第六話 明坂高校オープンキャンパスやで
クレーム騒動から数週間後、オープンキャンパスの季節がやってきた。明坂高校では体育館での説明、キャンパスツアーの内容で学校を知ってもらい、入学を検討してもらおうとしている。
オープンキャンパスの運営には、教師だけでは人手が足りず、部活動や生徒会の人たちの協力が必須である。
ゴールデンウィーク後で乗り気ではない生徒も多い中、生徒会は絆が深まったこともあってか、やる気が溢れていた。
(田辺)「なんか、去年までは案内される側だったのが懐かしく感じます」
(松原)「よくあるやつですよね(笑)」
(宮浦)「高校に入ってから時間の流れが早くなったよなぁ」
(真辺)「後輩とか良く来てたのが懐かしいわ」
(田辺)「高三やと、今年の中三が知っている最後の後輩になりますもんね」
そんな雑談をしながらも受付をこなしていた。晴天の空のもと、校門からはたくさんの受験生がやってきた。やる気がないと言っても、イメージは大事。他の生徒も笑顔で迎えていた。
キャンパスツアーは、二人一組で校舎の説明をしながら巡る形式である。案内する生徒たちが体育館での説明が終わるのを待っていた。
(宮浦)「ペアは俺とつむぎ、真辺先輩と優斗で合ってたっけ?」
(松原)「そうですね」
(真辺)「会長と副会長ペアで受験生増えそうやな(笑)」
(宮浦)「それは分かりませんけどね(笑)」
そんな小さな笑い声が体育館前に広がった。だが、キャンパスツアーの時間が刻々と迫るにつれ、緊張している生徒も増えていた。
(宮浦)「Aグループの方出発しまーす!」
生徒会らしく先頭のグループは生徒会が担当することになった。
(宮浦)「ここは図書館です。蔵書数はここらへんでは一番多い、三万冊です。時間を取るので端から端まで見てってください!」
(宮浦)「俺ってここと中庭、音楽室で合ってたっけ」
(松原)「そうですね。会長、噛みませんでしたね(笑)」
(宮浦)「――もしかして期待してた?」
(松原)「そんなことないですよ(笑)」
そんな雑談の後に受験生をまとめ、自習室前に案内していった。中学校とは比にもならない蔵書数で驚いた様子の受験生も多かった。
――数分後 自習室前――
(松原)「ここは自習室です。主に三年生が使っていますが、登録さえすれば一年生の頃から使えます。余談なのですが、あまりにも静かな環境で、椅子を引くことすら慎重になります(笑)。ここでも時間を取るので実際に座ってみたりしてください!」
そんな小ボケに受験生の緊張がほぐれたようにウケていた。
(宮浦)「うますぎん?」
(松原)「何回もしてますからね」
(宮浦)「俺も頑張らな」
褒められた瞬間、少し頬を赤く染め、照れた松原であったが、時間が迫っていたため、すぐに説明モードに戻った。宮浦もその変化に薄々気付きかけていたが、受験生の案内に集中していた。
(宮浦)「次は中庭をご案内します!」
――中庭前――
(宮浦)「ここは中庭です。ここでは色々な部活動の発表だったり、ベンチで昼食を取ったりします。この季節は花粉症を持っていない方は程よく暖かいのでおすすめですよ(笑)」
松原から学んだテクニックを活用した宮浦であったが、少しの笑いが起きただけであった。
――教室前――
(松原)「ここはクラスの教室になります。四十人クラスで少し、詰め詰めになっていますが、すぐに慣れると思います(笑)。時間が少し押しているのであまり時間は取れませんが、ぜひ座ってみてください」
(宮浦)「ウケなかった――」
(松原)「まぁまぁ(笑)即興にしてはウケてた方じゃないですか」
――音楽室前――
(宮浦)「ここは音楽室です。ギターやピアノに触れることが出来るので、音楽が好きだったり興味がある人には選択授業で取ってみても良いかもです。中で吹奏楽部が練習しているので少し覗いてみてください。あっ、入り口は狭くなっているのでゆっくり入ってくださいね」
(松原)「もうボケるのはやめたんだ――あ、やめたんですね!」
(宮浦)「なんで言い直した?」
松原の声がほんの少しだけ柔らかかった気がした。
――終了後――
(宮浦)「今日はありがとうございました!皆さんが無事、志望校に合格出来ることを願っています!こちらからお帰りください。」
(松原)「最初以外は真面目でしたね」
(宮浦)「それ褒めてる?」
(松原)「――一応」
宮浦は、少しの違和感を胸の中に残しながらも、明坂高校オープンキャンパスは無事終了を迎えた。




