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第39話 小国ラズウェル



「変質加工 釘 キャノン」


「おーっ、当たった当たった!さすがクヴァルダさん」


リュデルさんのおかげで翌日まで魔物に出会すことも無かったものの、ラズウェルに近付くにつれてちょっとずつ現れるようになってきた。

と言ってもそこまで数はいないので、こうして発見次第撃退している。


「そろそろ見えてくるかと思います。あ、あれですね」


セラさんが指差した先を見ると、確かに陸が見えた。

あれが滅ぼされた小国ラズウェルかぁ。

確かになんか、遠目でも嫌な感じがするな。


視認できたらあっという間で、スピードもある魔動クルーザーはすぐに海岸へと辿り着いた。


「うわぁ…完全に砂漠になってる…」


「昔は普通に草木も生い茂ってたらしいけどね…瘴気のせいで枯れて、千年でこうなっちゃったらしいわ」


ミナスさんの解説を聞きながら、アークデーモンによる影響を改めて実感する。

見渡す限り砂地が広がっていて、緑は全く見当たらない。

オアシスの1つも無さそうだ。

強いて言えばあちこちに魔物がいるのが見えるくらいだよ。


早速海岸へ降り立った俺達に、セラさんが2つのマジックバッグを差し出した。


「皆さん、こちらのマジックバッグを。こちらには水や食料を有りったけ入れておきました。もう1つには必要になるかもしれない物をひと通り。恐らくラズウェル滞在中に困らない量だとは思いますが、お気を付けて」


