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きっと『なにか』
「 ・・・まあ、そういうことになる。 なにしろおれは、シュンカをこの先この身をかけて守ると誓ってる」
「はあ?そいつはスザクをぶっ倒すっていう宣言か?」
「まさか。あのふたりの邪魔しようなんてやつがいたら、おれがぶっ倒しますよ。 ―― おれはね、シュンカの親御殿に、かえせねえ恩がある身なんだ。だから、それを返したいってだけだ」
そういうことか、とタクアンはゆっくりと箸をはこぶ。
「 それなら、―― 覚悟しておいたほうがいいな。 トクジが『嫌だ』というんなら、きっとそこには、『なにか』ある」
ひらかない右目をあげるようにして、コウドをみた。
「・・・わかってる。トクさんのことは信用してるし、ほんとはわかってる。だが、――あの先生のおかげで、たくさんの病人も助かったし、色街で医者をしてくれるなんて奇特な人、なくしたくねえっていう《欲》があって、・・・信じたいんだ・・」
情けねえよなあ、と自分をわらってしまう。




