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第36話 船上にて



「ちょ、皆んな!ノヴァちゃん凄いっすよ!!」


突然、そう声を張り上げながらノヴァの手を引き部屋から飛び出してきたクヴァルダさん。

何事かと、ソファで一緒に寛いでいた父さんと顔を見合わせてそちらを見る。


ラズウェル到着までは数日掛かるという事で、時間を有効活用するべく1階にあった部屋でクヴァルダさんとノヴァはジーゼさんの為のベッド作りに勤しんでいたのだ。


「なんじゃなんじゃ?」「随分興奮してるわねぇ」と言いながらみんなも集まりだす。


「これは皆んなも見た方が良いっす!」


「ク、クヴァルダさん、恥ずかしいですよ…」


みんなの前まで引き連れられ萎縮するノヴァ。

しかしクヴァルダさんはテンション高々にノヴァを説き伏せる。


「いやいや、これは披露するべきっすよ!オレは感動したっす!」


「で、でも…」


「それに、見たら絶対リオルくんも喜ぶっすよ!」


「あ、じゃあやります!」


俺の名前が出た途端に了承したノヴァ。

可愛い。


「なになに?そんなに凄いの?」


「ミナスも絶対好きだと思うっすよ!広い方が良いから甲板に移動しようっす!」


ミナスさんの質問に答えながらノヴァを連れて直ぐに外に出るクヴァルダさん。

元々甲板で日向ぼっこしてたリュデルさんとジーゼさんはまた椅子に座り直し、俺も父さんと一緒に甲板へ移動した。


「それじゃあ、オレとノヴァちゃんで公開枕作りを始めるっすー!」


クヴァルダさんの言葉に取り敢えずみんなで拍手する。

なんかショーでも始めるみたいな感じだな。


「まずはオレからやるっすねー」


と言いながら、クヴァルダさんはマジックバックから宝石マシュリムとマローナの花を取り出した。

おぉっ、ついにその2つが枕に変身するのか!


「変質加工 アルケミー」


2つの材料を上に投げ、クヴァルダさんの両手から伸びた魔力がそれを捉える。

すると、マシュリムとマローナが空中で合わさり光りだした。

クヴァルダさんが魔力操作で錬金すると共に形を整えていく。


そしてあっという間に淡いピンク色の枕へと変わってしまった。


「おぉー!」


すごい!

なんか本当にショーみたい!

宝石と花が枕になるとか不思議!


「感触も良いから触ってみてくださいっす!」


ポイッと投げられ、慌ててキャッチする。


――ポム


おわぁ何これ!?

マシュマロっぽいけどちょっと違うというか、とにかくメチャクチャ感触が気持ちいい!

ずっと触りたくなる!


「はぁ〜…凄いわ!クヴァルダありがとうっ」


余程気に入ったのか、何度も頬を押し付けながらジーゼさんが感動している。

しかし、それをヒョイっと取り上げるクヴァルダさん。


「まだ完成じゃないっすよ!ここでノヴァちゃんの出番っす!」


オモチャを取り上げられた子どものような顔をしたジーゼさんはグッと堪えている。

よっぽど離したくなかったんだろうな。


ちょっと緊張したノヴァが俺に目を向けたので、コクリと頷いて応えた。


「じゃ、じゃあいきますっ」


集中力を高めながら、スッと両手を上げるノヴァ。


「戯糸召喚 夢織白奏(ゆめおりびゃくそう)


そうノヴァが唱えると、ノヴァの周りに無数の光が現れた。

浮かんでいる光の中からキラキラと細く輝く糸が次々と召喚される。

糸はフワリフワリと空中で一点に集まりだし、宙で織られて布へと変化していった。


「綺麗…」


呟いたミナスさんの言葉に納得するしかない。

それは本当に綺麗で、とても幻想的な光景だった。

言葉も忘れて魅入ってしまう。


「そろそろっすね」


頃合いを見計らって、クヴァルダさんが先程作った枕を布の上へと放り投げた。

その枕を優しく包み込むように布が動き、仕上がったところでキラキラとした光と共に枕が落ちてくる。

透き通りそうな程に綺麗で真っ白なシルクに包まれた枕がノヴァの手に収まっていた。


「す、すげぇー!ノヴァ!!」


「これは見事じゃのう」


クヴァルダさんが興奮して飛び出してきた理由がよくわかった!

まさかシルク生地を作るのがこんなに幻想的だったなんて!


褒め称えられたノヴァは嬉しそうに枕を差し出す。


「ありがとう。えと、ちゃんと出来てるか確認してもらっていい?」


「もちろん!」


そうして受け取った瞬間、俺は驚いた。


何だこの触り心地!?

スベスベだとかで済むレベルじゃない!

摩擦とか全然感じないし撫でただけで肌が気持ちいい!!


