表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/62

第45話 覚悟



「見えてきたわ!あそこよ」


ミナスさんが指し示した先を見ると、確かに町が見えた。


あれがアルマかぁ。

王都とかに比べたら小ぢんまりしているけど、明かりがたくさん灯ってるし人も多く行き交っていて盛んなようだ。


「本当に今日の内に着いたね!」


「流石に夜にはなっちゃったけどね。今日は宿に泊まって、買い物は明日にしましょうか」


「そうっすね。あと早く何か食いたいっす」


ぐぅーっとお腹を鳴らすクヴァルダさん。

確かに、夕飯より到着を優先したから俺もお腹ペコペコだ。


魔物に乗って登場なんてしたら大騒ぎになりそうなので、俺達は町から少し離れた所に降り立ち歩いて町へと向かった。


「ベッド…!まずはベッドを確保しましょう!」


ジーゼさんが必死に主張する。

宿を取るじゃなくてベッドを確保って言う辺りジーゼさんらしい。


「人も多いし夜だからな。空いてる部屋があると良いが…」


父さんの懸念も最もなので、夕飯より先に宿探しをする。

案の定既に満室の所が多く、何軒目かでようやく部屋も取れた。


「無事に取れて良かったのう」


「ええ、安心したわぁ」


リュデルさんとジーゼさんが安堵して胸を撫で下ろす。

折角町に着いたのに野宿になるかと思ったもんね。

そうならなくて良かった。


「それより、オレは空腹が限界っすよ…」


俺とノヴァは夕飯までの繋ぎにってオヤツを貰ったけど、他のみんなは何も食べてないから相当お腹が減ってそうだ。


「この時間だと酒場くらいしか開いてないわね」


「まぁこの際仕方ないか…。リオルとノヴァは絶対に私達から離れないように」


「「はい!」」


父さんの言葉に、俺とノヴァは目をキラキラさせて返事をした。

未成年だけだと断られちゃうから、酒場とか初めて入るよ!

ちょっとドキドキする!!


「コンちゃん。入店拒否されちゃうかもしれないから一応隠れてくれる?」


そっか、ペットNGってなるかもしれないもんね。


「うん、わかったー」


ミナスさんのお願いにコンキュルンは返事をすると、来る時とは逆に手のひらサイズくらいまで小さくポンっと変身した。

サッとミナスさんの被っている帽子の中に隠れる。


「これでいーい?」


鼻先だけ出して確認するコンキュルンが死ぬ程かわいい。


「うん、バッチリよ」


ミナスさんに褒められると、コンキュルンは鼻先も引っ込めて完全に隠れた。

それを確認し、早速みんなで近くの酒場へと入る。


酒場の中は既に多くの酔っ払いで賑わっていて、笑い声やら何やらでとても騒がしい。

取り敢えず空いているテーブルを見つけてみんなで座った。


「はぁー、やっと飯にありつけるっす!折角だから酒も頼んじゃうっすか?」


「あら良いわね♪」


「飲み過ぎんようにするんじゃぞ?」


「わかってるっすよ」


そんな感じで料理やらお酒やらを色々注文してる。

みんな慣れてる感じだなぁ。

俺とノヴァは初めての酒場でドキドキキョロキョロしてるのに。


因みに運ばれてきた料理もお酒のつまみになりそうなものばかりな感じだ。

でもすごい美味しそう。


「2人とも遠慮しなくて良いからな?他に食べたいものあれば言うんだぞ?」


そう言いながら父さんが、落ち着かない俺達の為に大皿の料理を色々取り分けて目の前に置いてくれた。

すごい助かる。


「ありがとう父さん」


「いただきます」


おかげでノヴァとすんなり食事に入れた。

おぉ、どれもこれも美味しい!


