31/142
《療養所》
医者にかかれない女たちをまとめて面倒みられるという利点もあるが、すこしばかり心や頭を病んだ女が、捨てた男を刺しにいったりなど、おかしな行動をとらないよう、みはる意味もある。
トクジたちのいる『用心組』に男衆をいれている店は、女たちにおかしなことや無理な働かせ方はしない。
稼いだ分の金も、きっちり本人へ渡すし、預かりもしておく。病にかかればもちろん店で面倒をみるし、帰りたいといえば、見舞いの金をつけて里へ送り返す。
ところが、もぐりで商売をしている店もあり、そういう店の女たちは、病にかかると放っておかれたり、おいだされたりする。
そういう女が街のはずれのあばらやで安く客をとると、街ぜんたいに、嫌な病がはやるので、『用心組』はそういう女も連れ帰って、《療養所》へいれてしまうのだ。