「え、こ、これすご!」


「確かに、普通のシルクとは全然違うな」


「話には聞いてたけど、実際に触ると感動しちゃうわね」


父さんとミナスさんも触れて驚いている。

そして勿論、黙ってないのがこの人だ。


「ワタシにも!ワタシにも持たせてちょうだいリオルくん!!」


必死に手を伸ばして目をキラキラさせながら懇願するジーゼさん。

すぐに駆け寄り持たせてあげる。

ジーゼさんは更に目を輝かせた。


「ふあ〜っ!さっきの時点で凄かったのに、もっと良くなってるわ…!!もうこの枕でしか寝たくないっっ」


相当気に入ったようで抱き締めて離しそうにない。

その様子にクヴァルダさんも笑う。


「ハハ、気に入ってくれて良かったっす!けど、枕だけじゃなくこっちもあるっすよ!」


言いながらマジックバッグから取り出したのは、以前作った心地良い香りのするベッドフレーム。

その上には、ノヴァが作ったであろうシルク生地に包まれたフワフワのマットレスが乗っていた。

中身はもちろんメルフローラでゲットしたエーテルコットンだろう。

まるで雲の上に寝てるような感覚になったやつだ。


「ひゃわ〜!おじガファさん!!おじいゴフさん!!」


ジーゼさんは興奮し過ぎて吐血しながらリュデルさんに自分を運ぶよう促す。

父さんが慌てて治療を施す中、リュデルさんも必死に宥めながらジーゼさんをベッドへ運んだ。

完成したばかりの枕を頭の下に置き、早速横たわるジーゼさん。


「はぁぁ…夢心地だわぁ。幸せ…」


うっとりとしたその顔で、どれだけ気持ちいいのか伝わってくるようだ。

うわぁヤバいな。

アレは俺も寝てみたい。


「ジ、ジーゼさん、俺も試しちゃダメ?」


「ごめんねリオルくん…もう…寝りゅ…ぐぅ」


くぅっ!

ひ孫パワーを持ってしても睡魔には勝てなかった!!


とても悔しいがリュデルさんの前でジーゼさんの横に寝る訳にもいかず、唇を噛みしめてベッドから距離を取る。


「あとはユルの羽根さえゲットすれば伝説のベッド完成っすよ!」


「うむ、ばあさんも気に入っておるし助かるぞ。みんなありがとうの」


完成まであと一歩の状況とジーゼさんの反応にリュデルさんも満足そうだ。


「それにしても、ノヴァすごいね。あんな技が使えるなんて」


俺が褒めると、ノヴァは嬉しそうに笑む。

そしてモジモジしながら話し出した。


「あの…ね。わたしが使ったのってシルク族に伝わる秘術なんだけど、それを全部覚えないと村から出ちゃいけないって言われたから…」


頬を染めて話しながら上目遣いで俺を見るノヴァ。


「リ、リオルくんに早く会いたくて…頑張って覚えたの」


「…!!」


え、ちょ、待って。

可愛すぎません?

なんか胸のところがキュウ〜ってする。

俺いま絶対顔赤くなってる自信ある。

ヤバい、なんていうかもう幸せだ。


どう反応するのが正解なのかよくわからず、ノヴァと向かい合いながらお互いに頬を染めて「エヘヘ…」っと一緒に笑い合う。


すると、そんな俺達のやり取りを見ていたミナスさんとクヴァルダさんが悶絶しだした。


「あぁーっ、もうダメ!我慢できない何なのこのカップル可愛すぎる!!」


「わかるっす!超癒されるっす!!」


「「わぁ!?」」


いきなりノヴァと2人まとめて夫婦に抱きしめられる。

ちょっ、ついにノヴァごと揉みくちゃに!

多少慣れた俺と違って耐性無くて混乱してるからやめたげて!!


俺はノヴァの手を掴み何とか脱出して父さんの後ろに飛び込んだ。


「いいかノヴァ、何かあった時はここに隠れれば安全だからな?」


「うん、わかった」


素直に頷くノヴァと父さんの背後に隠れる。

ここが安全地帯だという事は以前確認済みだ。


「くっ、卑怯っすよ…!」


「確かに手出しできないわ…!」


近付こうにも近付けずたじろぐクヴァルダさんとミナスさん。

因みに背中を避難場所に指定された父さんは「お前らな…」と言いつつもちょっと嬉しそうな顔をしてる。

リュデルさんも寝てるジーゼさんの傍に座りながら俺達の様子を面白がって見ていた。


あれ、そういえばセラさんは3階の操縦室にずっと居るな。

お昼の時も居なかったけど大丈夫なんだろうか。

ちょっと心配。


「ねぇ父さん、セラさんの様子見て来て良い?」


「ん?あぁ、それなら一緒に行こうか」


「あ、わたしも行きます!」


名乗りを上げたノヴァも含め、3人で様子を見に行く事にする。

折角なので差し入れも持って操縦室へと向かった。




「セラさーん、入って良い?」


「はい、どうぞ」


ノックをして声を掛けると、直ぐに返事が返ってくる。

扉を開けて見てみると、操縦桿を握っているかと思いきやセラさんは普通に椅子に座って寛いでいた。


「セラさんお腹空いてない?一応差し入れ持ってきたけど」


「お気遣いありがとうございます。きちんと食べてますので大丈夫ですよ。持ってきてくださいましたし、そちらも頂きますね」


受け取ってくれたセラさんに、ノヴァも続けて質問する。


「ずっと操縦してて疲れませんか?」


「いえ。万一の為に一応待機はしてますが、基本的には自動操縦にしてますので」


自動操縦!

