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第43話 孤児院



「院長先生ー!」


「あら、リオルくん!えっ、ノヴァちゃんも!?久しぶりねぇ」


空の下、笑顔で出迎えてくれたのは俺達が育った孤児院の院長先生だ。

実は転移してきたあの廃墟は、孤児院から歩いて20分くらいの場所にあったのである。


崩れそうなくらいボロボロだし、森の中にポツンとあって幽霊が出るなんて噂もあったから入った事は無かったけど。

あの廃墟を「ノヴァの住む家だ〜」と吐かした悪ガキ共をボコボコにして院長先生にこってり絞られた事もあったからよく覚えている。


「また2人が一緒に居るのを見られるなんて夢みたいだわ」


俺はたまに顔を出してたけど、ノヴァは4年振りだから院長先生の喜びもひとしおだろう。

薄っすら目に涙も浮かべてる。


それから、俺達の後ろにも目を向けた。


「それで…そちらの方達は?」


院長先生の質問に、俺はほんの少しだけ改めるようにして手をみんなの方に向け紹介する。


「えっと、俺の家族です」


なんかちょっと照れ臭くて敬語になっちゃった。

驚く院長先生の前に、真っ先に父さんが出て自己紹介する。


「初めまして。リオルの父親のシュルツです」


うわわ、改めて言われるとなんか照れるというか変な気分…!


「お、お父様ですか!それじゃあ、他の方々は…」


「ワシが曽祖父で」


「ワタシが曽祖母です」


院長先生へ直ぐにリュデルさんとジーゼさんも答えた。

続けてクヴァルダさん達も口を開く。


「オレは叔父っす」


「あたしはその嫁です」


因みにコンキュルンは空気を読んでか、喋らずにミナスさんの肩で佇んでいた。


急にたくさんの家族が現れ、先生もかなり驚いているようだ。

目をパチクリさせている。


「まぁ、そうでしたか。初めまして、私はこの孤児院の院長をやっているタリアと申します」


名乗った先生に、父さんが真剣な表情で言葉を掛けた。


「タリアさん。息子を見つけてくれ、こんなに立派に育ててくれて…本当にありがとうございます。もし貴女が居なければ、私はこうして息子と会う事は出来なかったでしょう…。感謝してもしきれません」


その誠実な態度に、決して俺を捨てた訳ではないと院長先生も察したようだ。


「あの、もしかしてずっとリオルくんを捜してらしたんですか?」


「いえ…恥ずかしながら、私は息子が生まれていた事も知りませんでした…」


「…何か…ご事情があったんですね?」


院長先生の問いに、「実は…」と話し出す父さん。

これまでにあった出来事を先生に伝えた。


「まぁ…それじゃあリオルくんのお母さんは、魔物に…」


口元を押さえ、院長先生もショックを隠しきれない様子だ。


「はい…。恐らくリオルを守って…」


そう言いながら俯く父さん。

院長先生も静かに話す。


「実は…私も何か事情があったのではないかと思い、何度かリオルくんを見つけた場所に足を運んだりはしていたんです。でも、その状況では行き違いになってしまったんでしょうね…」


「そう…ですね。妻の遺体が見つかったのもここからかなり距離がある場所で、その後も葬儀などで森まで来る余裕はありませんでしたから…」


当時の事を思い起こしてか、シンとした空気が流れる。

目を伏せながら、父さんは言葉を続けた。


「私は今まで、妻も子も一緒に殺されたのだと思っていました。どんなに会いたいと願っても、二度と叶う事はないと…そう、思っていたんです」


泣きそうなくらい切なげに言う父さん。

一体今までどれ程苦しんできたんだろう。

心配になり、思わず袖を掴む。


父さんは俺の顔を見ると、本当に嬉しそうに微笑みながら俺の頭を撫でた。


「まさか…こうして自分の子に会える日が来るなんて、夢にも思いませんでした」


こんなに喜んでくれる父さんを見ると、俺まで嬉しくなってくる。

互いに笑い合っていると、院長先生もホッとしたような顔をした。


「素敵なお父さんで良かったわね、リオルくん」


「うん!」


これについては否定のしようが無いので素直に頷く。

と、他のメンバーも食い付いてきた。


「ワシは?」


「ワタシは?」


「オレは?」


「あたしは?」


「いやもう大丈夫だよみんな最高だから!そんな欲さないで!」


欲しがりさんばっかりか!