と、余裕が出てきた為か周りのお客さんの声も耳に届いてくる。


「ねぇ、あそこの席の2人凄いイケメンじゃない?」


「えー?あ、本当だぁ」


女性ばかりの席の人が言ってる相手は、どう見てもクヴァルダさんと父さんだ。

お酒が入ってるからか視線も露骨だなぁ。


「でも残念ねぇ。片方は女連れだし、もう片方なんて子連れよ?」


「そりゃあ、あんなイイ男放っておかれる訳ないかぁ」


その会話を同じように聞いていたらしきクヴァルダさんが父さんに小声で言う。


「義兄さん、リオルくん達めっちゃ良い女避けになってるじゃないすか。毎回連れて入ったらどうすか?」


「馬鹿を言うな。タチの悪い客に絡まれる危険だってあるだろう」


呆れながら言葉を返す父さん。

すると、まるでそれが予言だったかのように背後から泥酔したオジサンが俺とノヴァに話しかけてきた。


「なんだぁ?なんでこんな所に子供が居るんだぁ?ここはお前らみたいなのが来るとこじゃねえぞぉ」


「ひぅっ」


怯えたノヴァが俺にしがみつく。

溜め息をついた父さんが「こんな風にな」と言い、クヴァルダさんが「あー…」と苦笑した。

尚も絡んでくる酔っ払い。


「もしここに居たいんだったらなぁ、ホレ、この酒を飲…」


――ズオッ! バタッ


うお!

リュデルさんと父さんが局所的に闘気(殺気?)を発してオジサンだけにぶつけた!

なに今の高度な技!


因みに周りからは飲み過ぎて倒れたようにしか見えず、飲み仲間らしき人がペコペコしながら助け起こしにきた。


「あーあ、どんだけ飲んだんだコイツ」


「迷惑掛けちゃってすみませんね皆さん。気にせずどうぞ」


周りの客も全然気にした様子は無い。

よくある事なのかな。


なんて思いながら見ていたら、他の客のとある会話が耳に届いた。


「そういえば、こないだ来てたドワーフも滅茶苦茶飲んでたよなぁ」


「酒に強い種族だとはいえ、えげつねぇ量飲んでたもんな」


ドワーフって背の低いおじさんで鍛治とか得意な種族だよね!?

ここに来てたの!?

うわぁ、見た事ないし一度会ってみたいなぁ。


「あれはヤケ酒だったろ?なんか夢だった聖剣を完成させられなかったとか何とか」


…ん?


「必要な鉱物を先に持ってかれてたって泣いてたよな」


んん?


「確かに、先を越されたって泣き叫びながら酒煽ってたわ」


まさか…という気持ちで聞き耳を立てるみんなの動きが鈍る。

そして次の言葉が決定打だった。


「しかも、それ持ってって聖剣作ったの勇者一行だから文句も言えないって嘆いてたもんな」


「はは!本当かは知らないけど、そりゃあ勇者の方が聖剣持つに相応しいよな!」


静かに天を仰ぐ俺達。


うわぁーマジか。

俺達じゃんそのドワーフの夢を壊したの。

必要な事だったとはいえ、何とも言えない気持ちだ。

少し気まずい空気感でみんなと目を合わせる。


「コレ美味いっすねー」


「ええ、お酒が進むわねー」


「ばあさんお茶のおかわり要らんか?」


「頂こうかしらぁ」


あ、うん、賛成。

聞かなかったことにしよう!


まるで何事も無かったかのように振る舞い飲食を続ける。

あまり遅くならない程度に切り上げ、宿へと向かったのだった。






「きゃー!可愛い!」


「ノヴァちゃんとっても似合ってるわぁ」


「そ、そうですか?」


翌日、早速防寒着を買いに来た俺達。

そしてそこで、ミナスさんとジーゼさんによるノヴァの着せ替え祭りが開催されていた。


王都の時を思い出すなぁ。

今回のターゲットは俺じゃなくてノヴァだけど。

でもって俺と違ってノヴァは嬉しそうで疲れた様子も無い。


「リオルくん、どうかな?」


「うん、可愛い。すごい可愛い。ネイビーも良いね」


モジモジしながら逐一俺に聞いてくるその姿の愛らしさたるや。

フワモコの服を着たノヴァは本当に可愛くて、試着した服全部買ったら良いんじゃないかと思う。


「おぉ…前から思ってたっすけど、リオルくんってじいちゃんの性質ガッツリ受け継いでるっすよね?普通そろそろ飽きてくるっすよ」


「毎回本気で褒め称えてるな」


いっそ感心するように言うクヴァルダさんと父さんに首を傾げる。

飽きる?なんで??


