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第40話 ローブの男



「あ、ほら。見えたわよ」


「本当だ!お城がある!」


あれから2日後、砂漠を歩き続けた俺達の前にようやく王城が姿を現した。

他の建物などは殆ど残ってなくて、あっても石壁とかの一部なのに城だけはちゃんと形として残っているようだ。


…それにしても


「うわ…なんかすごい嫌な感じがする」


「うん。気持ち悪いね…」


近付くにつれ、その城からの嫌な感じが強くなる。

俺と同じようにノヴァも顔を顰めていた。

アークデーモンが出現した時と似た感じだな。

未だに気配が残ってるんだろうか。


「2人とも大丈夫か?無理はするな」


心配して俺達の背に手を添えた父さんに頷き返す。

嫌な感じはするけど、耐えられない程じゃない。


「…変ね」


と、ミナスさんが不審な顔で呟いた。


「変って、何がっすか?」


「昔ギルドでラズウェルを調査した記録では、城も半壊してるって記載されてたのよ。その割にかなり形として残ってると思って…」


ミナスさんの言葉を聞き、クヴァルダさんが「んー…」と言いながら目を凝らす。


「あれ、修繕されてるっすね。素人がやったのか形も歪だし」


まだ城まで距離あるのにわかるのか!

さすがクヴァルダさん!


「わざわざ修繕しているという事は…間違いなく何かありますね」


「そうじゃな。妙な魔物の気配も多く感じるしのぅ」


父さんの言葉にリュデルさんも頷いた。

俺は嫌な感じって事しかわからなかったのに、魔物の気配まで感じ取れるのはさすがだ。


ミナスさんの推測が当たりだった事を確信し、急足で城へと向かう。


「うげ。悪趣味っすね」


城の近くまで来て、クヴァルダさんが嫌そうな顔をした。


「悪趣味?」


「ほら、よく見ればわかるっす。城の修繕、おかしいと思ったらゴーレムの死体でされてるっすよ」


「え!?」


驚いてよくよく見ると、確かに沢山のゴーレムによって城壁が造られている。

うわ、気持ち悪。

正直こんな城に入りたくない。


けど、ミナスさんのパートナーであるコンキュルンの手掛かりを掴む為だ。

行くしかない!


が、そう思い扉にみんなで近付いた時だった。


「! 退避じゃ!!」


「わっ」

「きゃっ」


リュデルさんがいきなりそう叫び、その声とほぼ同時に俺とノヴァが父さんに抱えられクヴァルダさんがミナスさんを抱えて後方に跳んだ。


――ドォン!!


「…!!」


正面の大きな扉が、突然爆風で吹き飛び驚いて目を見開く。

もし退避していなければ確実に巻き込まれる位置だった。

そして、土煙の奥から少ししゃがれた男の声が聞こえてくる。


「まさか…こんな所にまで来るとはな」


徐々に晴れていく煙の中から見えたのは、隣に大型の魔物を従えた黒いローブの男。

手に持つ杖の先端には尖りのある禍々しい石が付いており、光を纏う白い尻尾も垂れ下がっていた。

フードで顔は見えづらいけれど白く長い髪が少しだけ覗いている。

その姿を見て、ノヴァが青褪めた。


「あの…人…」


カタカタと震えるノヴァの反応から、シルク族の村を襲ったのがコイツで間違いないとわかる。

そして同時に、ミナスさんも震えながら呟いた。


「この声…間違いないわ…。あたしを襲った男…!」


やっぱり、犯人は同一人物だったんだ。

まさか、いきなり扉越しに魔物で攻撃してくるとは思わなかった。

全員でギッと睨み付ける。


「フン、まぁ良い。どうせ此処ももう使わないからな」


それだけ呟き、逃げるように直ぐ様城内へ戻ろうとする男。


「待ちなさい!コンちゃんはどこ!?あたしのパートナーを返して!」


ミナスさんの言葉を聞き、男は足を止めてニヤリと笑った。


「あぁ…もしやお前はあの時のガキか?随分と成長したものだ。クク、こいつには世話になったぞ?」


言いながら、杖の尻尾をまるで見せつけるように撫でる。

傷付いたように唇を噛み締めるミナスさんを見て、キレたクヴァルダさんが地面を蹴った。


「この…!!」


マジックバッグから取り出した斧を巨大化させ斬りかかる。


――ガキィン!


