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許可待ちです
「 ―― スザクさまに『従者』として認められておりますが、もちろん高山へゆき、《徳》を得たいと思っております。 そのために、こうしてトクジさまに手ほどきしていただき、日々はげんではおりますが、《徳》をえるため高山にゆくのは、 ―― まだ、すこし時間がかかりそうで、・・・トクジさまには、もうしわけなくおもっております」
さいごトクジをみて頭をさげるのに、コウアンが、それは気にするでない、と片手をふった。
「 普通の修行僧でも、《徳》を得るのには時が必要だ。 覚えねばならん経の数も考えれば、まだこれから先」
「それは覚えてんだよ。この子はな」
トクジがおもしろそうな顔で『えらい坊さん』二人をみくらべていう。
「 ―― 経はおぼえてるし、《綴り》もかなりの数できるんで、もうふつうに《徳》はとれるとおもうが、 なにしろ、スザクの許可がでねえ」
その、わらいをかみころしたこたえに、シュンカがすまなそうに頭をさげる。




