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無理いうな
「すまねえ。おれのせいだ」
ドウアンの右手に巻かれた晒をみて頭をさげるコウドに、トクジとタクアンは顔をみあわせてわらった。
とうのドアンは、けがんな面持ちで、コウドをみかえす。
「どういう意味だ?のがしたのはトクジだぞ」
「 いや、おれはずっとあのチサイせん・・・チサイのそばにいたってのに、見抜けなかった」
「それをいうなら、ここにひきいれたのはトクジだろうが」
だいいち、と、ドウアンはトクジをにらんだ。
「 おれが、あの医者と顔をあわせた時点で、おまえが動けば、間に合ったものを」
「あん?無理いうな。 おめえがケガするぐらいの相手だぜ?」
チサイは、ドウアンの経をかわすためになげた札といっしょに、そばにあった医者がもちいる小さな刃物もなげつけたのだ。




