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病にふす
あのとき、帝につかえる蛙に、それをたしかめようとしたのだが、スザクが死にそうになり、それどころじゃなくなったのだ。
「うむ。 テングや帝はもちろん正体を承知していようが、なにしろ下界の人間の将軍だから、《くちだし》はできぬのだろう。 いくら『力』があろうとも、それが天宮になにか障りをおこさぬかぎりな」
コウアンが手の甲に残る、火傷あとをなでる。
「なにかあってからじゃ、おそいんだよ。 高山からなにかする、とかできないのか?」
いらついたセイテツの言葉に、坊主ふたりは顔をみあわせた。
コウアンがうなずき、ドウアンがトクジをみた。
「ケイテキが、病にふしておるのを、きいたか?」
「ああ、噂でな」