すごい嬉しそうな顔するから怒れないけどさ!


そんな俺達のやり取りを見て笑う先生。

それから、今度はノヴァに目を向ける。


「それにしても、ノヴァちゃんもリオルくんと一緒に居るとは思わなかったわ。元気にしてた?」


「はい…あの、でも」


先日の村での事件を先生に話すノヴァ。

途中で辛そうに俺の手を握ったので、そっと握り返しながら話し終わるのを待った。


「そんな…事が…」


シルク族の村で起こった惨劇に、院長先生も愕然とする。

ノヴァを気遣いそっと肩に手を置いた。


「大丈夫?ノヴァちゃん。なんなら、ここでまた一緒に暮らしても良いのよ?」


その提案を受け、即座にノヴァは首を横に振る。


「ううん、大丈夫です。リオルくんが…ずっと一緒にいてくれるって約束してくれたので」


ほんのり頬を染めて言ったノヴァの言葉を聞き、俺の方を見る院長先生。

俺まで頬が熱くなるのを感じつつ小さく頷いた。


「あら。あらあらそうなのね!」


なんかすごいニヤけながら喜んでる!

育ての親の院長先生にこういう反応されると妙に恥ずかしい…!!

これ以上深くツっこまれない内に話題変えよう!


「そっ、それより院長先生!また寄付金持ってきたよ!」


俺の振った話題にすぐニヤけ顔を引っ込める先生。


「まぁ、また持ってきてくれたの?いつも言ってるけど無理しなくて良いのよ?」


「無理なんかしてないって!俺稼ぐの上手だって前から言ってるじゃん!」


心配する院長先生によく見えるよう手を広げる。


「ほら、今回なんて装備も新しくしたんだよ!高性能のマジックバッグもGETしたし、かなり稼いだんだ!」


先生はよくよく見て、驚いた様子を見せた。


「あら、本当に良い物ね。前回来た時とは比べ物にならないわ。リオルくん、凄いじゃない!」


「へへ、でしょ?だから遠慮無く受け取って!」


胸を張って差し出す俺から、眉を下げて「ありがとう」と寄付金袋を受け取ってくれる院長先生。

いつも受け取ってくれるまでかなり渋られるから、今回はすんなりいって良かった!


と、やり取りを見ていた父さんがなぜか院長先生に聞こえない程度に声を潜めて聞いてきた。


「…リオル、定期的に寄付してたのか?」


「え?うん」


「今みたいに?」


「う」

――ピタ


返事をしかけて思わず固まる。


しまった!

みんなには冒険者なんて稼げないからその日食べるので精一杯っていうの喋っちゃったんだった!

見栄張ってたのバレバレじゃんか恥ずかしい!!


「あ、いや、えっと…」


誤魔化す言葉も見つからず、赤面しながらみんなの反応をチラッと伺う。


え、待って。

何でみんなそんな感極まったような顔してるの?


――ギュウッ


「わあ!?ちょ、何で!?」


みんな一斉に抱きしめてきた!

どさくさに紛れてノヴァまで抱きついてきてる!

院長先生も見てるし恥ずかしいからやめて!


父さん(避難先)にも抱きしめられてるので逃げ場も無く、揉みくちゃにされる俺を見て院長先生は楽しそうに笑った。


「リオルくん、とっても大事にされてるのね。先生安心したわ」


安心していただけたのならこんな目に遭わされた甲斐もあるってもんです。


すると、父さんがスッと離れて院長先生の近くへ行った。


「私からも孤児院へ寄付をさせて下さい。取り敢えず…これで」


父さんは現金ではなく、取り出した紙束にサラサラと書き込んで一枚切り取り手渡す。

あれって…小切手ってやつかな?


