エピローグ
あれから2年の月日が経ち、まるでジーゼさんの後を追うようにリュデルさんも天国へと旅立っていった。
俺が初めて父さんに手合わせで勝ったのを一緒に喜んでたのに、次の日起きてこないんだもんな。
ビックリしたよ。
今頃は天国でジーゼさんと再会を喜んでるのかな。
そんな風に思いながら、俺はノヴァと丘の上にあるお墓の前で手を合わせていた。
見晴らしも良いし自然も豊かで、とても良い場所だ。
と、後ろから馴染みのある声が掛かる。
「ここに居たのか。リオル、ノヴァ」
「父さん!」
「シュルツさん!」
そう、俺達を呼んだのは父さんだ。
こちらへ歩いてくる父さんを見て直ぐにノヴァと立ち上がる。
目線の高さもかなり近くなった父さんと向かい合った。
父さんは少しだけ寂しそうに笑みを作る。
「…行くんだな」
「うん。リュデルさんと約束したからね」
『いつかアナタを超えてみせる』って。
その約束を果たす為、俺はリュデルさん達と同じようにノヴァとふたり旅をする事に決めたのだ。
そして、出発の挨拶も兼ねて墓参りに来たのである。
父さんは反対したりせず、俺の意志を尊重してくれた。
それでもやっぱり少し心配なようで、ポンと頭に手を乗せ言う。
「何かあったら直ぐに連絡するんだぞ?どこに居たって駆け付けてやる」
「へへ、そうする。ありがと父さん」
「ノヴァもだぞ。わかったな?」
「はい!ありがとうございますシュルツさん!」
俺達の返事を聞いて頷く父さん。
それからちょっとだけ考え、手招きして俺だけ呼んだ。
顔を近づけ、ノヴァに聞こえない程度に小声で忠告する。
「…お前は、クヴァルダのような旅先即婚をしたら駄目だからな」
「だ、大丈夫だよ!さすがにそういうのは帰ってからにするって!証人も父さんとクヴァルダさんにお願いするから!」
「なら良い」
もう、心配性だな!
てかアレに関しては父さんも片棒担いでたじゃんか。
なんて会話をしてたら、当の本人の声がした。
「おーい、リオルくーん!見送りに来たっすよ〜!」
振り向くと、手を振りながらミナスさんと共にこちらに向かってくるクヴァルダさんの姿があった。
クヴァルダさんの頭の上には3本の尻尾が揺れるコンキュルンが乗っている。
そしてミナスさんの腕の中には…とても可愛らしい赤ん坊が抱かれていた。
もちろん2人の子どもだ。
「みんなで みおくりきたよ〜」
「ほらリーゼ。リオルお兄ちゃんとノヴァお姉ちゃんに挨拶してあげましょうねー?」
コンキュルンが元気に言い、ミナスさんも娘のリーゼに話しかける。
リーゼはミナスさんと同じ赤毛にクヴァルダさんと同じダークグリーンの目をしたメチャクチャ可愛い女の子だ。
抱っこさせてもらうと、キャッキャと笑ってくれた。
やばいマジで可愛い。
「あーっ、リーゼと離れるの寂しい…!可愛すぎて行きたくなくなる!」
「うちのリーゼは天使っすからね!」
「くっそぉ、1ミリも否定できない…!」
俺の後に「リオルくんわたしも!」と言ってノヴァも抱っこしながらリーゼに頬擦りした。
なんだこの絵面最高か。
因みに、リーゼの手にはクリスタルのような綺麗な卵が握られている。
そちらもどんな仔が生まれてくるか楽しみだ!
「さて、そろそろオレの天使を返してもらうっすよ〜」
名残惜しそうなノヴァから受け取り、いつものように片腕で抱っこするクヴァルダさん。
何だろうあのスッポリ収まる俺には出せないフィット感は。
やっぱり父親だから?
因みに、器用なクヴァルダさんはちょっとした物なら片腕にリーゼを抱いたままもう片方の腕だけで製作しちゃったりもするので、最近では『翠髪のクヴァルダ』ではなく『子連れ職人クヴァルダ』なんて呼ばれてたりする。
かっけえ。
「義兄さんも、リオルくん達が居なくなって寂しい分リーゼを可愛がると良いっすよ!」
「それは…まぁ、そうさせてもらおう」
平静を装っているが父さんもメロメロだ。
あの愛らしさじゃ仕方ないし寂しさが紛れるなら良いか。
よし、これ以上ここに居たらマジで行きたくなくなるから出発しよう!
「じゃあ、そろそろ行くね」
俺がそう言うと、皆んな改めてこちらに向いた。
「2人とも、気を付けてね。何か聞きたい事とかあればいつでも連絡して♪」
「ぼく おうえんしてるねー」
頼もしき情報屋のミナスさんがそう言い、その肩に移動したコンキュルンも応援してくれる。
「ミナスさん、コンキュルン、ありがとう!」
「頑張ります!」
ノヴァも意気込んで答え、コンキュルンの頭を撫でた。
リーゼを抱っこしたクヴァルダさんも続く。
「たまには帰ってくるんすよ?でないと、リーゼが2人のこと忘れちゃうっすからねー」
「「それはやだ!」」
クヴァルダさんの上から2人でリーゼに抱きついた。
マジで戻れる時は戻ってこよう!
リーゼが喋れるようになったら『リオルお兄ちゃん』って呼んでもらうんだ!
そうしてリーゼに縋る俺達の頭を父さんがポンポンと優しく叩いた。
それを受けて名残惜しくも離れる。
「リオル、ノヴァ。身体に気を付けるんだぞ」
この2年一緒に暮らしてきた父さんの言葉に、ちょっとだけ俺も寂しさを感じつつ笑顔で答えた。
「父さんもね。帰ってきた時、ちゃんと元気に出迎えてよ?」
「あぁ、わかった。約束する」
「必ず帰ってきますね!」
「ん、待ってるぞ」
約束を交わしながら3人で抱きしめ合う。
これからどんな事が起こるか分からないけど、とにかく胸を張って帰ってこれるようにしよう。
父さんから離れ、今度は俺とノヴァで手を繋いだ。
「それじゃあ、行ってきます!」
手を振って、冒険へと歩きだす。
振り返してくれる皆んなを見ながら、その後ろのお墓にも目を向けた。
あの2人なら、きっと来世でもまた結ばれる事だろう。
リュデルさん
ジーゼさん
おやすみなさい。




