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かいだことのない匂い
「《術》ではいだんじゃねえだろ。その肉のはがれ方、刃物だろうな」
だから、ところどころ骨がのぞいてるんだろう、とスザクは鼻をこすり、でも、匂いがする、と首をかたむけた。
「 ―― ただ、いままで、嗅いだことのねえ、おかしな匂いだ」
そのあやふやな表現に、セイテツがめずらしいな、とたちあがる。
「おまえでも正体がわからない匂いがあるんだな」
「まざりすぎて、正体がわからねえ」
鼻がよすぎるのも考えものだな、とコウアンが懐から数珠をとりだし、この者たちはもう弔ってよいのか、トクジにきく。