確認した院長先生が目を見開いて動揺する。


「え!?こんな額、受け取れません!」


「いえ、そちらはこれまでの養育費や謝礼も含んでおりますので。今後は標準的な額を寄付しますから気にせず受け取って下さい」


「それにしたって多過ぎますよ…!」


一体いくら提示したんだ父さん。


「ワシらも寄付してええかのう?」


「オレらもするっす!」


「孤児院を豪邸にするつもりですか!?」


リュデルさん夫婦とクヴァルダさん夫婦もかなりの金額を提示したようで先生が目を回してる。


結果的に、父さんからの寄付金だけ受け取り、後は今後の定期的な寄付のみ受け取るという形で落ち着いた。

この孤児院は生涯安泰だな。よかった。


「はー…驚いたわ。リオルくんのご家族がこんなに凄い人達だったなんて」


「うん。俺もビックリしたよ」


なにせ勇者一族だからね。


院長先生は自分を落ち着けてから、感慨深気に俺に言った。


「それにしても…お母様が宝石を遺してくれていて良かったわね。もしあれが無かったら、ご家族だって知る事もなかったんでしょう?」


「あ…うん。確かに。そしたら、みんなとはいずれお別れしちゃってたのかな…」


そうならなくて良かったと、今は心から思う。

最初は成り行きみたいな感じだったけど、もう一緒に居るのが当たり前のようになってるから。


が、ここで父さんがサラッと告げた。


「いえ、恐らくリオルを息子にはしてました」


「「え!?」」


驚いて院長先生と声をハモらせる。

少しだけ目を逸らして続ける父さん。


「その…リオルさえ良ければ、養子に迎えようかと考えていたので…」


父さんあの時俺が言ったこと本気で考えてくれてたんだ!

俺も絶対断らなかったと思う!

じゃあどっちにしろ、父さんの息子にはなってたのか!


なんだか嬉しくて、俺は初めて自分から父さんに抱きついた。


「ありがと父さん!どう転んでも、俺は父さんの息子だったんだね!」


「…ああ」


一度驚いてから、顔を綻ばせる父さん。

この人が自分の父親で本当に良かった。


と、ソワソワとしながらリュデルさんが近づいてきて背中のジーゼさんが手を広げた。


「ほれリオル。ワシにも抱きついてええんじゃぞ?」


「ほらぁ、ワタシもここにいるわよ」


主張が激しい。

でもひいおじいちゃんとひいおばあちゃんだから吝かではない。


「2人と偶然会ったのがキッカケだもんね。ありがとう」


ギュッと2人に抱きつくと、それはそれはもう顔を弛めて喜んでくれた。

人様に見せたらマズい顔してるよ!

引き締めて引き締めて!


更に、後ろでクヴァルダさんとミナスさんもバッと手を広げた。


「ちょっ、リオルくん次こっちっす!」


「おいでおいで!」


「何で順番待ちしてるの!?もうやんないよ!」


「くそ!締め切られたっす!」「流れでイケるかと思ったのに!」と言いながらショックを受けてる2人。

隙あらば抱きついてくるこの夫婦は却下です。


この騒がしいやり取りに、院長先生はまた可笑しそうに笑った。


「ふ…ふふ。本当に、仲が良いのね。短い時間でも充分わかったわ」


目尻の涙を拭いながら言う院長先生。

そんなに面白かったかな?


と、そんな先生へ呼び掛ける声が孤児院から響いた。


「せんせー」


「おなかすいたー」


まだ小さい子ども達の声を聞き、「あら大変!」と慌てる院長先生。


「ごめんね、行かなきゃ。あ、リオルくん達も食べていく?」


「ううん、先を急いでるから」


「そうなのね。…また、顔出しに来てね?」


「うん!」


返事をした俺の隣でノヴァも手を挙げる。


「次からはわたしもリオルくんと一緒に来ます!」


「ええ!楽しみにしてるわ」


俺とノヴァの頭を撫で、院長先生は急いで孤児院に戻っていった。

その姿を全員で見送る。


「じゃ、行こう!」


「良いのか?」


「うん!みんな、一緒に来てくれてありがとう!」


当然だと言うように各々頷いてくれ、再び歩き出す。

院長先生も喜んでくれたし来て良かったな。


さあ、目的も果たしたし改めてジーゼさんのベッド作りだ!




こんな寄り道も挟みつつ、最後の材料であるユルの羽をゲットするため俺達はまた旅を再開したのだった。





リオルくんがボロ儲けしても金欠だったのはコレが理由です。

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