カラダ
刹那はボクが守るのだ。 あの女に、壊させなんかさせない。 ボクは刹那と常に共にいる。誰よりも近いところにいる。ボクが1番、刹那のことを分かってる。 だって、ボクは。 刹那と一緒にいる、身体なんだから・・・。 ボクは刹那と、一緒に痛みを分かち合ってきた。虐待されていた頃も、あのときも。 今度こそ、刹那を守る。 刹那は全てを赦す。だけどボクは赦さない。あの女は、ボクが必ず殺す。刹那は、きっとボクを怒るだろう。 だけど、そんなこと構ってられない。 「ねえ、刹那。キミは、ボクを赦すかな?それとも、やっぱり怒るかな?」 どっちかは分からない。だけど、どっちでもいい。 ・・・矛盾に気がついた。さっき自分で刹那のことを誰よりも分かってるって言ったじゃないか。なのに、今、分からないと言った。 「ボクもやっぱり人間の身体だな・・・今は。」 そう自嘲気味に笑って、ボクは眠りについた。 「そう・・・。あなたは、そう思っているのね・・・。」 え? 今の声は・・・刹那の? 「私は・・・そうね。あなたのように、そんな勇気は持てないわ。」 そうだろう。刹那は、義憤を嫌うから。 「でもね。あなたのように、私のことを本気で心配してくれる人がいることは、とても嬉しいわ。」 「そうなんだ。ボクは、刹那の身体なんだから、そう思うのは当然だよ。」 「その“当然”が嬉しいのよ。ありがとう、私の身体。」 そう思ってくれたら嬉しい。ボクには刹那しかいないのだから。