「おぉ、ありがとうございます!」


「助かります!」


ノヴァと2人でお礼を言いながら受け取る。

マジックバッグを渡してから、セラさんは更にローブを取り出した。


「それと、陽射しも強いですしこちらもお召しになった方がよろしいかと。暑さや寒さから多少は守ってくれます」


「何から何まで有難いのぅ」


「本当ねぇ。セラさん、ありがとう」


リュデルさんとジーゼさんも受け取りながらお礼を言う。

船だけでも快適だったのに、こんなに色々準備してくれるなんてまさに至れり尽くせりって感じだ。


それから、セラさんは名残惜しそうにミナスさんを見た。


「…先輩、本当に戻るまで待機してなくて良いんですか?」


「ええ。どのくらい滞在するかわからないし、あなただって忙しいでしょ?もしまた直ぐ手助けが必要になったら、その時は連絡するわ」


「はい!その際は遠慮無く!」


勢いよく頷くセラさんを、笑ってギュッと抱き締めるミナスさん。


「色々ありがとう。またね」


「…っ、はい、また」


ミナスさんの別れの挨拶に続いて、俺達も貰ったローブを羽織りながら別れを告げる。

セラさんに見送られながら、コンキュルンの手掛かりを掴むべくラズウェルの地を歩み出したのだった。





「それでミナスさん、どこに向かうの?」


見た感じどこまでも砂漠が続いており、何かが残っているようには見えない。

ミナスさんはスッと地図を取り出した。


「何かあるんじゃないかと検討を付けてるのは一箇所だけね。この島国の中心地にある王城よ」


「お城?」


「ええ。アーウィンは国も認める優秀な研究員だったから、城の地下にある研究室を使っていたそうなの」


そういえば、要石も偶然の産物であって国を滅ぼす為に作ったとかじゃなかったもんな。

責任を感じて自爆したくらいだし、きっと悪い人ではなかったんだろう。


「そのお城って遠いんですか?」


ノヴァもミナスさんの隣まで移動して質問する。


「そうね…多分何事も無くノンストップで進んだとしても丸2日は掛かるんじゃないかしら。休憩もするし、もうちょっと掛かると思った方が良いわ」


うへぇ、島国って言っても結構広いんだなぁ。


「それにしても、砂地だからか暑いっすねぇ。遠いのは別に良いっすけど、この暑さの中歩くのはしんどいっす」


クヴァルダさんの言葉に心底同意する。

セラさんがくれたローブで多少マシにはなってるんだろうけど、暑いものは暑い。


「そうね…。本来はギルドでも砂漠の移動ではラクダを使ってるんだけど…このラズウェルだと瘴気の影響で凶暴化しちゃうから連れて来れないのよ」


なんてこった。

動物にまでそんな影響が出るのか。

ラクダ乗ってみたかったなぁ。


と、急に地中からサソリのような魔物が出てきた。


《ギシャァァア!》


――ズバッ


父さんの素早い斬撃で出落ちする魔物。


「…魔物の数も多いな」


「本当っすね。じいちゃんまた闘気で追い払ってくれないっすか?」


「何言っとるんじゃ。実戦経験にちょうどええじゃろ」


リュデルさんってちょいちょい経験積ませようとするよね。

実体験で大事さを学んでるからかな?

ジーゼさんが危機に陥らない限りは多分こっち任せだろう。


そこでふと思い出した。


「そうだノヴァ。船で魔物を捕縛してたよね?他にはどんな技使えるの?」


確か秘術を全部覚えたって言ってたし、他にどんなのがあるのか気になってたんだよな。

魔物もいっぱいいるし、見られるチャンスかも。


俺に質問され、考えながら答えるノヴァ。


「ええっとね、色々あるんだけど…。あ、例えば他の人の防御力を上げる技とか」


「そんなのあるの!?うわ気になる!」


「本当?じゃあリオルくんに掛けてあげる!」


「いいの!?是非!」


快く了承してくれたノヴァは、すぐに手を俺の方に翳した。


「戯糸召喚 纏身(てんしん) 白銀(しろがね)


ノヴァの周りに青っぽい光が出現し、そこから飛び出した糸が俺の手足に巻き付く。

細いし透明だからパッと見はわからない。


「え、これでもう防御力上がってるの?」


「うん、その筈だよ」


「へぇーすごい!」


一体どのくらい上がってるんだろう!

メッチャ気になる!


「ねぇ、誰か俺を軽く攻撃してみてくれない?」


――ピキッ


俺がそう言った瞬間、場が凍りついた。

待ってみんな。

何その顔。


「え、リオルくん正気?」


「それ何て拷問すか?」


「ワシは攻撃した奴を粉にする自信があるぞ」


え、怖。


いやでもそうか。

俺だって身内を攻撃しろとか言われても出来ないや。


「じゃあその辺の雑魚の攻撃をわざと受けに…」


――ガシッ


行こうとしたけど即座に父さんに肩を掴まれた。

恐る恐る振り返ると、とんでもない気迫の父さんの背後に『絶対に駄目だ』という言葉が見える。

ひえぇ、怖い。


「…リオル?」


「ご、ごめんなさい!つい興味本位で!」


低い声で呼ばれ慌てふためいて謝る。

危ない事しようとしましたごめんなさい!


すると、俺を叱るように額を指の後ろでコツンと叩かれた…気がした。


「…?」


あれ?フェイント?

寸止めした??


「今何か感じたか?」


「え?何も…」


「つまり、打撃を防いだって事だ」


あ、なるほど。

怒りながらもちゃんと確かめさせてくれる父さんやっぱり優しい。


父さんはフム…と顎に手を当てた。


「…ノヴァ。これは常にリオルに掛けられるか?」


いや父さん真剣な顔で何を過保護な事を!


「はい!リオルくんの為なら惜しみませんっ」


ノヴァも勇まなくていいから!


意気投合して頷き合う2人。

なんか父娘(仮)の仲がどんどん良くなってる気がするぞ…!

嬉しいような悔しいような複雑な気分だ…!!


