第四話 交流会の準備やで
一足先に生徒会室に戻ったのは、会場視察組の宮浦と真辺であった。
(真辺)「備品確認組遅いな」
(宮浦)「まだ十一時半ぐらいなんで、もうすぐ帰ってくると思いますよ」
(真辺)「――正直さ、颯真って好きな人おるん?」
(宮浦)「えっ、いないっすけど(この人に言ったら絶対バラさせる――)」
(真辺)「ふーん、おる顔しとるけどなぁ」
(宮浦)「いや、いないっすよ(焦)」
(真辺)「ほら、焦っとるやん(笑)」
――数分後――
(宮浦)「――だからいないって言ってるじゃないすか」
(真辺)「いやい――」
(田辺)「戻りましたー」
(松原)「なんのお話をされていたんですか?」
(真辺)「ああ、颯真の――」
(宮浦)「進路の話しててん(焦)」
(松原)「そうなんですね。私もそろそろ進路について考えないといけませんね」
(真辺)「二人とも真面目すぎん?私なんかまだ考えてないで」
(宮浦)「それはそれで遅すぎますって――」
(田辺)「あのー、仕事ってとりあえず終わりですか?」
(宮浦)「後は備品のリストを確認して、買うものをリストアップしたら終了やな」
(宮浦)「リストアップはしとくから先帰ってくれてええで」
(田辺)「先輩一人に仕事押しつけるなんてできないっすよ」
(松原)「そうですよ。だって――」
(宮浦)「いや、このくらいの量大丈夫や」
(松原)「そうじゃなくて、会長はドジだから一人だとミスするんじゃないですか」
(宮浦)「余計なお世話や――」
(真辺)「まぁまぁ颯真もこう言ってるんやし、帰らせてもらおうや」
(松原•田辺)「真辺先輩が言うなら――」
(宮浦)「なんで俺はあかんねん――(小声)」
――数分後――
(宮浦)「さて、リストアップするか」
そう独り言を呟き、机へ向かった。
――にしても今のところは隠し通せているがいつ、つむぎを好きと悟られるか時間の問題やな。
特に真辺先輩と優斗が怖いな。何言われるかたまったもんじゃない――
でもなぁ、告白とかしたことないし、勝手が分からんから誰かに相談したい気持ちもあるんよなぁ。
――とりあえず仕事終わらすか
――数十分後――
(先生)「ありがとうな。わざわざこんな時間まで残ってくれて」
(宮浦)「まぁ、仕事受けたんは自分なんで――」
(先生)「真面目やねぇ。とりあえずこれで申請しとくな」
(宮浦)「よろしくお願いします!」
――駅到着後――
(田辺)「あっ、会長じゃないすか」
(宮浦)「あれ、一本逃したん?」
(田辺)「トイレ行ってたら乗り遅れました(笑)」
(宮浦)「ドジやな(笑)」
(田辺)「会長に言われたくないっすよ(笑)」
(宮浦)「うるせぇ(笑)」
(田辺)「そういえば先輩って英語出来ないって言ってましたけど、勉強しないんですか?」
(宮浦)「流石に去年で懲りたから、猛勉強したぞ」
(田辺)「そうなんですね。実は僕も人のこと言えんほど英語出来ないんで松原先輩に教えて貰うことになったんです。」
(宮浦)「そうなんや。つむぎなら相当上達できると思うで。まぁ英語に限らずやけど」
(田辺)「先輩も教えて貰ったことあるんですか?」
(宮浦)「いや、俺は無いな。忙しそうやし――」
(田辺)「先輩ってそういうとこ気にしますよね」
(宮浦)「まぁな」
(田辺)「あっ、そろそろ電車来ますね」
(宮浦)「そうやな」
そうして、二人とも何事もなく家に着いた。
――帰宅後――
(宮浦)「――気にする、か」
俺は、正直自分のことが苦手だ。完璧主義、正義感が強いにも関わらず、争い事を嫌い、避けてきた。本当は間違っていると思ったことにははっきり言うべきなんだろう。
でも、いざその場になると空気を読んでしまう。
つむぎに告白できないのも、その延長なのかもしれない。
分かっているはずなのに、勇気が出せないなんて、情けない。
