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序章
「悪いけど、もう僕に近づかないでくれるかな、クラリス」
それは許嫁だったはずのオロフの信じられないような言葉だった。
「君のような無能と僕では、誰が見ても釣り合わない。君もよく分かっているだろう?」
無能とは魔術についてのこと。
それともう一つ。
クラリスのある特徴についても言っているのだろう。
クラリスとオロフはネンデール国立魔術学院の同級生で、中等部までは落ちこぼれ同士励まし合ってきた相手だった。
できない者同士の馴れ合いだと同級生達にいつも馬鹿にされていたが、支え合える相手がいるというだけで心強かった。
それなのに……。
次話タイトルは「許嫁に捨てられた日」です