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いまのところは人間
「 あんなちいせえ刃物のくせに、えらい深さでささったじゃねえか。 あんときのあいつの動きだって、どうにか目でみえるもんだったが、 ―― 人間のもんじゃねえ」
腕をくんだトクジの断言に、ドウアンが、いや、と首をふる。
「『人間』、なのだろう。 ―― いまのところは。 どうやら、タクアンたちのはなしをあわせてみると、―― おれが、高山にもどって調べた《禁術》も、使われているかもしれん」
チサイが逃げ、色街のなか、男衆があちこち見張りをたて、みまわっているところへ、タクアンとコウドが、もどってきた。
詰所の中、チサイからうけた傷の手当てをうける坊主を見た途端に、コウドが謝ったのだ。




