坊主の禁術
「 ―― たしか、そう言ったのだろう?おれが、こうしていそいで戻り、トクジをさがしていたのはな、高山で調べた古い《禁術》で、『人を通って渡り、おのれの魂をとばす』というものがあったからだ。 チサイという医者がやはり、あやしいと思った」
トクジをさがしていたら、当のチサイと初めて会い、それと同時に、男のうしろに、『行列する人たち』をドウアンはみた。
《うまれかわり》の『前』が、こんなに多く、しかも列をなすほどなど、あるわけはない、と 、思ったのと同時に《経》をなげたが、間に合わないどころか、ケガをおわされた。
「坊主の《禁術》で、『顔を剥がす』というのはみあたらなかったが、顔を《ヨリシロ》にして魂も写す、というから『転生』の《禁術》になるものをさぐってみた。 ―― そこに、《人を渡って魂をうつす》というのがあった。 目をつけた相手の魂を手に入れる、というものだ。 つまり、――」
「『のっとる』んだな? 《神官の禁術》で、《顔》をつかって、あいてを乗っ取るように」
トクジの腹をたてた声にうなずく。




