117/142
サマにならねえ
「いや・・・おれがもっと早くに、チサイのことを、気づいてたら」
「まったく、これだからウド兄は、お人よしだってんだ。 おれらなんて、あいつとシュンカを添わせよう、なんてことまで口にしてたんだぜ?」
「まあ、そうだが・・・」
「ここに集めたやつらが、もしかしたらチサイにおかしな《術》をかけられてるかもしれねえってことなんだろ? だがそりゃあべつに、ウド兄のせいじゃねえし、《頭》のせいでもねえ。 なにかあったら、おれだって加勢するから、まあ、まかせとけ」
「・・・おめえ、・・・その足じゃ、どうせ役にたたねえだろ」
まだ、片足をかばうような歩き方をしている。
「ウド兄、泣きながらそんなこと言ったって、サマにならねえぜ」
「泣いてねえだろ。 まだ」
コウドが顔を片手でぬぐったとき、庭にはいるための木戸の外で怒声があがり、中にいた男衆たちも外へ出る。




