記憶
「ねえ、お姉ちゃん。またあの人のこと考えてるの?」 「ええ。多分、あと数十年は忘れられないと思うわ。」 ---お前を認めてくれるのは、俺だけだぜ? 認めてしまえよ、楽なほうがいいだろ? ーーーそんなことない!そんなことない・・・ あれから何年も経ったが、忘れたことは一度たりともない。私の中に、嫌なやつがいたなって、記憶として残るんだ。あいつの言ったとおり、全てが無に還るわけじゃない。 ---俺の存在も、これで終わりだな・・・・ 私の中には、ちゃんと残っている。 ---お前も、いつかは必ずこうなる。こうなって、忘れられていくんだよ・・・ 誰かの中に、必ず残る。親しい友人、家族、親戚、知り合い・・・親しい人なら、悲しむだろう。まあ、それも主観であって、世界レベルでみれば、私の存在などちっぽけなもので、私1人がどうなったとしても、世界は何事もなかったかのように廻り続けるだろう。世界は昔から、そうして来たのだから。 「この話は終わりにしましょう。気分が悪くなるわ。それよりもそろそろ夕食にしましょう。もういい時間よ。」 「う・・うん、そうだね。」 半ば強制的に話を切り、自分を情けないと思いつつも、記憶から逃れるように首を振り、台所へと向かった。
ありがとうこざいました。