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骸に触れるな
「 ―― みにゆきましょう。病人だった人ですか?」
「 ああ、いや、 それが・・・すこし、おかしな死に方の骸でなあ・・・。 先生、いままで『術』で死ぬことになった者を、みたことは?」
「西に行ったとき、軍人どうしのけんかをみました。そこで、すこし」
「そうか。ならわかってるだろうが、骸に触るのは、トクさんにきいてからにしてくれ。 どうも、『血』におかしな《術》がかけられてそうなんで、気をつけたほうがいい」
わかりました、とほほえみうなずいたところで、シュンカが風呂敷に包んだ箱をもってきた。
「むこうにはコウドがいるから、シュンカはおれと帰るぞ」
手伝いにゆくと言い出す前に、セイテツはシュンカにいいきかせる。
「それならば、チサイ先生、『医院』の片づけのほうは、おれがしておきますから」
うなずいて、風呂敷をかかえて出ようとしたたチサイは、なにか思い出したようにふりかえった。




