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第25話 竜の血筋


手分けして竜のすみかの見回りを続けると同時に、レイドのパートナーの話を聞くことになった。


レイドの竜はおじちゃん竜のようで、久々に飛んだから疲れたと、竜舎に着いたとたんに寝てしまった。そのため、話を聞くことができるようになったのは絆を結んだ日から2日は経っていた。寝ているだけだとは分かっていても、レイドは心配そうに竜舎に通っていた。


三日月の森で案内に来てくれた竜よりも見た目は若々しいけれど、年齢は更に上だと聞いてびっくりした。

目も鱗も、あんなに綺麗なのに。

色付きともなると、実年齢と見た目の年齢が比例しないのだろうか。



レイドからパートナーが起きたと報告があって、色付き専用の竜舎へ団長、ヴァイツさん、レイドの三人で向かったのが今朝だ。


わたしは今日は非番で、幼竜舎にて幼竜達と過ごしている。


今日は天気が良いので、太陽の光がよく当たる岩の上で皆寝そべっている。

幼い子もいるけれど、もうそろそろ一般の竜舎へ移動できそうな子もいる。幼い頃からここで育った子は、野生にはなかなか慣れず、竜騎士所属の竜としてここで一生を終えることがほとんどだそうだ。

何が彼らにとって一番良いのかは分からないけれど、それでも、できるだけ幸せに過ごしてくれたらいいなと思う。


彼らを眺めながら、わたしも身体を横たえて日向ぼっこしてみた。こうしてみるとポカポカと暖かく、吹き込む風は心地良い。誰かに見られたらはしたないと言われそうだけど、孤児院にいた時は芝生の上でみんなと寝転がっていたなぁと思い出す。


暖かくて気持ちいい。心地好さに目を閉じると睡魔が襲ってきそうだ。




…………………………




二日ぶりに起き出したパートナー。

金色の瞳はやはり美しいけれど、まだ眠そうな様子が伝わってくる。



「俺は竜騎士団の団長を努めている。こっちは副団長のヴァイツ、君のパートナーの兄に当たる人だ。宜しく頼む。」



団長の挨拶を聞く様子は穏やかで、心なしか微笑んでいるようにも見える。



「…起き抜けに悪いが、最近色付き達が“胸騒ぎがする”と動きだしているんだ。このことについて何か知っていることはないか?」



本題が切り出されると、ゆっくりとまばたきをした後にその口を開いた。



『ああ、知っているよ。離れた土地で同族が不穏な動きをしたのをみんな感じたのだろう。』



やはり、竜絡みの何かが起きている。

色付き達が胸騒ぎを覚えるほどの出来事は、同じ竜が関係しているのではないかという推測はされてきた。



「貴方もその不穏な動きを感じて起きたということか。何か詳しく知っていることがあれば教えてもらいたい。」


『私も全てを感じ取ったわけではないが…。北の地で同族が何かを起こそうとしている。それも古い者が。』


「!それはまさか、古竜ということか…?」



団長の言葉に緊張が走る。年齢を重ねているであろう俺のパートナーが、古い者と呼ぶのがどういうことか。…まさか、そんなことが。



『いかにも。北の地には古い竜がいたはずだ。おそらくその者だろう。』



古竜とは、遥か昔からから生きていたとされる竜のことで、もはや伝説だ。

ルーカス殿下の白竜の母親は古竜だったというが、その竜が亡くなったのも、もう何代も前の王の治世の時だ。

そんな存在がまだ生きていたとは。


それが一体何をしようとしている?

そして、俺達に何ができる…?



『水底で眠っている間でも異変は感じた。私は同じ種族として、顛末を見届けるために目を覚ました。…そこに、かわいい我が主がいたのだよ。』



目を細めてにこりと微笑まれ、くすぐったい気持ちになる。

かわいいだなんて言われたのは幼子の時以来だ。竜は皆、パートナーのことをそう思っているのだろう。


団長と兄様がどこかあたたかい目を向けてくるのを感じる。



『不安に思っていることは伝わってくるよ。…でも大丈夫、もうすでに鍵は存在する。』


「鍵…?その竜の問題を解決するものと言うことでしょうか?」



俺たちの疑問を兄様が代弁する。



『ああ、そうだ。あの可愛らしい少女がいるだろう?あの子が解決する術を持っているよ。』



可愛らしい少女とは…ロゼッタのことか。

確かに彼女はどんな竜にも好かれやすいし、本人も竜に近づくことを臆さないが…。

そう思っていると、続けて発せられた言葉に目を見開いた。



『なにせあの子は、竜の血筋だからね。』



竜の、血筋…?

どういう意味だと固まる俺達に、パートナーは『おや?』と怪訝な顔をする。

ロゼッタは秘匿されているが王家の血を受け継いでいる。王家の血筋を竜の血筋だと呼んでいるのか…?



「それは、私の口から説明しよう。」



そこに現れたのは、



「!…ルーカス殿下。」



王家の人間であるその人だった。



「陛下には許可を取ってきたけれど、本当は秘密の話だよ。」



口許に人差し指を当てて、内緒のジェスチャーをすると話し始めた。






遥か昔、この国ができた頃に遡る。

竜と心を通わせることができた王がいたのは物語として幼子も知っている。

しかし、竜だけでなく動物とも心を通わせることができたというのは、今や知る人ぞ知る事実だ。


竜は人と親和性の高い生き物であったために、心を通わせることができる者はそこそこいた。それこそ今の竜騎士達のように。

王が動物達と話せるというのは、王に近しい者には知られていたことだ。しかし、なぜ動物と話すことができるのか。その理由は知られていない。


それは…心を通わせることができたのは、その王に竜の力が宿ったから。

その方法は、王が竜の血を飲み込んだことだった。


竜を愛する王と、王を愛する竜。

王は竜と同じ世界を感じたいと考え、竜はその願いを叶えるため自らの血を分け与えた。

その結果、王は動物達の声を聞くことができる耳と、竜と視界を共有できる眼を手にいれた。

その力は一代限りのものではなく、血脈として受け継がれた。



時を経て竜の血が薄れるにつれ力を持つ者が少なくなり、また、その力も弱くなった。

今の王家では、竜と似た金色の瞳が、外見的特徴として残るだけだった。


しかしそこにロゼッタが現れた。


瞳こそ竜の色を受け継いでいないが、彼女は紛れもない竜の耳を持っていた。



「以前ロゼッタが私を見て竜だと言ったことがあってね。すっかり血が廃れてしまったこの身に、彼女は竜を感じ取ったらしい。…なんとも言えない心持ちになったものだよ。」



そう言って微笑むルーカス殿下。



「王が純粋な人ではないと知れば、民達の混乱は大きいだろう。だからこれは、秘密の話。」



殿下はそう言って、話を締め括った。



『多くの者は知らないのか。私は当時のことを伝え聞いているからね、あの子を見た時そうなんじゃないかと思ったんだ。』



なるほど、と頷くパートナーを横目に、意図せず知った国の秘密に冷や汗をかいた。



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