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第44話 移動手段



「ごめん、お待たせ」


「ううん。報告お疲れさまー」


ローブの男についてギルドに連絡を入れていたミナスさんが電話を終えて戻ってくる。

あとはギルド黒兎に任せておけば大丈夫だろう。


そんな訳で、頭を切り替え早速次の目的地を確認した。


「それで、ユルとの決闘の場所ってどこなの?」


ラズウェルに向かう流れになった為に聞いてなかった場所を改めてリュデルさん達に質問する。

確か、『以前戦ったあの場所で待っている』ってユル言ってたけどどこなんだろう。


「そういやまだ言っとらんかったな。ワシらが前にユルと戦った場所は…霊峰『バニンガ』じゃ」


「え!?それって焔に囲まれてて入れないって言われてるあの岩山!?」


俺でも知ってるくらい有名な山だ。

大小沢山の岩柱が集まって出来てるような巨大な岩山で、決して消えない不思議な焔に山全体が囲われてるという。


「そう、そこよぉ。ユルが棲家にしてるって分かって、こちらから乗り込んでいったの」


「ていうかどうやって入ったの!?」


「ちゃんと入る方法があるんじゃよ」


リュデルさんの言葉を聞き、直ぐにピンと来たミナスさんが確認する。


「もしかして、氷の精の刻印ですか?」


「うむ、その通りじゃ」


氷の精の刻印?

そっちは初めて聞いた。


同じく知らない様子のノヴァと首を傾げてミナスさんを見ると、すぐに説明してくれる。


「シルバス山っていう雪山にね、氷の精達が住んでいるの。その精の女王様に氷の刻印をしてもらうと、一定期間あらゆる炎に耐えられるようになるのよ」


氷の精とか本当にいるんだ!

その刻印っていうのもすごい気になる!


「という事は…まずはシルバス山に向かわないといけないのか」


「うへぇ、寒そうっすね」


父さんの言葉を聞いてクヴァルダさんがウンザリした顔をする。

寒いの苦手なのかな?


「実際、かなり寒い筈よ。途中で防寒着を用意した方が良いわね」


防寒着かぁ。

セラさんから貰ったローブ程度じゃ雪山なんて耐えられなそうだもんな。

あ、そういえば。


「ちょっと気になったんだけど、ノヴァは暖ったかい服とかも作れたりするの?」


「うーん…涼しい服作るのは得意だけど、暖かいのだと他の材料とかも必要になるから難しいかなぁ」


「やっぱそっか。でも、服作れる時点ですごいよ!」


「本当?嬉しい!今度リオルくんの服も作ってあげるね」


「え、やった!ありがとう」


ノヴァとそんなやり取りをしていたら、ミナスさんとクヴァルダさんが苦笑いした。


「リオルくん…普通にノヴァちゃんに作らせようとしてるけど、本来シルク族製の服なんてかなり希少な物なんだからね?」


「そうっすよ。こないだの結婚式衣装だって、ローン組んででもノヴァちゃんにお金払って買い取るべきかオレら本気で悩んだんすから」


そういえば買い取らせてって頼んできた2人に結婚祝いだって無理やり押し付けたんだっけ。

この2人でも一括で払えないって一体いくらの価値があったんだ。


「もしかしてノヴァの作る服1着で家買える?」


「余裕で買えるわね」


うわぁ、そこまでとは!


「すごいねノヴァ。もし商売したら大金持ちだよ」


「服以外の物も売れるかな?」


「他にも作れる物あるの!?」


ドキドキしながら小声で話し合う俺達の会話を聞き、「この子達事の大きさを分かってないわ!」「大丈夫っすか!?義兄さん絶対2人から目を離さない方が良いっすよ!」と夫婦が後ろで騒いでいる。


それを全スルーで、ノヴァはとある物を作り出した。

これが俺達の腹筋に大ダメージを与える事になるとは思いもせず。






「どうじゃ?」


「「アッハハハハ!!!」」


堪え切れず、リュデルさんを見た俺とクヴァルダさんが大爆笑する。


リュデルさんの頭にあるのは、本来は無かったサラッサラの髪の毛。

そう、ノヴァが作ったのはカツラだったのだ。

そしてそれをノリノリで被ったリュデルさんである。


「似合ってる!!メチャクチャ似合ってる!!」


「い、違和感無さすぎて逆にヤバいっす!!」


白髪のカツラだし元々の顔立ちもあってか、普通に男前な感じになってるのが面白過ぎてお腹痛い。

ジーゼさんは「おじいさん素敵よぉ」と頬を染めて褒めているが、父さんも顔を背けてプルプルしてるしミナスさんも両手で口を押さえて涙目で堪えている。


因みにコンキュルンもミナスさんの真似して前足で口元を押さえてて、その姿にノヴァが悶絶してた。


「や…やばい、ホントに腹筋痛い…!」


「オレ明日絶対筋肉痛になるっすよ…!」


さすがにカツラは予想外だった…!

