22話「休み明け」
ページを開いて頂きありがとうございます。
あじたにと申します。
温かい目で見守って頂ければと思います。
ゴールデンウィークの連休は長いようで短く、一瞬で終わった。
結局、山登りの後にしたことと言えば魚釣りだったり現地の自然由来の美味しい名産品を食べたり…
なにか特別な事した訳ではないのだが、とても楽しく満足の出来る休日となった。
これも全てアリアさんのお陰である。感謝してもしきれない。
さて、それはそうと僕はまたしても危機に瀕している。
もちろんだが、今回も特段命に危険はない。というよりも今回のゴールデンウィークに遊びすぎてしまった代償というべきだろうか。
ともかく今、大変な事態に陥ってしまっている。
場所は休み明けの学校。時間は三限目の休み時間。
「アンタ…中間テストどうするのよこれ…」
僕の机には小テストの結果が三教科分並べられており、その結果を見た美しき天子様であるエルがドン引きしている…といった状況である。
「ひぃ…」
このゴールデンウィークでは、課せられた宿題こそ初日に片付けることが出来たがその内容まではまるで定着していなかった。
そしてその初日以外まともにペンを握っていなかったのだから、当然確認のための小テストでいい点数など取れるはずもなく…
「中間開始まで一週間、終わりね」
「諦めないでよ!」
本当にこの天使は冷たい。冷徹!残忍!ばーかばーか!
「それにしてもアンタがここまで大コケするなんて珍しいんじゃない?最近はマシになってきてたんでしょう?」
それでも平均程度だけど…と軽く鼻で笑ってくる。
一言余計を意識的に付け足してくるその嫌味っぷりは休み期間が明けても健在のようだ。
「それが、ちょっと遊びすぎちゃって」
「へぇ、あの吸け……過保護はどうしたのよ」
吸血鬼…と言いそうになって口ごもった。この場は学校、周りにはクラスメイトが沢山いる中でそのワードはまずいと思ったのだろう。
だけどアリアさんを『過保護』呼びするのは如何なものだろうか…まぁ間違っては無いのだろうけど。
「それがアリアさんに遊んでもらって…」
このゴールデンウィークに何をしていたのかを軽くエルに説明をした。
その話を聞いたエルは、僕の予想とは違って意外な好感触を示した。
「いいじゃない、自然の中身体を動かるのは良い事よ。変に家に籠っているよりよっぽど健在ね」
「エルも自然とか好きなの?」
「好き…というか、良いものだと思っているわね」
「同じじゃないの?」
「同じじゃないわ」
ただならぬこだわりを感じる。あまり深く聞くのも野暮だろう。
「うぅ、でもどうしよう…」
エルに現状を説明したところで何も変わらない。どうにかしてこの窮地を乗り切らねばならない。
でなければ中間テストであり得ない点数をたたき出してしまう…
「仕方がないわね…私が勉強教えてあげるわよ」
「本当に!?」
「感謝しなさいな。放課後みっちりと指導してあげる」
「ありがとう!」
なんてありがたい申し出だろうか。
エルはかなり勉強が出来て、それは僕の学年の間では噂になるほどだ。
というのも、エルは天使を自称する可笑しな子だと一時期は陰で笑いものにされていたのだが、その圧倒的な学力で周囲の冷笑を黙らせたのだ。
この学校はテスト結果の上位者トップ10が発表されており、エルはその中で堂々の一位を獲得している。
ちなみに僕は当然のように圏外である。そもそも一年の頃は平均以下だったので話にならない。
「先生に言って放課後に教室を使えるようにお願いしておくから、よろしくね」
「そこまで…ごめんね、ありがとう」
そうしてエルは次の四限目となる授業の準備をするため、自分の席へと戻っていった。
ちなみにエルの席は、ド真ん中に位置する僕とは違い、一番後ろの窓際の席である。よく漫画の主人公が座っているポジションである。
いいなぁ…羨ましい…
「ねね、湊音くん」
