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第31話 心に寄り添う


「病気がちなアイラは本を読んでるか、窓辺に遊びにきた動物と話してることが多かったです。アイラが一度行方不明になった時があったんですけど、その時は小鳥が居場所を教えてくれました。」



訓練生の頃に、わたしとレイドが誘拐された時も動物達がその居場所を教えてくれた。その状況に似ている。



「病気のせいもあるけど大人しいやつで…。俺、アイラが何か悪いことをしようとしてるなんて想像できません。」



手を強く握りながらそう話すラルフ。いつも明るく笑って周りまで笑顔にしてしまうような彼だが、今は苦痛を耐えるような顔をしている。幼馴染がもしかして…なんて、信じたくないのだろう。



「大切な、幼馴染なのね。」



ラルフはゆっくりと無言で頷いた。

ラルフの幼馴染が何か間違いを起こそうとしているならば、正してあげないといけない。それに、そもそもまだ彼女が関わっていると決まっているわけではない。



「ねえラルフ、あなたのお友達に会いに行きましょう。今回のことに関わっているかはまだ分からないけれど、彼女と会って話をしましょう?」



しゃがみ込み、ラルフと目線を合わせる。その目はまだ困惑の色をしていたが、まっすぐにわたしを見つめ返してくれた。



「……そうだな。会いに行って、話さないといけないな。」



やがてラルフは覚悟を決めたように頷いた。





……………



それから、白銀の町へ行く計画が立てられることになった。

詳しい日程、人数、アイラさんへの接触をどうするかなど、さまざまなことを決めなければならない。団長達が仔細を決めるので、ラルフの体調も慮ってわたし達三人は外に出ることにした。


詰め所近くの休憩スペースに来て、温かいお茶を淹れる。中途半端な時間だから、わたしたち以外に人はいない。

ラルフの前にティーカップを置くと「ありがとう。」と言ったが、その表情はまだ暗い。


黙ってティーカップのなかみを見つめるラルフにかける言葉が見つからない。それでも、一緒にいてその心に寄り添ってあげたかった。レイドも何も言わずそばにいる。



やがて、ラルフが口を開いた。



「はじめてロゼッタを見た時さ、アイラに似てるって思ったんだ。べつに顔が似てるわけでも髪や目の色が同じわけでもないのに。」


「だからわたしに声をかけてくれたのね。」



訓練所でみんなに会った時、はじめて声をかけてくれたのはラルフだった。それからみんな話しかけてくれて、馴染むきっかけになった。



「誰よりも小さい体で頑張ってるロゼッタを見てさ、放っておけないなって思ったんだ。そういうところをアイラと重ねてたのかもな。」



眉を下げて笑うその顔は弱々しく見える。


わたしを通してアイラさんを見るくらい、ラルフの心にはアイラさんがいたんだ。


根底にあったのはアイラさんへの想いでも、訓練生の時にいじわるな同級生から守ってくれたり、竜騎士になってからの交流会で一緒に踊って貴族から守ってくれたり…。その他にわたしの知らないところでも、ラルフがわたしを守ってくれていたことを知っている。



「ラルフ、わたしを守ってくれてありがとうね。」


「いや、…うん。…ほら、レイドだってロゼッタを守ってたろ?」



わたしが急にありがとうと言ったからか、ラルフは動揺したように頬を掻く。歯切れ悪く返答するとレイドを見た。



「当たり前だ。大切だからな、同じ仲間として。…それにラルフ、お前も大切な仲間だ。」



率直なレイドの言葉にラルフは呆気に取られる。レイドはなおも続ける。



「ラルフ、俺達が一緒にいる。お前の思いは想像することしかできないが、それでも、少しでも苦しさを和らげたい。」



飾らないレイドらしい言葉。わたしもレイドと同じことを思う。



「ラルフがしてくれたように、わたしにもラルフを守らせて。」



一緒にいるから。わたし達に、ラルフの心を守らせて。



「…うん。ありがとう。」



やっと、ラルフらしいあたたかい笑顔が見られた。




……………



ヴァイツ視点




3人が出ていき、団長、俺、ダイスの三人で話し合いを続ける。


竜達が不穏を察知していることもあり、白銀の町へ行くのなら早い方が良い。かといって突然町を訪れては民達は混乱するだろうから、予め周知しておく必要がある。訪問するに相応しい理由づけとしては、ラルフの過去の話にあったように訓練の宿泊地として使用するというのが妥当だろうか。


その訪問中に、アイラという女性に接触することは必須だ。竜騎士が来るとなれば物珍しさに見に来る民が多いだろうが、アイラは病弱だというので他の民のように集まることはないだろう。それならば彼女の家に行くしかないが、一般市民への個別訪問なんて不自然すぎる。

しかしラルフにアイラへの接触を任せれば、仕事の合間に顔馴染みに会いに来たという自然な理由ができる。



「やはりラルフは連れて行くべきだな。今回の疑惑にショックを受けているあいつには酷かもしれないが…。」



団長の言葉に俺もダイスも頷く。

本人にとって辛くても、騎士として国のためにやるべきことを優先させなければならない。



「ラルフのメンタルケアはレイドとロゼッタちゃんに任せるしかないですね。あの二人と一緒にいることが今は一番落ち着くでしょう。」


「そうだな…。少しでも心の整理がつくと良いのだが。」



ダイスの言葉に同意する。ラルフは地元を出てから、レイドとロゼッタとの付き合いがもっとも長い。その中で、彼らが強い絆を築いていることは誰の目から見ても明らかだ。今は三人の時間を作ってあげた方が良い。



「あの三人を見てると、信頼できる仲間がいることがどれだけありがたいか思い知らされますね。」



普段の三人を思い出したのだろう、ダイスが穏やかな笑みを浮かべながら言う。

お互いを思いやり、支え合いながら成長してきた彼らの絆は眩しく見える。

大切な弟のレイドがそんな仲間に恵まれたことも嬉しい。



「そうだな。だがお前達二人の仲の良さも、訓練生時代から有名だったじゃないか。」


「それはそうです!親友です。」



団長がそう言うと、ダイスは調子良く返事をして俺の肩を組む。体重がかかり重いなとは思うが、嫌だとは思わない。


ダイスとは訓練所で初めて会ってから今日まで一緒に同じものを目指してやってきた。お互い同じような爵位の家柄だが、頭の痛い貴族のしがらみから抜けて好きなことだけを追いかける訓練生時代は楽しかった。竜騎士になってからもお互い切磋琢磨して、とある任務の時にそれぞれの絆の相手を得たが、それが双子竜だったのはもはや必然だと思った。

他の誰よりも、ダイスといると心が楽だ。



「…一緒にいすぎてあらぬ噂を立てられることもありますけどね。」


「否定するのも面倒なくらいにな。」



その内容を思い出して気持ちが沈む。ダイスと同じ、げんなりした顔をしている自覚がある。

俺達の間に決してそういった関係はないのだが、友情を恋情と履き違えて見る人達がいるのだ。


団長はそんな俺達に苦笑いすると、空気を切り替えるように一つ手を叩いた。



「脱線してすまなかったな。さあ、もう少し話を詰めようか。」



姿勢を正し、引き続き話し合いを始めた。




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