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第25話 新婚さん



「皆さん、今回は本当にありがとうございました」


「また遊びに来てくださいね」


そう挨拶したのは、シビルさんと姫様。

王都へ帰る俺達を見送りに来てくれたのだ。

2人は新婚さんだけあってとても仲良さそうに寄り添っている。


「ソナタ達ならいつでも大歓迎だ!ジークマイヤーにも伝えておくから、好きな時に来ると良いぞ!」


毎度の如く勢いよく言う女王様にも見送られ、俺達は例の転移装置の上へと立った。


「こちらこそお世話になりました!」


「またきっと遊びにくるっすね!」


俺とクヴァルダさんが挨拶する横で、ミナスさんは姫様と握手しながら「元気でね!」と別れの言葉を交わしている。

どうやら2人はすっかり友達になったようだ。


「では、準備は良いな!?」


言いながら、操作盤の前に亀で移動する女王様。

それに直ぐリュデルさんが頷く。


「うむ、いつでも大丈夫じゃ」


い、いよいよか。

例の転移…!!


一度経験しているだけに若干身構える俺達。

そんな俺達を全く気にした様子も無く、女王様は操作盤に手を触れた。


――キリキリキリ…


「…!」


球体に包まれるところまでは一緒だったが、今回は床が消えるのではなくゆっくりと下がり始める。

まるで力を溜め込んでいるかのような動きだ。


うわ待って待って怖い怖い!

この後どうなるか予想つくだけに余計に怖い!

いっそ一瞬でやっちゃってよ!!


恐怖を煽るだけ煽った装置は俺の目線も隠れる程まで沈み込み、止まったかと思った直後に一気に戻された。


「わぁぁあっ!」


人間大砲の如く打ち上げられ、天井に空いていた穴に飛び込む。

そのままどんどんと加速していき、途中で光に包まれた。

そして光が途絶えスピードが緩み始めたかと思った瞬間、球体が急停止する。

当然の如く俺達の身体は浮き上がり、落下した。


なんなのこの転移装置!

王族が使って良い作りじゃないでしょ!

辛うじて着地した俺達を褒めて欲しい!!


「お〜、よくぞ帰ってきたのう!」


「待っていたぞ!」


拍手をしながらそう言葉を掛けてくれたのは先王様と国王様だ。

行きの時と同じように2人で待ってくれていたらしい。


「ユー君これありがとう。助かったわ」


お礼を言いながらジーゼさんが保護紐を先王様に手渡した。

そういえば王家の宝だったもんね。

よく貸したよなぁ。


受け取る先王様は笑いながらあっけらかんと言う。


「ええんじゃええんじゃ。使える時に使わんとそれこそ宝の持ち腐れじゃからな!それにしても流石勇者一行じゃのう。これを着けてなくても特急モードでちゃんと立ってるとは」


…今特急モードって言った!?

もっと優しいモードあるの!?

おかしいと思ったよ!!


文句を言いたいが相手が王族だけに押し黙る俺達。

対等に会話できるリュデルさんが「なんのなんの大した事無かったわい」と抜かしてるから余計に何も言えない畜生。


「さて、君達がアビシフィカへと行っている間に魔物の討伐報酬も用意しておいたぞ。早速渡すから付いてきてくれ」


え、報酬を!?

うわぁついに!

やばい嬉しいいくら貰えるんだろう!


文句を言いたかった事など国王様の言葉で遥か彼方。

ルンルン気分で後ろをついて行く。


そして案内された部屋にて出てきた札束に、俺は目を丸くした。


「占めて3000万ライビじゃ!それとこれに全員分の入城許可証とアビシフィカへの通行証も付けるぞ!」


わぁー!わぁー!

帯付きのお札が30個もある!!

こんな大金、生で初めて見た!!


因みに興奮してるのは俺だけで、みんなは特に驚いた様子も無い。

さすがお金持ち集団。


「ふぅむ、取り敢えず均等に1人500万かの?」


「じいちゃん魔物の大半倒したのに良いんすか?」


「どうせ金なんぞ増えても遺産でお前らに渡るだけじゃい」


コメントしづらい現実ぶっ込まないでリュデルさん。


「それを言ったらクヴァルダ、あなたも聖剣作り頑張ってたでしょう?ワタシの分あげましょうか?」


「そうよね、あたしのも回して良いわよ?」


「いや、いーっすいーっす!そんな困ってないっすよ!やっぱ面倒だから均等にしようっす!」


ジーゼさんとミナスさんに譲られそうになり、慌てて断るクヴァルダさん。

そこで断れるってすごい。


そして!

