夢と現
「・・・ん?」 目が覚めた。しかしそこは、私の部屋ではなく、銀世界だった。白い雪が、辺り一面を覆いつくしている。だがどこか懐かしい。 「久しぶり。刹那。」 「姉さん・・・・!?姉さん、なの・・・・?」 夢の中であることは分かっていたが、私は姉に抱きついた。 「・・・ごめんね、刹那。置き去りにして。」 「姉さん・・・姉さん・・・っ!」 「刹那。あなたはもう、遙ちゃんを憎んではいけないわ。」 「ううん。憎んでないよ。憎めないから。」 「そう・・・良かった。」 一瞬穏やかな表情を見せてから、姉はすぐに顔を真剣なものにした。 「刹那。あなたにはこれから、大きな試練が待っているわ。しかも、1人では乗り越えられない。遙ちゃんと一緒に乗り越えるの。勿論、慎玖朗くんとも一緒に。」 「遙と、慎玖朗と・・・?」 「そう。遙ちゃんが人間じゃないのは、本人から聞いているわね?」 あれはいつだっただろうか。確か2年前。私は遙と出かけていた。そのとき突然頭上から石が落ちてきたのだ。近くの銭湯のボイラーに異常が起こり、爆発したのだ。そのとき遙は、周りに気づかれないように結界をはり、石をはじき返した。そして私に「ごめんね、刹那。私は、まともな人間じゃない。私は天の竜の一族の姫なんだ。」と言ったのだ。 「天竜はあなたたちの世での変わらないこと、つまり、時間や空間を操ることができる。そして、雨と雷も操れるの。でも、遙ちゃんは少し強すぎる。人間を襲える力はないと言っているけど、それは本当の力に気づいていないからなの。あの子の秘められた能力を解放すれば、おそらくオーストラリア大陸丸々1つを死の世界にすることができるわ。でもそれは、同時に本人の命を1つ使うことよ。つまりもし力を解放すれば、遙ちゃんに待つのは死よ。」 「そんなっ・・・遙を死なせたくないよ!」 「うん。だから、これから言うこと、よく聞いて。信じるかどうかは、あなた次第よ。」 目が覚めてから、私は決心した。 遙を救う。絶対に。姉と約束した。