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ねがったり かなったり
チサイをひろったときには、まっさきに疑った。
街の者でもシュンカの『力』のことを知っているのは、トクジとコウドくらいなものだ。
シュンカに会うとなんだか具合がよくなる、という噂はまえからあるが、それはこの街の者たちが好む『ゲン担ぎ』や『マジナイ』みたいなもので、『術』や『力』などとは関係ないところで、みんながすがっているものだ。
それとも、シュンカのつぶされた里近くの者が、この色街に客として出入りしていて、《あれはあの、病を治す親子の子どもの方だ》と、気が付いたのか?
そんな不安をいだいていたが、目をさましたチサイの返答はまっとうで、その日に、《色街にはきてくれる医者がいない》とこぼしたトクジにかえされた返事、「それなら、わたしがここの医者になりましょうか?」という申し出は、願ったりかなったりだったのだ。




