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おとぎばなし ― 剥奪 ―  作者: ぽすしち
拾った医者

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顔をのぞきみる


「 ・・・そいつは、・・・まさか・・・口説いてくるのか?」


「いえ、チサイ先生は病気をみるときにも、相手のかたの手をにぎるんです。 それで、顔をのぞきこみます」


「・・・だれでもか?」


「はい。・・・女のかただと、それこそ、見ほれたようになりますが、男衆のかたは、ひどくびっくりされる人もいて・・・コウドさんにたたかれてます」



「あのやろ。おれはきいてねえぞ」チサイがおかしなことをしたら、すぐ知らせろといいつけているのに。



「でも、あれがチサイ先生の、病の《みたて》の『やりかた』なんだと思うんです。 手をにぎって、顔をのそきみて、黙ってしまって、 ―― しばらくうごかないんです」

 


 じっと顔をのぞきこまれ、だまったままなのだとしたら、男衆のような気の短めなやつらは、たしかに戸惑うだろう。



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