「!」


だが、それを横から現れたゴーレムが防いだ。

多分殺さない程度に手加減はしていたんだろうけど、クヴァルダさんの攻撃を防ぐなんて普通のゴーレムじゃない。

高笑いするローブの男。


「ハハハ!残念だが、今はまだ目的を達成出来てないからな。一旦退散させてもらうぞ」


男はそのまま踵を返して城内へ歩いていく。

勿論俺達だって黙って見送ったりはしない。


「逃がさんぞ!」


リュデルさんが駆け、クヴァルダさんの攻撃を防いだゴーレムを剣で砕いた。

俺達も後に続いて城に飛び込む。


けれど、ローブの男は慌てる事なく杖を一振りした。


――ザザザザッ


直後、大量のガーゴイルが姿を現す。

悪魔のような見た目の石の魔物だ。

あまりの数に男の姿が覆い隠されてしまった。


「なんて数…!」


「とにかく片付けるぞ」


男の後を追うべく、みんなでガーゴイル達と対峙する。

戦闘に入るのを見て、ジーゼさんも全員に強化を施してくれた。

そのおかげもあって一体一体は倒せないような強さじゃない。

…けど


「くっ、邪魔…!うわっと」


廊下という限られたスペースにひしめき合っている上に、倒したガーゴイルの死体が足場を悪くしてしまい躓く。

咄嗟に俺の腕を掴んでくれる父さん。


「大丈夫か?気を付けろ」


「ごめん、父さん。ありがとう」


敵に囲まれてる状態で転んだりしたら恰好の的になるだろうからマジで助かった。

それにしても戦いにくい。


「面倒じゃな…一気に片付ける!一旦全員離れておれ!」


リュデルさんの言葉を聞き、みんな一斉に距離を取った。

逆にリュデルさんは敵の中に飛び込んでいく。


「天流剣技」


姿勢を低くし身体を捻るリュデルさん。


「吹雪」


魔力が練り上げられると共に剣に冷気が集まりだす。


「フロストバイト」


全身を使っての回転斬りで、全てのガーゴイルが凍りついた。

なんなら足元に転がっている死体までもが凍りつく。

そして回転の勢いで巻き起った風により、砕けて氷の粒子が吹き荒れ扉や窓から外へと一気に飛ばされる。


風が収まった頃には、ガーゴイルは消え失せ廊下は綺麗に片付いていた。

さすが過ぎる。


「早くアイツを追おうっす!」


間髪入れずに走り出すクヴァルダさん。

余程さっきの事が腹に据えかねたんだろう。


男の姿は既に見えなくなってしまっているが、城の中にまだ居るのは間違いない。


「ミナス、行き先推測出来るっすか!?」


「ええ!地下に壊れた転移装置があるの!王族用と研究員用があるんだけど、王族のは直しても使えないからきっと研究員用の転移装置で逃げるつもりよ!」


クヴァルダさんと並んで走りながらミナスさんが道を指し示す。

城の内部の構造も頭に入っているようだ。


迷う事なく廊下を曲がり、奥にあった階段を駆け降りる。

そして地下にいくつかあった部屋の内の1つの扉の前まで来た。


「ここの筈よ!」


「待つっす!オレが先に行くっすよ!」


ミナスさんが扉を開けようとしたけれど、それを止めてクヴァルダさんが先に入る。


《ガァァアッ》


「変質加工 斧 スラッシュ!」


――ズバッ


警戒は正解だったようで、入った瞬間に襲ってきた魔物をクヴァルダさんは斧で切った。

中は研究室のようで、色々な器具が入り口からでも見える。


と、その部屋の左奥から声が聞こえた。


「ほう…思ったより早かったな」


声のした方に目を向けると、ローブの男が研究室と隣接した小部屋のような所に立っていた。

男の後ろに見える円形の魔道具が恐らく転移装置だろう。


「逃がさないっすよ!」


直ぐにクヴァルダさんが男へ向かおうとした。

すると、男はスッと部屋の反対側を指差す。


「こちらに気を取られてて良いのか?目的はあれだろう?」


「「「!?」」」


まさかと思い、言われるがままバッと後ろを見る。

男が居る方向と逆側の壁が檻の様になっていて、その中に小さな白い何かが横たわっていた。

子狐に似ているけれど、尾は2つあり体の周りを蛍のような光が舞っている。


あれって…!


