死んだ自分
僕の名前は、菅原慎玖朗。僕は一度死んだ。いや、身体が使えなくなったわけではなく、僕の身体はまぎれもなくここにある。僕は生まれ変わった。あの頃の自分には、もう戻らない。僕がどうして一度死んだのか、それをここに記そう。 「おい。慎玖朗。お前はこの先、どう生きていくのだ。彼女を、妹を、お前は亡くした。もう泣いたって、彼女は戻らないんだ。あいつを、政也を殺さないと、妹はお前を許しはしないだろう、きっと。」僕の中の誰かが、僕を追い詰める。僕の心は答えることができなかった。 「お前が、政也を殺すなら、俺も協力してやるよ。さあ、どうするんだ?」 僕は生まれ変わる。今度こそ、みんなを守る。自分の命なんて、惜しくはない。だけど、死のうと思うこともしない。 「・・・僕は、生まれ変わる。あいつを、殺す。こんな弱い心なんて、死んでしまえ。・・・たった今、慎玖朗は死んだ。僕が新しい慎玖朗だ。身体は、僕に従え。」 あるいは、弱かった僕を引き裂いたのは、今の僕ではなく、身体だったのかも知れない。そして身体は、全権を僕に託したのだ。今までの弱い僕に、僕の身体は一切従わない。 「そうだ。それでいい。今までの自分を、殺せ。超えていけ。妹の、若菜の仇を取りたいなら。」 「・・・行くぞ。政也は、僕が殺す。遙の為にも。」 遙は僕の大切な友人だ。政也は遙も傷つけた。僕の大切な人達を奪っていく政也を、許すことなんて、僕にはできそうもなかった。 「あの経験があるから、今の僕があるんだ。お前もそう思うだろう?」 それを疑ったことは、僕には一切無い。