おとぎばなし ― 剥奪 ―

逃げ道

わたしはちがう

　すぐに、男のかん高い声がひびいた。

　　　　わたしはちがう！　ちがうのだ！　トクジどの！　コウドどの！

　木戸がひらき、縄でぐるぐる巻きにされたチサイが男衆にかこまれてはいってきた。

　その様子を目にし、くわしいことなど知らされてない、庭にあつめられた者たちが声をひきつらせて、男衆たちをみる。

　コウドは心配するなとその場をしずめて《頭（かしら）》を呼び戻せ、と指示をだすと、ミノワがチサイを引っ立てて、詰所の台所にある土間へとつれていった。