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ジュフク動く
まあ、それも考えられるが、と言ってから、「だが、それを耳にしてから、ジュフクさまがひどく考え込むようになられてな。 《天守さま》にも会ってなにかお話しされ、そのあとで、こうして帝にも会われることにしたのだ」
「テングにも会ってきたのか?」
坊主が《天守さま》とよぶ《テング》は、人の型をして背に羽をもち、ここでの空をつかさどる者たちで、剣山にすんでいるのだが、帝といっしょで、人にかかわることはほとんどない。
「じじいは?あんたらになにか言わねえのか?」
トクジの言葉に口を慎め、と注意してから、「ジュフクさまは、わしらには何もいわぬわ」とコウアンはわらった。
「まだまだ、わしらでは頼りにならぬのだろう」
「そんで、天帝に相談にきたってことか?」
「ひさしぶりに、お顔をみたいと申されてな」
「 ―― 顔は弟でも、中身はアレだぜ」
外のウツワは血を分けた兄弟であっても、中身は人の感情など理解しない『帝』なのだ。




