嫉妬
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「妖狐との同盟、受け入れよう。」 「っ・・・・・、桜夜様、それは真でこざいますか!?」桜璃についての説明をした老将が、立ち上がった。 「ああ、地竜の一族の血を絶やすわけにはいかない。まあ、この同盟も、利害が一致しているからこその同盟だろうがな。葛葉妖夜殿に伝えろ。月下桜夜は快諾した、と。」 こんな話があったのは、1時間程前。会議が終わり、桜夜は部屋でゆっくりしていた。 「日下、遙、か。私と真逆だな・・・。月の下と、日の下・・・。私もできることなら、そちら側に行きたい・・・。」しかし、自分の立場を忘れてはいけない。地竜の一族の血を絶やすわけにはいかない。しかし、桜夜には、遙への嫉妬とも羨望ともいえるものが、芽生え始めていた。自由な彼女と、重荷を背負う自分。この差が、ひどく腹立たしかった。 「月下、桜璃・・・どんな人だったのだろうか・・・神童と呼ばれる程だったと聞いたが・・・。」 自分とは程遠い存在だろう。天竜の姫に嫉妬しているような未熟な自分とは、月とすっぽんの差だろう。しかし、負けたくない。 「・・・お姉ちゃん?どうしたの?」 「いえ、何でもないわ。少し寒いだけ。」 実際は大事であるような気がする。なのに。妹にさえ、そのことを伝えられない。弱い自分を、情けない自分を今更のことながら激しく嫌悪した。