「飽きる方がおかしいじゃろ。可愛い姿はいくらだって見たいもんじゃ」


「うんうん。そうだよね」


「うわぁ、こりゃ確定っす」


リュデルさんの言葉に頷いたら確信された。

解せぬ。


「あ、コンちゃんも何か着る?」


「えー、ぼくさむくならないよ?」


「良いから良いから♪」


ミナスさんに言われると逆らえないコンキュルンは、大人しくフワモコのポンチョのような犬用の服を着せられた。


「「かわいい…!!」」


ノヴァとジーゼさんがハートを撃ち抜かれてる。

いや俺から見てもメチャクチャかわいい。


「凄い似合ってるわコンちゃん!これ買っていきましょ!」


「うごきにくいよぉ」


「着てくれたら嬉しいな?」


「みなすがうれしいなら きるー」


やだかわいい。


そんなコンキュルンも含め、全員の防寒着を購入する。

他にも必要そうな物は揃えたし、これで雪山も大丈夫だろう。

準備が整ったという事で早々に町の外に出た。


「んじゃあ、こっからは真っ直ぐシルバス山に向かう感じっすか?」


「そうね。山の麓に温泉郷があるから、登る前にそこで休んだら良いと思うわ」


「昔行ったが、なかなか良い温泉じゃったぞ」


「楽しみねぇ」


そっか。

リュデルさん達は昔行った事あるんだもんね。

温泉郷かぁ。楽しみだ。


「ミナスさん、またコンキュルンに乗っていくんですよね?」


ノヴァがワクワクしながら聞く。

よっぽどコンキュルンの背中が気に入ったらしい。


「ええ。コンちゃん大丈夫よね?」


「もちろんだよ!」


意気込んでフンスと鼻息を吐くコンキュルン。

こんなにかわいくて頼もしいとは。


「コンキュルンすごいよね。大きさも自在に変えれて魔物も使役できちゃうんだから」


そう褒めると、コンキュルンは嬉しそうに尻尾を振りつつ自慢げな顔をした。


「みなすといっしょだから ゆうのうなの!ぼくはみなすの ゆいいつの ぱーとなーだからね!」


と、その言葉になぜかクヴァルダさんが反応する。


「オレだってミナスのパートナーっすよ!」


え、何を張り合ってるの?


「ぼくが ぱーとなーだもん!ゆずらないよ!」


「譲られなくたって事実っす!」


「なにをー!?」


「やるっすかー!?」


なんか争い始めちゃったぞ。

大丈夫なのこれ?


「み、ミナスさん。ケンカし始めちゃったけど良いの?」


俺がそう聞くと、ミナスさんはクスクスと笑い出した。


「ふふ、大丈夫よ。そもそもコンちゃんはあたしと繋がってるからね。クヴァルダのこと、嫌いにはなれないわ」


そう言いながら片目を瞑るミナスさん。


おぉ…なんか今のはこうキュンときた。

ミナスさんのクヴァルダさんへの愛を感じたというか…。


ちょっとドキドキしつつ視線をクヴァルダさんとコンキュルンに戻す。


「ほら、木彫りのコンキュルン完成っす」


「えー!くゔぁるだ すごーい!そっくりー!くゔぁるだも ぱーとなーでいいよー」


「あざーっす!」


あれ!?

いつの間にか打ち解けてる!

クヴァルダさんの頭の上にコンキュルン乗ってるし!

一瞬の目を離した隙に何があったの!?


