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第22話 ディアナの悪い予感



ざらり


胸に感じた違和感に目を開ける。

そこは自分に与えられた部屋でいつもと変わりない風景だ。しかし、確信は持てないが嫌な予感がする。


ここではないどこかで、何かが動いた…?




「ディアナ、どうかしたか?」



気遣うように問うのは今の主だ。ここで生まれてから数人の主と絆を結んだが、その中でもこの人は相性が良い。



『…嫌な感じがした。遠くない未来に良くないことが起こるかもしれない。』


「何だって?」



私の言葉を聞いて、ルーカスは怪訝な顔をした。いつも微笑んでいる彼には珍しく、眉を寄せている。


この嫌な感じが何かは分からない。だが、私だけでなく他の色付き達も何かを感じ取っているかもしれない。そう話せば、護衛の者に声をかけて走らせた。赤いのと、蒼い双子のもとへ確認に行かせたのだろう。


もし彼らからも何らかの反応があり、この違和感が正しければ…。

長らく平穏だった世に忍び寄る影を垣間見るようだった。





…………………………




竜騎士の詰所では、今回の任務の概要が説明されていた。


ことの発端はルーカス殿下のパートナーである白竜が胸騒ぎを覚えたこと。それに加えて、団長の赤竜、ヴァイツさんとダイスさんの青竜が、皆揃って良くないことが起こると感じ取ったのだという。


それが一体何なのかも問題だが、同じように異変を感じ取った野生の竜達が騒ぎだすかもしれないことも問題だ。


そのため、竜騎士が竜のすみかを見回ることとなった。



「今回異変を感じたのは色付きだけだ。そのため、色付きがいるとされる地域を中心に見回ることになる。」



団長の手でテーブルに広げられた地図にマーキングがされる。


竜は出会う確率の低い生き物だが、色付きとなるとその確率はまた格段に低くなる。今マーキングされたのは、伝承や目撃情報などから色付きがいると考えられている地域だ。



「見回りは緑竜達でもできるが、色付き達と接触する必要があった場合はこちらも色付きで対応する必要がある。いつでも出られるように俺たち四人は待機、あとは班を組んで交代制に見回ることとする。」



何もないならそれに越したことはない。それに、見回りは密漁者への牽制にもなるため全く無駄なことでもない。


説明が始まったときから詰所にはかすかに緊張感が漂っている。


大きなことが始まるという事実に、配られた作戦要項を握る手に力が入る。竜騎士として働き始めてから、はじめてこんなにみんなが緊張しているのを見る。



わたしが割り当てられたのは王都からそう遠くない西方の森だ。地元では昔から竜が住む森だと言われていて、その通り実際に竜が住んでいる。

その森の中の湖に、色付きがいたという地元の目撃情報があるのだそうだ。



「ここにはまず、フォード、レイド、ロゼッタで向かってもらう。フォードとレイドの竜はこの森出身だから勝手もわかるだろう。」



竜舎の竜達の中にも、この森で産まれ育ったものが多いのだという。


向かう他の土地とメンバー、交代順が発表されて、各自道具と竜のメンテナンスを行っておくようにと締め括られ解散となった。







竜舎前の広い庭にそれぞれ乗せてもらう竜を出して確認を行う。詰め所では空気が張り詰めていたが、ここは青空が広がっていて、竜達の機嫌が良い。


アルは大きな仕事にフスフスと鼻をならして興奮ぎみだ。なんだかその様子がかわいくて肩の力が抜ける。


レイドとパートナーは淡々と体調チェック、鞍の装着・点検をしていて、さすが竜騎士団一落ち着いた組み合わせだと言われるだけある。



『ロゼッタも一緒なんだね!ラッキー!』



突然肩にかかった重さに「わっ!」と驚けば『驚かせた?ごめんごめん。』と笑いながらも退く気配はない。



「こら!お前は隙あらばちょっかいだして!」



肩の重みの正体はフォードさんのパートナー竜のものだ。パートナー選定のためにはじめて竜舎で会ったときも、ぐいぐい来てフォードさんに怒られていた竜だ。

後ろから顔を肩に乗せられていて、ゴツゴツした皮膚がちょっと痛い。頭が大きいから顎の一部が乗っているような形だ。力の差は分かっているから、体重をかけすぎないように配慮してくれていることは伝わる。



『いいじゃないか、久しぶりに会えたんだ。…ああ~良い匂い。』



スゥーと肩口で息をされてくすぐったい。



「そういうのはセクハラって言うんだ。騎手の俺の責任が問われたらどうする、方々から滅多打ちにされるからやめてくれ。」



フォードさんが青い顔になり慌てて早口で止めるのを意に介していない。



『ロゼッタは僕のパートナーだよ!』



そんなわたし達を見たアルがプンプンと怒って抗議したことで、フォードさんのパートナーはしぶしぶ離れてくれた。アルはフォードさんの竜よりも体が小さいのに勇敢だ。

ありがとう、と頬を撫でれば幼竜のようにキュルキュル鳴いてかわいい。

体は大きくなったけどまだ大人になりきれていないのだ。



『ねえロゼッタ一緒に飛ぼう!明日の予行練習しなきゃ!』


「予行練習は良いことだけど、いつもの練習領空内までだからね。それとあんまり疲れないようにしなきゃ。」


『分かってるよ!気合い入れて飛ぶから!』



分かっているのかいないのか。心配になる時もあるけれど、天真爛漫なアルがかわいい。それに、さっきまでの不安も軽くなった気がする。


今回のリーダーのフォードさんに飛行練習の許可をもらい、気合い十分のアルと共に飛び立った。




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