「…!!」


ミナスさんが目を見開き、ダッと駆け出した。

そして檻を掴み必死に叫ぶ。


「っ、コンちゃん!!しっかりして!コンちゃん!!」


やっぱり、あれがミナスさんの探していたコンキュルンだったんだ。

やっと見つかったけれど、グッタリとして意識の無い様子のコンキュルン。


「動…かない?」


「大丈夫…なの?」


その姿に、心配になってノヴァと言葉を零す。

けれど、呼び続けるミナスさんの声に耳がピクリと反応を示した。


「……みな…す…?」


喋った!!

よかった、無事だったんだ!


コンキュルンはゆっくりと顔を動かしてミナスさんの方に目を向けた。

ミナスさんの姿を捉えた瞬間に、感極まったような顔をして震えながらも立ち上がる。


「みな…す!みなすぅ…!!」


「コンちゃん…!」


必死にミナスさんの方へ歩いてくるコンキュルン。

ミナスさんも檻の隙間から手を伸ばしてコンキュルンを呼ぶ。


けれど、もう少しでミナスさんの手に届くという時だった。


――バカッ


「ぁっ…」


「「「!!」」」


起こった出来事に言葉を失う。

突然コンキュルンの足元の床が開き、そのまま落下してしまったのだ。

落下した直後にすぐに閉まってしまう床。


「コンちゃん!そんな…コンちゃん!!」


目の前にいたのに届かなかったミナスさんが悲痛に叫ぶ。

こんな事をした犯人など分かりきっている。


「ク…ハハ!すまないなぁ、感動の再会につい水を差してしまったよ!用済みだったから早く処分したくてなぁ」


「お…前、どこまで…!!」


可笑しそうに笑う男に完全にキレて斬りかかるクヴァルダさん。


「! いかん、クヴァルダ!」


さすがに相手を殺しかねない勢いに、咄嗟にリュデルさんも声を上げる。

瞬間的にピクッと反応し、クヴァルダさんは攻撃の軌道を僅かにずらした。

それでも斧を振る力自体は抑えていないので、例え魔物を使っても今度は防げる筈がないと…そう、思った。


――ガキィィンッ!


「な…!?」


ローブの男がいる小部屋の入口部分に黒っぽいガラスのようなモノが出現し、クヴァルダさんの斧が弾かれる。

見た目は薄そうなのにヒビの1つも入らず、逆に斧の柄の方が折れてしまった。


「悪いなぁ。この壁は特殊で、絶対に壊したりなど出来ない。それより…さっきの獣を助けに行った方が良いんじゃないか?落とした場所は焼却場だ。急がないと…灰になるぞ?」


不気味に笑いながら発した言葉にゾッとする。

ミナスさんが青褪めて廊下の方へ走り出した。


「ハハハ!じゃあな諸君!」


悠々と転移装置に乗るローブの男。


「待てっす!!クソ…!」


取り逃してしまう事に悔しそうに壁を殴るクヴァルダさん。

俺も捕まえたいが、クヴァルダさんでも壊せなかった壁を壊す事なんてできる筈もない。

それに今優先すべきはそっちじゃないだろう。


「っ、ミナス!!」


クヴァルダさんも同じ様に考えたようで、切り替えてミナスさんの方へ目を向けた。

転移して消えていく男を歯噛みして横目で見ながら、俺達もミナスさんの後を追って走り出す。


せめてコンキュルンが無事である事を願いながら、救出へと向かったのだった。



クヴァルダさんガチギレ

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