驚く俺の横で、リュデルさんとジーゼさんが楽しげに声を掛ける。


「ほれほれ、その辺にしてそろそろ出発するぞ?」


「そうよ。仲良くなるのは素敵だけ…」


それは、本当に突然だった。


言い掛けたジーゼさんに異変が起こる。


「…ゴフ…っ」


違う。

これはいつもの感じじゃないと…瞬間的にわかってしまった。

吐血したジーゼさんを見て、父さんが血相を変えて叫ぶ。


「クヴァルダ!ベッドを出せ!」


父さんの言葉に反応して、即座にマジックバッグからベッドを出すクヴァルダさん。

リュデルさんが直ぐにジーゼさんを横たえさせる。


真っ青な顔で呼吸を荒くし、意識も朦朧としているジーゼさん。

額に汗を浮かべながら、父さんが必死に魔力治療を施している。

その様子を、俺達はただ立ち竦んで見守る事しか出来なかった。




どのくらいの時間が経ったのだろう。

長いのか短いのかもわからないけれど、茫然としている間にジーゼさんの呼吸が落ち着いた事に気付いた。

顔色も幾分か良くなり、表情も少し安らかになったようだ。


「ハァ…ハァ…」


かなりの魔力を消費したらしき父さんが、汗を落としながら肩で息をしている。

そんな父さんにそっと近付き問い掛けた。


「…父さん、大丈夫?それに、ジーゼさんは…?」


俺の質問を聞いても、いつものように笑みを作ることのない父さん。

それだけで、良くない状況だというのは察せられた。


「今は…何とか持ち直した。だが…」


父さんは一度グッと目を瞑り、全員を見回した。


「皆んなに…特に、夫であるリュデルさんには…医師としてきちんとお伝えします」


改まった言い方に息を呑む。

誰も言葉を発する事なく、黙って父さんの言葉を聞いた。


「分かっていたとは思いますが、ジーゼさんは魔力の寿命による身体の機能不全でこの旅をする前から危険な状態でした。本来なら…とっくに亡くなっていた筈です」


「…!」


突き付けられた事実に、衝撃が走る。

血の気が引く俺達に言葉を続ける父さん。


「ですがジーゼさんは、驚異的な生命力を見せました。恐らくこの旅が…ジーゼさんの生きる糧となっていたんでしょう」


そう言いながら、父さんは拳を握り締めた。


「ですが…それももう限界です」


ドクンと心臓が嫌な音を立てる。

目を背けたくなる現実を、父さんははっきりと告げた。


「ジーゼさんは、今すぐに亡くなったっておかしくないような状態です。覚悟を…しておいてください」


わかっていた…筈だった。

ジーゼさんは瀕死の状態で、危険だって。

なのに、俺はこれからもずっと今までみたいに居られるように思っていた。

何の根拠も無いのに。


すると、言葉を失っていた俺達に弱々しい声が届いた。


「…あら…いつの間にか、寝ちゃってたのね…」


それを言ったのはジーゼさんだ。

ハッとしてすぐにリュデルさんが傍に寄る。


「ごめんなさい…心配…掛けたわね。もう大丈夫よ…」


力無く笑みを作るジーゼさんに、リュデルさんは微笑んで返す。


「ええんじゃよ。無理せず、もう少し休んでおれ」


「ありがとう…おじいさん。じゃあ、お言葉に甘えてもう少しだけ…」


呟くように言って空に目を向けるジーゼさん。



あぁ…どうしよう。

泣きそうだ。

一番泣きたい筈のリュデルさんが堪えてるのに、俺が泣いたりしちゃ駄目だってわかってるのに…。



察したように、父さんがそっと俺を背に隠してくれる。

ジーゼさんに気付かれないよう、声を押し殺して…俺は父さんの背中で涙を流したのだった。







気になる人がいるかもなので補足しますと、ジーゼさんは加齢により魔力の流れに不具合が生じて身体にガタが来ているという状態です。


魔力の寿命なので治す事は出来ず、症状の緩和や進行の遅延が精一杯。

この世界では珍しくない症状です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