そもそも、そんな情け者の自分がつむぎと釣り合うのだろうか――
もし、断られたら――
もし、自分の積み上げてきたものが一気に崩れたら――
そう思うと、何もかもが怖くなる。今、隠せていること自体が不思議なくらいだ。
――隠せているのか分からんが
結局、ずっとこのままなのかもな。
――数日後――
(松原)「まず、英語はどこまで出来るんですか?」
英語を教えてもらう約束をしていた松原と田辺は、誰も居ない生徒会室で、勉強していた。外では、微かに部活動の声が聞こえるだけだった。
(田辺)「一応、日常会話ぐらいは出来ますけど、交流までは流石に――って感じです」
(松原)「単語は出来ますか?」
(田辺)「そこそこ出来ると思います」
(松原)「じゃあ話は早いですね。交流でよく使うフレーズを用意しとけばいいんです。それも中学英語くらいのレベルなら、忘れても思い出せますしね」
(田辺)「なるほど!でも、どんなフレーズを覚えたら――」
(松原)「交流内容から逆算したらいいんですよ」
(松原)「例えば――『Where are you from in Australia?』とかですね。交流会では基本四人一組で行動しますから、地名が分からなくても会長がフォローしてくれると思いますよ」
(田辺)「てっきり一人で交流すると思ってました」
(松原)「一人で交流する人も居ますけど年に一人、二人ぐらいですね」
(田辺)「安心しました――一人だと緊張してうまく話せないので――」
(松原)「田辺くんならしっかり話せますよ。後はアウトプットも大事ですね。誰かと英語で会話してみるのが一番良いと思いますよ。」
そして、松原と田辺は最終下校時間まで、フレーズを考えて書き出していた。
(田辺)「こんな遅くまで付き合ってくれてありがとうございます!」
(松原)「いえいえ、後輩に教えるのも先輩の役目ですから」
(松原)「私は自転車なので先に帰らせていただきますね」
(田辺)「はい!ありがとうございました」
――翌日の放課後――
(宮浦)「買い出しの件についてなんやが――どうする?」
(田辺)「えっ、決めてなかったんですか!?」
(宮浦)「流石に俺の一存で決めるわけにもいかんからな」
(真辺)「みんなで良いんじゃない?これから半年協力するメンバーやから、交流の代わりにもなるやん」
(松原)「そうですね。買い出す物にもよりますが、一人とか二人では足りないかもしれませんし」
(宮浦)「そうやね。じゃあ、交流会までに全員行ける日を探さんとな」
(宮浦)「一応、今週の土日のどっちかが良いと思ってるんやが――」
(真辺)「空いてるで」
(松原)「私も、今週は空いてますね」
(田辺)「僕は土曜日は部活ですけど、日曜日ならいけます」
(宮浦)「じゃあ、今週の日曜日でいい?」
(全員)「はい!」
正直、つむぎと出かけれると思わなかった。まぁ、今回は生徒会の交流と仕事に専念するか――
――日曜日――
(真辺)「田辺以外は揃ったな」
(宮浦)「あっ、田辺からライン来ました。えっと――『てっきり四条駅集合だと思ってて、今から河原町に向かってます(汗)』らしいです」
(真辺)「河原町でって言ってたのに――」
(松原)「まぁ、私達は基本、梅田で買い物しますから間違えるのも無理がないですよ」
(真辺)「でも、つむぎちゃんはなんで迷わんかったん?自分と颯真は迷ったで」
(松原)「両親が京都の人なので良く京都に来たことあるんですよ」
(真辺)「へー、京都出身やったんや」
――数十分後――
(田辺)「すみません(焦)完全に勘違いしてました――」
(宮浦)「まぁ、こんな事もあろうかと、皆には若干早めに集合時間伝えてたから大丈夫や」
(田辺)「絶対、自分が遅れてくるからでしょ」
(真辺)「分かってるんやったら、工夫しぃや(笑)」
