87/142
元軍人でも
トクジのほめるようなそれに、け、と息をはきだす。
「 そんなたいそうなもんじゃねえし、死んだものを弔う坊主には、こんな『力』はよけいなもんだ。 ―― 《魂》が残ってるのをわかってて、さっさと逝けって経をよむんだからな。 だからおれは、弔いにはいかねえで、妖物あいてのほうが気が楽だ。 ―― 言っとくが、」
コウドをゆびさした。
「 あんたみたいな軍人たちは、死んでも《魂》が骸に残ることはほとんどない。 軍人になったときからこの世に未練がなくなってるのか、または、自分を殺した相手のところへゆくか、だ。 そうやってたくさん殺したぶんの《魂》をせおってる軍人ならみたこともあるし、そういうのは軍人辞めてからものこってるもんだが、・・・あんた、 ―― せおってねえな」
「タクアン、―― コウドは、毎朝、おれといっしょに経をとなえてる」
トクジの強い口調に、タクアンはあかない右目をゆびでおしあげるようにして、わかってるさ、とコウドをみた。




