ)」


「だから、行かないって!言っているでしょ!」


思わず、強い口調で言ってしまった、そんなにムキにならなくても良かったと、言った後に後悔したが遅かった。


「京子たん・・・そんなに、怒らなくてもいいじゃん・・」


メグは急に(´・ω・`)としてしまった。


「ゴメン、ゴメン、でも、なんで、そんなに、山に行きたいのさ、疲れるよ、それに、虫がウザイよ」

「もう、いいもん、京子たんが怒るから、もう、いいもん」


メグは完全にイジケ虫になっていた。


「京子たんと一緒に山に行きたかったのになぁ~(コロコロ)もう、京子たんなんて(コロコロ)」

「だから、ゴメンってば、分かった、分かったから、そんで、いつ、行くのよ」

「えっ、今、行くって言った!」

「日にちによるけどね・・」


いじめ虫は撃退され、メグに戻った、その嬉しそうな顔を見てしまうと、もう、行かないとは言えない状況だった。


「本当に、やったー!うんとね、まだ、行く日は決めてない、照美と相談しないと」

「それじゃ、連絡ちょうだい」

「うん、うん、分かった、メールする!」


メグが猫のように足元にすり寄ってきた。


「それと~ねぇ~京子たん」

「な、なにっ(気持ち悪いよ)」

「お弁当、宜しくねっ!」

「はい、はい、お弁当ね、分かりましたよ、メグの分も作ってくればいいのね」


メグはニッコリと頷いた。

しかし、まだ、何か頼み事がある様子で、人差し指を口に咥えている。


「あと~ぉ」

「まだ、あるの?」


メグは京子のその言葉を待っていた。


「ポテト、大盛りでっ!ねっ!」

「はい、はい、フライドポテトをお弁当に入れておけばいいのね」

「やった~\(^O^)/!楽しみ、楽しみぃ~」

「こりゃ、三田さんにお弁当を頼まないとダメだな」


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