そんな機能まであったのか!

通りで寛いでるはずだ!


「ほえ〜」とノヴァと声を漏らしながら感心していると、セラさんは俺達の背後をチラッと確認した。


「…あなた方だけですよね?」


「え?あ、ミナスさん連れてこなくてすみません」


「いえ、逆です。実は先輩に内緒で皆さんに相談があって…。ここに集まると勘付かれてしまうかもしれないので、深夜に女子部屋へ集合してもらえますか?」


女子部屋だとミナスさんも居るんじゃと一瞬思ったけれど、よく考えたらミナスさんとクヴァルダさん夫婦で船頭側の1部屋使うんだった。

でもって船の右側がジーゼさん・ノヴァ・セラさんが使う女子部屋、左側がリュデルさん・父さん・俺が使う男子部屋という事になってる。

確かにミナスさんにバレないようコッソリ話し合うなら深夜が一番安全そうだ。


父さんも頷いて了承し、セラさんの相談に乗るため新婚夫婦以外のみんなで夜に集合する事になった。








「…オル。リオル」


もう真っ暗な時間帯、俺を呼ぶ声で目を覚ます。

あれ、起きてようと思ってたのにいつの間にか寝ちゃってた。


「ふあ…ごめん、寝てた。起こひてくれてありがとうシュルツさ…いや!父さん!」


一瞬寂しそうな顔をした父さんに慌てて言い直す。

眠かったはずが一気に目が覚めたよ。


「そんじゃあ、リオルも起きたし移動するかの?」


「ええ」


事前に伝えておいたリュデルさんの言葉に父さんが頷いて返し、俺達は出来るだけ気配を消してコソコソと向かい側の女子部屋へ移動した。

なんかワクワクするな。


「お待ちしてました。ご足労頂き感謝致します」


ドアを開けると、そう言いながらすぐにセラさんが出迎えてくれた。

後ろの方ではフカフカのカーペットが敷かれ、そこに座りながらジーゼさんとノヴァが眠そうにしている。


あれは俺と同じでさっきまで寝てたな。

ノヴァはわかるけどジーゼさん結局夕食の時間まで寝てたのにまだ寝れるってすごいな。

因みに、完成前だからと起きた直後にベッドをクヴァルダさんに回収されて絶望してた。


とりあえず、眠そうにしながらも手を振るノヴァの近くに座る。

日中と違ってみんな寝る状態の格好だから、ちょっとパジャマパーティー気分だ。


「それで、相談とは?」


早速父さんがセラさんに質問する。

質問を受け、本題に入るセラさん。


「はい、本当に私事なのですが…まだ新人の頃に沢山世話してくださったミナス先輩に恩返しをしたいんです」


「恩返し?」


そう聞き返すと、セラさんはコクリと頷いて続けた。


「ええ。私達ギルド員は各地へ飛び回るので、今回のようにギルド員同士で一緒に居られる事は殆どありません。ですからこのチャンスに、何か先輩を喜ばせられるような事が出来ないかと思いまして…」


なるほど。

そういえばミナスさんもセラさんに会った時久しぶりって挨拶してたっけ。

同じギルドに所属してるのに会えないっていうのもちょっと寂しいな。


「とはいえ、私では何をすれば良いか分からず…そこで、先輩と親しい皆様なら何か良い案があるのではと相談した次第です」


ふむふむ、そういう事か。

セラさんの相談内容を理解し、全員で顔を見合わせる。


…あれ。


「…ミナスさんと一番付き合い長いのって…クヴァルダさんだよね?」


「まぁ…そうだな…」


悲しきかな、ここにいる面子はミナスさんと知り合ってから割と日が浅い。

ノヴァに至っては昨日初めて会ったばかりだ。

一番の適任者が不在な気がする。

セラさんも俺達の様子に「チッ、やはりあの旦那か…」と呟いてる。


と、そんな中でジーゼさんがポンと両手を合わせて口を開いた。


「あら、それなら是非やってほしい事があるわ」


ニコニコしながら言うジーゼさんに全員が顔を向ける。



そしてジーゼさんからの提案に、みんなが賛成して準備する事になったのだった。





今頃ですが皆んなに怯えないノヴァちゃんの思考回路はこう↓


リオルくんをメッチャ可愛がってる=良い人達!!

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