作品をかくあなたへ、読むあなたへ
パソコンを開き、表示されている書きかけの小説を見つめた。そこにあるのはミステリー小説。今度こそは挫折しないと誓った作品が挫折に近づいている。理由はひとつ、第二の被害者をだれにするか。話の見通しを持たず飛び飛びに書きたいシーンを考えてしまうので、この後活躍しないというキャラがほぼ存在しない状態になってしまったのだ。今までの作品もこうだった。それならば、見通しを持ってから書き始めればと思うかもしれないが思い立ったら書いてしまうのが人間というものだ。趣味の範囲で小説投稿サイトに作品を投稿しているが完成した作品などない。読んでくれていた方には申し訳ないとも思うが思いつかないものは思いつかない。そうこう考えているうちに趣味に費やせる時間が終わりに近づいていた。しょうがないと思い男は、パソコンを閉じやらなければならないに取り組み始めた。
次の日の会社で男はミステリー小説について考えていた。主人公の周りにはおらずこの後活躍しないキャラとは何だろうか。その瞬間、ふと主人公たちが捜査をしている本館ではなく別館でただ一人捜査をしているやつがいたじゃないか。そう、警部の部下の若い男だ。この男ならこの後活躍することもなければ、死んで困ることもない。あぁ自分は天才なのではないだろうか。そんなことを考えこのキャラをこの位置に配置してくれた過去の自分に感謝する。考える点はもう一つ。こいつを殺すことに決まったのはいいがどうやって殺そう。主人公たちからも微妙に遠いし気づかれない可能性もある。ならば、思い切って別邸ごと燃やすとかにしたほうがいいのだろうか。では、本館に火が移らないようにするには?男は、仕事をしていた手をいったん止め腕組をして考えた。どれだけ考えてもいい案が思いつかないので適当に防火シャッターとかでいいか。明らかに燃え移りそうだが、小説の中の世界なんて所詮フェイクなんだしまぁ奇跡ということにしておけば何とでもなるだろう。そう考えた男はさっそくスマホのメモ帳機能にそれを書き込み、仕事に戻った。
仕事が終わり、家に帰宅した男はすぐにパソコンを開いて書きかけのミステリー小説の続きを書いた。犯人が別館に火をつけ防火シャッターを下ろす。燃えた別館と若い男の焼死体ができたところで一回休憩するとこにした。座ったまま伸びをして目の前の白い壁を見る。白いはずの壁は赤やオレンジの光がゆらゆらと揺れていた。火か?なぜ?今日は火を使ってない。放火?そこまで考えた男ははっとしたように立ち上がった。こんなこと考えている場合ではない。ここから脱出して消防に電話しなければ。その場から動こうとしたとき男は後ろから殴られ気を失った。男は気を失う前、若い男の声を聞いた。
「まだ活躍できたのに殺しやがって。燃やしやがって。お前も同じ目に合えばいい。」
そこには、燃えた家と会社員の男の焼死体があった。
この小説を読んでいるあなたは創作活動をしますか?するのならきっとストーリーの中で一度はキャラクターを殺したことがあるでしょう。刺殺ですか?銃殺?それとも魔法を使った殺し方ですか?まぁ少なからずキャラクターの恨みは買っているでしょうね。だって、まだ活躍できるかもしれないストーリーを勝手にリタイヤさせられたのだから。それにきっと死ぬのは苦しいはずです。妬み、苦しみ、恨み、私たち作者はキャラクターに殺されてもおかしくないとは思いませんか?私の体は今、燃えています。
作品を創作されないそこのあなた。自分は関係ないと思われたでしょうか。いいえ、あなた方がその本を開くたび、サイトを開くたびそのキャラクターは物語の中で死んでいってしまいます。そりゃ、作っている私たちに比べれば恨みは少ないと思いますが、、、まぁどちらにせよ私たちを楽しませてくれるキャラクターたちに感謝して物語を読まなければいけませんね!