(田辺)「それが出来たら苦労しませんって――」
(宮浦)「じゃあ、買い出しするか」
(真辺)「何買うん?」
(宮浦)「先生に提出したのは風船、テーブルクロス、案内板の装飾品類ですね。食品系は学校側が用意してくれるみたいです」
(真辺)「意外と買う物少ないんやね」
(松原)「参加者に準備させますからね。我々は会場の整備と運営だけで良いので」
(真辺)「交流メインというよりかは、センスが問われるってわけか」
無事合流した生徒会メンバー達は、某百貨店へ足を進めた。休日の百貨店はたくさんの買い物客で賑わっていた。
(田辺)「やっぱり、日曜は人多いっすね」
(宮浦)「そうやな。くれぐれもはぐれんようにな」
(真辺)「小さい子やないんやから(笑)」
(松原)「田辺くんならありえますけどね(笑)」
(宮浦)「確かに(笑)」
(田辺)「流石にはぐれませんよ。最悪、連絡取れるんですから(笑)」
(宮浦)「保険かけとるやないかい(笑)」
――二時間後――
風船や装飾品類をどこで買うか相談しながら、百貨店を出て、百均の前で四人は立ち止まった。
(真辺)「結局、百均に落ち着くんやな」
(宮浦)「予算は出来るだけ使って欲しくないって言われたからな」
(松原)「そういうところ、私達の学校はケチですもんね」
(真辺)「えっ!?」
(松原)「どうしましたか?」
(真辺)「いや(震)、つむぎちゃんの口からケチって言葉が出ると思ってなくて」
(松原)「私にどんな印象抱いてるんですか(笑)」
(宮浦)「まぁまぁ、とりあえず選ぼうや」
(真辺)「せやね。で、どんな色がええんかな」
(松原)「無難に白とかですかね?」
(田辺)「白だけだと単調すぎません?」
(宮浦)「いや、そう意味で言ったんちゃうやろ(耳打ち)」
(松原)「確かに、白だけだと単調すぎますね」
(田辺)「そっ、そうですよね(焦)」
(宮浦)「国旗に使われてる色を買うのはどうかな?」
(松原)「いいですね」
(真辺)「プラスで、何色か買ってもいいかもしれんけどね。オーストラリアの国旗やと何色やろ」
(田辺)「赤、白、青ですね。確かにこれだけやと少ないかもしんないっすね」
(宮浦)「じゃあ、一人ずつ選んだ色を採用するのはどう?四色増えるし」
宮浦以外の三人は快諾し、棚に並んだカラフルな風船から、それぞれ好きな色を選んだ。
(真辺)「いやー、早めに終わったな」
(松原)「四人で来て正解でしたね」
(田辺)「お昼食べません?」
(宮浦)「言うと思った(笑)」
(田辺)「なんで分かったんですか!?」
(宮浦)「もう十二時前やからな」
(松原)「もうそんなに経っていたんですね」
四人は近くにあったファミレスに入った。店内は昼時とあって混んでいたが、ちょうどテーブル席が空いていた。
それぞれ好きなメニューを注文し、しばし昼食を楽しんでいた。買い物などを通して仲良くなった四人は、自然と会話も弾んでいた。
(真辺)「田辺は良く食うよな」
(田辺)「食は楽しみの一つですからね」
(松原)「完全に花より団子派ですね(笑)」
(宮浦)「回転寿司に行っても俺は十五皿ぐらいが限界やけど、田辺は二十皿以上食うもんな」
そんな他愛もない話をしながら、それぞれ食べ終えていった。
(田辺)「おいしかったですね」
(宮浦)「せやな」
(真辺)「この後はもうなんもないんやったっけ?」
(松原)「会長が買う物を忘れてなかったら、何もないはずです」
(宮浦)「何回も確認したから大丈夫やで。知らんけど」
(真辺)「最後の一文で不安になったけど、大丈夫やろ」
(田辺)「あんまり会長は『知らんけど』って使いませんもんね(笑)」
(宮浦)「クセやって(笑)」
そんな話をしながら四人は、各々家に帰った。その姿は、どこか頼もしく、どこか楽しげだった。
春風の中、四人の買い物は幕を閉じた。