と、ここで俺はもう1つのことに気付いた。


「…あれ?そういえば、あんまり暑さを感じなくなった気がする」


雲も無いし、どんどん暑くなってもおかしくない筈なのに。

俺の呟きを聞いてノヴァが答える。


「あ、もしかしたら暑さとか寒さとかも防御してるのかも」


それを聞いた瞬間、みんなの目の色が変わった。


「ノ、ノヴァちゃん!あたしにも掛けてくれない!?」


「オ、オレも掛けて欲しいっす!」


「馬鹿もん!ばあさんが最優先じゃ!!」


「「それは確かに!」」


みんなのせがみに、ノヴァは戸惑いつつも少し嬉しそうに笑って全員に掛けてあげた。

変化を体感して、みんなも感動している。


「わ、凄い!本当に暑さをあまり感じなくなったわ!」


「これは助かるのぅ」


「ええ。快適だわぁ」


特にジーゼさんは身体への負担が軽減して良かったかもしれない。


「すごいねノヴァ。助かったよ!」


「エヘヘ、役に立てたなら嬉しい。えっと…他の技も試す?」


「他のも!?すごい気にはなるけど…疲れてない?」


「ううん、このくらいなら何ともないよ。一時的な補助だし」


ニコリとしながら言うノヴァは確かに疲労を見せてはいない。

全員に補助魔法を使っても平気だなんて、ノヴァもこの4年で成長したんだなぁ。


「防御と逆で、身体強化も一応あるよ」


「え!ノヴァも身体強化使えるの!?ジーゼさん得意なんだよ!」


「そうなんですか!?」


話を振られ、ジーゼさんはにこやかに答える。


「ワタシの場合は身体強化の特化型だから。色んな種類を使えるノヴァちゃんは凄いわ」


褒められて照れたように頬を染めるノヴァ。

可愛らしくモジモジしながらジーゼさんに近付く。


「あの…わたし実は身体強化はあまり得意じゃなくて…。よかったら指導してくれませんか?」


向上心も忘れてないなんて素晴らしい。

ジーゼさんもひ孫(予定)のお願いに嬉しそうに頷いた。


「えぇ、もちろん良いわよ。じゃあまずは使ってみてくれる?」


「はっ、はい!」


返事をしてクルリと俺の方を見るノヴァ。

よし来い!


「戯糸召喚 纏身 白焔(びゃくえん)!」


先程と違い、今度は赤っぽい光が浮かぶ。

そしてそこから飛び出した糸が手足に巻き付いた。

お、なんか体が軽くなった気がする。


強化の完了を確認して、ジーゼさんが指差して指示を出す。


「じゃあリオルくん。ちょうどあそこにスライムの群れがいるから、横薙ぎで斬ってくれる?」


「うん、わかった!」


言われた通り、群れの方へ駆けて近付く。

スライムの攻撃範囲内に入ったところで、剣を思い切り横薙ぎに振り抜いた。


――ズバァァアンッ


ぉお!?

俺から5mくらいの範囲の敵が一気に吹っ飛んだぞ!?

苦手って言ってたけど結構強化されてるんじゃないか!?


「あらぁ、ノヴァちゃん凄いじゃない」


「ほ、本当ですか?」


「えぇ。でも、まだまだ伸び代もあるわ。それじゃあ、ワタシが見本を見せてあげるからよく見ててね?」


「はい!」


既に結構すごいと思ったけど、まだ成長の余地があるのか!

これは期待できる!


そう思っている間に、ジーゼさんが遠隔で俺に強化を施して体が僅かに光った。

あ、言われなくても強化されたのわかるくらい体の感覚が違うや。


「それじゃあリオルくん。同じ感じでお願いねぇ」


「了解!」


ジーゼさんの言葉を受け、再び残りのスライム達に目を向ける。

先程と同じ様に剣を横薙ぎした。


――ヒュッ ズッパァァァアン!!


「…!!?」


自分でやったのに、俺は目を疑った。

目の前のスライム達どころか、離れたところのそこそこ大きな砂山までもが剣の風圧で吹き飛んでしまったのだ。

こちらに気付きもしてなかった他の魔物達までもが消し飛んでいく。


え!?

ちょ、これ最大強化したんじゃない!?


「ごぷふ…っ」


ほらぁ!

やり過ぎて吐血してるじゃん!!

さてはひ孫(予定)に良いところ見せようとして無理したな!?


しかし、ジーゼさんの望み通りノヴァは目を輝かせて憧憬の眼差しでジーゼさんを見た。


「すっ、すごいですジーゼさん!!こんなに違うなんて!!しかも無詠唱で…!!尊敬します!!」


慌てて治療している父さんも目に入らないくらい感動したようだ。



こうして、ノヴァはこの日ジーゼさんに弟子入りをしたのだった。





挿絵(By みてみん)

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