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ミノワの中
にやりと、見慣れた顔がいやな笑い方をすると、クナイを持ったままのコウドの右手をつかみ、それをゆっくりじぶんの腹にあて、ぐっとひきよせようとした。
「 っやめろっ 」
反射のように右手がうごかせた。
「 ほお、こっちの手はうごかせるのか? どうした?『ウド兄』? ほら、『おれ』をやらねえと、このまますぐ、 ―― あんたに、 はいっちまうぜ? 」
まだ右手をつかんでいる、ミノワの『中』の男がわらう。
目が合ったまま、ミノワの黒目が、縦や横に細まってうごきつづける。
「くっそ」
両耳の奥のどこかが、ぞわりとする感覚がおこると、きゅうに、ふわりとからだがかるくなったような気がした。




