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運びこまれる
「トクジ、おまえ、―― お? スザクがきたか」
こちらの名をよびかけたコウアンが、庭の戸口のほうをふりかえる。
すぐになにか騒がしい声が起こり、人が走る音や叫びあう声がひびく。
目を見かわした坊主二人が立ち上がり、シュンカが「チサイ先生をよんできます」と立ち上がる。
セイテツも部屋の奥の、男衆があわただしくなったほうへ黙って立ち去った。
庭の木戸がひらき、それにあわせるようにセイテツがむしろを抱えてもどった。
木戸をくぐったのは、倒れた男を、腕と足に分かれて抱えた男衆たちで、セイテツが庭にしいたむしろの上に、そっとおろす。
仰向けにおかれた男の顔から体には、坊主の上衣がかけてあった。




