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おれが教えた
コウドが、「チサイから目を離すな」とトクジにいいつけられた日に、あの、鍬がささって瀕死のところを治療してもらったミノワが、「えらい坊さんのことは、おれがチサイ先生に話したんだがまずかったか」と先を読んだように、コウドに相談にきたからだ。
たしかに、詰所にいれば、あの二人の徳の高い坊主がきたことには気づくし、スザクがきてからの騒ぎもしっていただろう。
だが、それをわざわざ詰所からはなれたチサイのところへ知らせにゆくか?とコウドがミノワに問えば、前にチサイから、自分も《男衆》の一人なんだから、なにか事がおこれば、教えてくれと、言われていたという。
おかしくはない。 たしかに、あの先生ならば言いそうなことだ。




