72/142
いやになる
やさしくおだやかで、なにもかも承知しているような目は、セイテツの中を見通すようにずっと合っていたかとおもうと、すいっと ―― どこか遠くへゆく。
まるで、セイテツの『中』がみえなかったので、どこかほかへゆこうとでもいうような、取り残された感覚をのこして。
しょうじき、これのせいで、《みたて》の途中から、なんだかひどく落ち着かず、きゅうに、チサイのことが、 ―― いやになった。
いや、いい人だし、いい医者だ。 ―― が・・・・
なにかわからないが、どこか、おかしな感じがする。
頭をふって、袖をひく女たちをおいはらい、シュンカの名をよび、むかえにきたぞ、と中にはいった。




