表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

中学校


---


中学校に進学しても、義則を取り巻く状況は大きく変わらなかった。学習面では支援者学級での学びが続き、授業内容を理解するためには常に周囲のサポートが必要であった。一般の学級と比べれば学習スピードも異なり、同年代の子どもたちの理解力や発言力を目の当たりにするたびに、自分の遅れを強く意識せざるを得なかった。しかし、義則はそのことを悲観的に受け止めるだけではなかった。むしろ、自分のペースで理解できる方法を模索し、少しずつでも身につけることを日課としていたのである。


教室の中では、義則は目立つ存在ではなかった。クラスメートたちは活発に話し、冗談を交わし、友人同士で固まって遊ぶことが多かった。体育の授業でボールを追いかけたり、音楽の時間に歌や楽器の演奏を楽しんだりする場面もあったが、それはあくまで「参加できる活動」のひとつであり、クラス内での中心的な存在になることはなかった。義則の周囲には、親しい友人がごく少数しかおらず、彼の存在は、クラス全体の中では控えめに位置していた。しかし、義則自身はそのことに過度に悩むことはなかった。むしろ、少数の友人とのやり取りや、自分だけの時間を大切にすることに価値を見出していた。


義則は、日々の学校生活の中で、自分なりの世界のルールを少しずつ見つけていった。授業の合間や休み時間、彼は机の上にノートを広げ、日々の出来事や感じたことを文章に書き留めることが多かった。時には絵を描き、想像した世界や登場人物を形にすることで、自分の内面を整理し、心の安定を保った。また、義則は他者とのやり取りにおいても、自分なりの距離感を意識するようになった。無理に輪の中に入ろうとするのではなく、友人との関わりを選びながら、自分のペースで関係を築くことを学んでいったのである。


支援者学級での学習は、義則にとって一種の安心感でもあった。理解が遅れたとしても、教師や支援者が丁寧に説明してくれる環境は、彼にとって心強い支えであり、学びの喜びを感じる機会でもあった。難しい課題に取り組む際には、周囲の助けを受けつつも、自分で考え、工夫しながら進めることを繰り返す中で、少しずつ自信を積み重ねていった。義則にとって「分かることの喜び」は、同年代の子どもたちと同じ速度で理解することよりも、はるかに大きな意味を持っていたのである。


義則の中学校生活は、外から見れば地味で平凡に映ったかもしれない。しかし、彼にとっては、毎日淡々と過ごす時間こそが、自分を形成する重要なプロセスであった。クラスメートと同じスピードで成績を伸ばすことはできなくとも、読書や創作、観察を通じて得られる知識や感覚は、義則だけのものとして蓄積されていった。休み時間に机に向かい、本を読みながら静かに考えを巡らせるその姿は、外部の騒がしさとは無縁の、自分だけの世界を築く営みであった。


また、義則は自分の限界や特性を理解することを通じて、自己管理の能力も身につけていった。授業の進行や友人との交流の中で、自分が疲れるタイミングや、集中力を失う瞬間を把握し、無理のない行動を選択することを覚えたのである。これは、周囲との比較ではなく、自己のペースを尊重する姿勢の表れであり、義則が孤立を恐れずに生きるための戦略でもあった。


義則にとって、中学校時代は決して華やかな時間ではなかった。しかし、その地味で静かな日々の中で、彼は自己理解を深め、内面的な世界を豊かにし、淡々とした生活の中に自分だけのリズムとルールを見つけていった。その過程は、後の人生における困難や挑戦を乗り越えるための基盤となるものであり、義則の人格形成に欠かせないものであった。


結局、義則は友人が少なく、クラス内で目立つ存在ではなかったものの、孤立感に押し潰されることなく、毎日を淡々と過ごすことを通じて、自分なりの世界を築く術を習得した。支援者学級での学び、少数の友人との関わり、そしてひとりでの読書や創作――すべてが、義則の中学時代の生活の中で、静かだが確かな成長の証として積み重なっていったのである。


---




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