ヒーヒー言いながら笑い転げる俺達の横で、笑いを堪えつつもミナスさんが観察する。


「で…でもアレ凄い上質よ。シルク族製だけあって…ふ…凄いサラサラだし…っ。ノ、ノヴァちゃんしか作れないから無理だけど、もし量産できたら女性にも売れると思…ふっ」


ミナスさんも堪え切れてないよ。

俺もそろそろ崩壊しそう。


「リュ、リュデルさん…もう限界取って…!」


「なんじゃあ残念じゃのう」


「気に入ってるとこ悪いっすけどオレも限界っす…!」


仕方無しに外してくれたおかげでようやく笑いも収まる。

あー…笑い死ぬかと思った。


「ノヴァちゃんありがとう。素敵なおじいさんを見られて嬉しいわ」


「えへへ、なら良かったです」


俺達は笑っちゃったけど、ジーゼさんは本当に嬉しそうだ。

愛を感じるなぁ。


いやでも…ノヴァの手作りか。

それはなんか悪くない気がするぞ。

寧ろ欲しい。


「ノヴァがカツラ作ってくれるんなら、俺将来ハゲても良いかもしれない」


腰に手を当て未来への活路を開いてそう呟く。

すると、同じように腰に手を当てながらクヴァルダさんも俺の横に並んだ。


「絶対オレの方が先にハゲるだろうから予約して良いっすか?」


「しょうがないなぁ。クヴァルダさんなら良いよ」


リュデルさんの血を引く俺達の未来は明るい。


「ところで、ここからシルバス山まではかなり距離がある筈だろう?移動手段も考えた方が良いんじゃないか?」


「あ、そうですね」


父さんが思案しながらミナスさんに話を振る。

乗り物とかも使わずに向かったら3週間くらいは掛かる距離らしい。

それは確かに徒歩だと大変そうだ。


と、話を聞いていたコンキュルンがミナスさんの肩の上で右前足を挙げた。


「みなすー、ぼくたぶん もうおおきくなれるよー」


「え!?本当!?」


「うん。みなすにくっついてたから すごいかいふくしたの」


大きくなれる?どゆこと?


よくわからないまま注目していると、コンキュルンはミナスさんの肩から飛び降りた。

そして地面に着地すると同時に光り出す。


――パァッ ぽん!


「「「!!」」」


こ、コンキュルンが巨大化した!!

5メートルくらいあるんじゃないコレ!?

なんか頭身も大人の狐に近くなってる!!


「すご!どうなってるの!?」


驚く俺達に、ミナスさんがすぐ解説してくれる。


「アルフ族の獣は、移動手段としても使えるように自在に大きさを変える事が出来るのよ。弱ってたからまだ無理だと思ってたんだけど、大丈夫みたい」


大きくなったコンキュルンは得意げに言う。


「これならみんな のれるでしょー?」


「乗れる乗れる!すごいよ!」


「乗ってもいいの!?」


「いいよー」


一度近付いて逃げられた事のあるノヴァは特に嬉しそうだ。

伏せてくれたコンキュルンに必死に登ろうとしてるけど、なかなか登れず大苦戦してる。

可愛い。


「ほら。落ちないようにしっかり掴まるんだぞ」


「あ、ありがとうございますシュルツさん」


見兼ねた父さんがノヴァを抱き上げ乗せてあげた。


くぅっ!俺もアレやってあげたかったけど身長がまだ足りな過ぎる!

父さんの子だからいつかは高身長になれると思うけどさ!


悔しがりながら見てる俺へ、父さんも目を向ける。


「…リオルも乗せてやろうか?」


「いっ、いいよ恥ずかしい!自分で乗るよ!」


そこまで子供じゃないやい!

まぁあの顔は揶揄って言ったんだろうけど。


急いでノヴァの後ろに飛び乗ると、他のメンバーも続くようにコンキュルンの背に乗った。

わぁっ、フカフカしてて気持ちいい!

思ってたより安定感もある!


「コンちゃん、結構な人数乗ってるけど大丈夫?無理はしなくて良いのよ?」


「へーきだよぉこのくらい!まずはどこにいくのー?」


「そうね…シルバス山に行く途中に『アルマ』っていう町があるから、まずはそこに向かってくれる?そこで準備を整えられる筈だから」


「わかったぁ。それじゃあいくよー!」


言いながら、すぐに走り出すコンキュルン。

方角とかわかっているのか疑問だったけど、ミナスさんが知識としてあればコンキュルンもなんとなくわかるらしい。

本当に不思議な種族だ。


コンキュルンは身のこなしも軽く、想像よりもスピードがあってスイスイと走る。


「おーっ、速い速い!」


これならそのアルマって町までも直ぐ着きそう!


「もふもふ…ずっと乗ってたい…。ミナスさん、アルマにはどのくらいで着くんですか?」


コンキュルンの背中にメロメロになりながらノヴァが聞く。


「そうね、このペースだと明日とかになりそうだけど…」


「すぴーどあげるー?」


「出来そう?」


「うん!」


どうやらまだ速くできるようだ。

ノヴァが「速くしなくて良いのに…」と呟く中、コンキュルンは空に向かって鳴き声を発した。


――キュィィィィーーーン!


甲高い不思議な音が響き渡る。

すると、上空を飛んでいた鳥型の魔物達が突然こちらへ向かってきた。


「え、魔物が…!」


瞬間的に身構えたが、襲ってくる感じではない。

まるで連携を取るかのように集まって旋回し、タイミングを合わせてコンキュルンが飛び乗った。


「とんでってー」


コンキュルンがそう言うと、俺達を乗せた状態のまま再び上空へと魔物達が飛び上がる。

あっという間に俺達は空まで来てしまった。


「え、すごい!これが使役の力!?」


「そうよ。これなら目的地まで一直線に進めるし、アルマにも今日中に着けると思うわ」


「へー、便利っすね!」


「まぁずっと使役できる訳じゃないから、途中で別の魔物に乗り換えなきゃいけないけどね。後はあたし達の魔力残量次第ね」


「あるままでは いけるとおもうよー」


うわぁ本当にすごい!

ユルとの決闘後回しにしてラズウェル行ったけど、結果的に真っ直ぐ雪山向かうより早く着きそうな気がするぞ。



そんな素晴らしき能力を発揮してくれたコンキュルンの背に乗って、俺達はアルマへと向かったのだった。





挿絵(By みてみん)

髪があると別人w

描く分には髪が無い方が楽なので全員禿げれば良いのにと思う。

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