僕もエルに習い次の授業の準備をしていると、横から声を掛けられた。
クラスメイトの女の子だ。
少し前、掃除の時間にエルと一悶着あったその子である。
今日はいつも高めに括っている髪の毛を下ろしている。イメチェンだろうか。
「どうしたの?」
僕はエルには見せない笑顔を見せた。
「エルちゃんと放課後に勉強会するの?」
どうやら先ほどの僕とエルの会話を聞いていたらしい。隣の席なのだから、自然と耳に入ったのだろう。
「うん、そうだよ」
「私も参加…しちゃダメかな?」
本来ならば、快く良いよと言いたい所なのだが…なにしろ彼女はエルと仲があまり良くないように見える。
ならば一緒に勉強するのは何とも気まずいのではないだろうか。
いやまてよ…もし中が悪いならそもそも参加しようとは思わないだろう。
何よりも彼女の表情がハッキリとしない。彼女の顔からは勉強をしたいという思いが伝わってこないのだ。
いまいち合わず、たまに落ちる視線。抑揚が不自然に大きい声、やたらと触る髪。
なにか別の意図、目的があるように見えてならない。
……考えすぎだろうか。
「一回エルに聞いてみないと」
分からない。と言いかけた時だった。
「へぇ~~~~~?」
僕の左後方からエルが近づいてきた。
丁度いいタイミングだったので、彼女も一緒に勉強会に混ぜても大丈夫かを聞いてみようと振り返った。
するとなんっとも悪人顔のエルがそこにはいた。
天使というか悪魔だった。
「……ちっ」
するとまた別の方向から舌打ちが聞こえてきたよな気がしたのでまた振り返ると、先ほどまでは笑顔だった女の子が滅茶苦茶に嫌そうな顔をしている。
やっぱ仲悪いんじゃんこの二人…
「君さぁ…懲りないねぇホント。する気の無い勉強会に参加してどうするのさ」
けたけたと笑う天使様の姿がそこにはあった。
「うるっさいなぁアンタに関係ないでしょ?」
「あるよ、そもそも勉強会に誘ったのは私なんだからさ」
「あっそ、でも私がそれに参加するかは私の勝手でしょう?」
「相も変わらず理屈が嫌いで非理屈が好きなんだねぇ。でも私と湊音の二人きりの方が色々都合がいいから諦めてくれる?」
「二人き…そうなの?湊音くん」
わぁ……怖いよ。たまに見かける女の子の喧嘩はどうしてこんなにも怖いのだろう…
しかもその渦中に僕がいるだなんて…やだなぁこわいなぁ…
「え…と……まぁ、そうかな。元々二人でって約束してたから」
エルからの圧の籠った目線を向けられ、僕はそれになるだけ従うように言った。
「…そっか、湊音くんがそういうなら仕方ないね。ごめんね、また声かけるね」
そういって女の子は教室から出て行ってしまった。
もうすぐ四限目が始まる時間だが…お手洗いだろうか。
「ねぇ、エルさ…あの子と何かあったの…?」
仲が悪いのは見ていてわかるが、それもここ最近からの様に思える。
何かきっかけというか、理由はあるのだろうかと思いふとエルに聞いてみた。
「あったけど、些細でしょうもないことだよ。アンタが気にすることじゃない」
「そ…そう…?」
「それよりも、放課後どの教化勉強するか考えときなさいよ」
そう言い残してエルは自分の席へと戻っていった。
それにしても先ほどの女の子の態度、どうにも引っかかる。
エルの毒舌は今に始まった事では無いが、彼女があそこまで感情を表に出していたのは違和感だった。
それに彼女が教室を出た時、二人程ついて行ったのも気になる。愉快な雰囲気ではなかったし、僕と話していた女の子はかなり苛立っていた様子だった。
……頭が痛くなる。それに、胸もきゅっと閉まるような感覚もある。
いけない、また意味もなく深く考えすぎている。
休み明け早々、こんな事では先が思いやられるなと、僕は心の中でため息を吐いた。
お付き合い頂きありがとうございました。
少しでも楽しめましたでしょうか。
今後の糧になります。感想、評価等よろしくお願いします。




