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来た理由
「はい。シュンカともうします」
ひれふしたままこたえるのに、セイテツが、そんな緊張しなくてへいきだよ、と背をたたく。
「いえ、高山のコウアンさまとドウアンさまのお名前は、スザクさまやトクジさまからいつも耳にしております」
このこたえに、ほお、と意外そうな顔をむけられたトクジは、ついでってやつだ、と左頬をかく。
「経を学ぶなら、あんたらのこととか、高山のことも話しておかねえとならねえしな」
「 ―― そのことだが、トクジ」
ずい、とドウアンが前にでた。
「 ―― スザクが認めたとはいえ、《徳》のある者の従者を務めるのならば、その者にも《徳》をとってもらわないとならないだろう?」
「ああ? ―― そうか、それでわざわざ、こんなとこまで来やがったのか」
トクジはセイテツをみて苦笑した。




