プロローグ
ページを開いてくださり、ありがとうございます。
あじたにと申します。
連載というものが未知数で、分からない事だらけではありますが、最低週一の更新を目標に頑張りたいと思います。
温かい目で見守って頂ければと幸いです。
僕が中学に進学したばかりの頃、母が亡くなった。
思い返せば母はいつも体調が悪かったと思う。そんな母を、父は懸命に支えていた。僕も当然、自分に出来ることをした。その時は小学生だったから大した事は出来なかったし、大変な日々ではあったけど、母はそれでも笑ってくれたしいつかは元気になると思っていた。
しかし母の容体は突然悪化し、入院生活を余儀なくされた。父は凄く落ち込んでいたと思う。けれども、僕を不安にさせない為にいつも元気なふりをしていた。
「大丈夫、お母さんはすぐによくなるよ。きっと大丈夫。だから、いつ帰って来ても良いように家はきちんと掃除しておこうね。一緒に頑張ろう」
父はそう言っていた。今思えばこれは父親自身にも言い聞かせていたのだろう。その日から「大丈夫」と口にする頻度が増えたような気がする。
程なくして、母は天国へと旅立った。
とても悲しかった。僕は一晩中赤子のように泣いた。父はそんな僕を抱きしめてくれたが、やっぱり泣いていた。
母が旅立ってしばらくは辛かった。顔を思い出しては涙腺に水分を貯め、思い出を振り返れば静かに溢れ落ちる。そんな毎日を過ごしていた。
もし母が見ていたら、叱咤激励の言葉を叩きつけてきたかもしれない。母は病弱ではあったが、芯の通った強い人だった。
ようやく涙が枯れたと思った時には、母の死から一年が経っていた。立ち直るのにこれだけの時間を使ったが、その実形だけのものであり日々を惰性で過ごしているのが現実だった。
そうして、悲しい過去から逃げるよう歩き出した頃だ。
「やぁ、こんにちは。湊音くん」
時刻は夜九時。
新円の形で月が空に鎮座し、普段の闇夜に比べると幾分か明るいそんな日、とある人物が僕の前に現れた。
月光が照らしきめ細やかに反射する白髪。暗がりでも目が釘付けになるほど美しい真紅の双眸。
満月の日だからこそ輝く異質な容姿。
____それは夜の帝王と名乗るに相応しい。
「あなたは……」
「私はアリア、吸血鬼だよ。これからよろしくね?」
――この瞬間から、人生の歯車がもう一度動き出す。
この物語は、僕と吸血鬼が共に歩むお話。
お付き合い頂きありがとうございました。
少しでも楽しめましたでしょうか。
今後の糧となります。感想、評価等よろしくお願いします。




