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推し活ラプソディ〜お騒がせなプロポーズ?〜

作者: 昼月キオリ

交際がスタートしてから二年が経ったある日。

海月さんから呼び出された。

最初にデートをした水族館が近い公園だ。

大事な話があるという。




二人はベンチに座った。


海月「最近あんまり会えてなかったよね」

晴香「そうですね」

海月「ごめんね、仕事忙しくて」

晴香「いえ、ちゃんとイベントで会えてますから」

海月「それは会ったうちに入らないよ、僕からは晴香の姿見えないことが多いし」

晴香「仕方ないですよ、海月さんは有名人なんですから」


 

そう、海月夕生さんは人気声優だ。

かたや私は売れない小説家。

私とスタッフ二人が開設した小さなラジオ番組

「黒い森のさくらんぼケーキ」、略して「黒森ラジオ」。

その黒森ラジオに海月さんが出演して以来、

魚ちゃんと福ちゃんも交えて仲良くさせてもらっていたのだけど・・・。



ある日、海月さんから告白をされた。

一度目の告白の時は、私では海月さんには釣り合わないからと断った。



しかし、それからすぐに島谷さんのイベントがあり、

海月さんもゲストで来ることになった。

なので私もイベントに参加することにした。

遠くから眺めていられたらそれでいいと思っていたからだ。

イベントなら直接顔を合わせることもないし。



と思っていたのもつかの間。



イベントが始まってすぐに海月さんがステージに立つと大々的に二度目の告白をされた私は腹を括った。

そして無事に交際をスタートしたのだ。




 


二年。

別れ話が出るにはちょうどってところだろう。

私と海月さんとでは住む世界が違い過ぎるのだし。

交際できただけで幸せだった。

そもそも付き合えたこと自体が不思議なくらい。

最初はもの珍しさから私に興味を持ってくれていただけだと思う。

個性的な人が好きだって言っていたし。

恋はだいたい二〜三年で冷めるとも言うし、面倒くさい私に愛想を尽かしても何もおかしくない。




海月「それで、話なんだけど」

晴香「待って下さい!最後に録音していいですか?

あなたの声をしかと心に刻みたく・・・」

海月「え!?やだよ!ん?てゆうか最後ってなに?」

晴香「だって、別れ話ですよね?

そうなったら直に声を聞けるのも今だけですし、

例え別れ話でもあなたの声ならば・・・」

海月「ちょっと待って!別れ話じゃないから!」

晴香「え?違うんですか・・・?」


晴香はキョトンとしている。

 

海月「島谷君が言った通りだったな・・・」



島谷"晴香さんのことだからいきなり呼び出したら別れ話だってパニくるんじゃない?"

海月"いやいや、二年だよ?その間、喧嘩もなく楽しく過ごしてきたんだし、さすがにプロポーズだって分かるでしょ"



島谷君の方が晴香のこと分かってたのが悔しい。

むぅ・・・。



晴香「??」

海月「とにかく、別れ話じゃないから安心して」

晴香「そ、そうですか・・・じゃあ悪い話じゃないんですね?」

海月「うん、いい話だよ、じゃあ話していい?」

晴香「待って下さい!だったら尚更録音させて下さい!海月さんの甘々ボイスを・・・」

海月「だからダメだってば!それはさすがに恥ずかしいし・・・」

晴香「恥ずかしい話なんですか?」

 

海月「そういうわけじゃないけど・・もー、ムードめちゃくちゃだよ・・・」


海月はしゃがみ込んで頭を伏せた。

 

晴香「なんかすみません・・・」

 

海月「ま、晴香らしいけどね」

海月が顔を上げて微笑む。

 

晴香「それで、結局話って何だったんですか?」



海月はそのまま膝を付くとバッグから指輪を取り出した。

もはやムードのことなど気にしなくなった海月。



海月「晴香さん、僕と結婚して下さい」

 

晴香「え?えぇー!?」

晴香はキエェー!!っという擬音を放つが如く手足を同じ方向に上げて挙動不審なポーズになっている。

 

海月「ふはっ、凄いリアクションだね笑、プロポーズされた人とは思えない」


海月は晴香の薬指に指輪を嵌めた後、立ち上がると手の甲に軽くキスをしてそっと下ろした。


晴香「ひえぇ・・・」(推しの求愛にキャパオーバー)

海月「それ、どういう感情なの?笑・・・あ、ひょっとしてプロポーズ嫌だった?」



海月が首を傾げて聞くと

晴香がブンブンっと首がもげそうなくらいに横に振る。

両腕は上がったままカチコチに固まっている。

その挙動不審さに海月は笑い出しそうになるのを必死で耐えた。



海月「・・っ・・・良かった、じゃあ、返事ちょうだい?」

晴香「え、今すぐですか?もうちょっと余韻に浸らせ・・・」

海月「だめ、今すぐ、僕基本待たない主義だから」

晴香「待たない海月さんも素敵です・・・じゃなくって!え、と・・・よろしくお願いします・・・」

 

晴香がペコリとお辞儀をする。


海月「やった!」

海月が小さくガッツポーズをする。


その可愛さに晴香は・・・。

晴香「私もう何も思い残すことないです、ありがとうございます」

晴香が真顔で手を合わせて海月に対して拝んでいる。


海月「いや、生きて?」

晴香「私・・・」

海月「うん?」

晴香「こんなに幸せな日は今までなかったです」


晴香の目からポロポロと涙が溢れていく。涙腺が急に崩壊したらしい。


海月「キュン・・・これからは幸せな日々が待ってるよ、だから大丈夫」

海月が晴香の頭を撫でた。


晴香「はい、大好きです海月さん」

海月「うん、僕も晴香が大好きだよ」







二人が歩き出すのを見届けた後。

草むらに身を潜めていた黒森ラジオのスタッフ二人はゴソゴソと出てきた。


魚崎「ほら、やっぱりプロポーズじゃん」

福田「晴香が別れ話だってギャーギャー騒ぐから、

もしもの時の為に飲み会に連れて行けるようにって俺らスタンバってたけど・・・やっぱり必要なかったね」

魚崎「やれやれ、あんなのだーれがどう聞いたってプロポーズでしょーよ」

魚崎が両手を上に向けてやれやれと首を横に振る。

福田「まぁ晴香だからね」


魚崎「んじゃまぁ、俺らは通常通り飲みに行きますか」

福田「だね」



こうして海月と晴香のちょっぴりお騒がせなプロポーズは無事に終わりを告げたのでした。



 


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