均等にの計算にちゃんと俺も入ってるぞ!!

わぁ良いの良いの!?

まさかこんな大金を手に出来る日が来るなんて!!

わはぁーっ!

すごいドキドキする!!


ん?

みんな何で俺を見てるの?


「うーん。なんかリオルくんにこんな大金渡すの、悪影響になりそうで心配っすね…」


「そうね…お義兄さんに預かってもらった方が良いんじゃない?」


そんな殺生な!


「確かに心配ねぇ」


「シュルツ管理してやったらどうじゃ?」


勇者達までひどい!

しかも何でよりによってシュルツさんなの!

「みんなには内緒だよ?」ってコッソリ渡してくれる事も無さそうじゃん!

だからか!!


「そう…ですね」


俺の方を見て真剣に考え始めるシュルツさん。


マズイ!

このままだと本当に没収される!!


「ま、待って!俺マジックバッグ買いたい!大容量で品質保ってくれるやつ!あとみんなと連絡取れるように魔導フォンも欲しい!」


手を挙げて必死に主張する。

どっちもかなりお高いやつだ。


それを聞いてもう一度考えてくれる一同。


「まぁ…今後の事を考えると、どちらも持っていた方が良いな」


「そうっすね…。しかもそれ買ったらそんなに残んないから大丈夫、っすかね?」


わぁ、500万あってもそんなに残らないんだ。

そこまで高かったとは。


「てかリオルくん、服も買った方が良いんじゃない?」


「あー、それはオレも思ってたっす」


「確かに、こんな薄い布だと防御面で心配だな…」


「あとダサい」


今ダサいって言ったの誰!?


「そりゃあ俺だってカッコいい鎧とか買いたかったけど…」


思わず唇を尖らせて呟いてしまう。


「小さいマジックバッグと安い剣一本買ったらお金無くなっちゃったし…。冒険者なんて報酬安い上に毎日稼げる訳でもないから、その日食べてくので精一杯で…」


まぁ今はみんなと居るおかげで生活水準も向上したけどさ。


「「「「「……」」」」」


わあ!

みんな静かに優しく抱きしめないで!

国王様と先王様もやたらと温かい目で見てるから!

同情するなら金をくれ!




そんなこんなで俺の要望を聞き入れ、早速買い物に行く流れになった。

何せここは王都イシュピール。

ディアマンタールよりも品揃えは良いのだ!


そして俺は今感動に打ち震えている。


「ついに…手に入った…俺の魔導フォン!」


まさかこんなに早く手に入れられるなんて!

ちょっと前まで想像も出来なかったよ!

しかも自分のお金で!


因みに魔導フォンの前にマジックバッグも買ったのだが、マジックバッグだけで400万もして目玉が飛び出るかと思った。

ぐぅ、本当に大半持ってかれるとは…!


「えっと、早速みんな登録して良い?」


「もちろんっすよ!」


「ほれワシらのはコレじゃ」


とみんなノリノリで登録してくれる。


おぉ…勇者を筆頭に俺の登録者有名人だらけだ。

これ改めて考えるとすごいかもしれない。

貰った報酬は一瞬で消えちゃったけど、それ以上の価値はあるはず!

無駄遣いはしてないぞ!


「じゃあ次は服ね!」


「ある程度防御力も高い物を買った方が良いな」


「うん、わかった!」


シュルツさんのアドバイスに素直に頷く。

怪我をしたらそれこそお世話になっちゃう相手だしね。

本当は剣も買おうと思ってたけど、そっちはクヴァルダさんが後で作ってくれるらしい。


クヴァルダさん印の剣なんて、本来なら一生掛かっても手に入るかわからない物だよ!

俺この人達にくっ付いてきてて本当に良かったー!

さあっ、あとは念願のカッコいい鎧を手に入れるだけだ!


なんて、意気込んでいられたのは店に着くまでの間だけだった。



「きゃーっ、これも似合う!」


「次はこれも着てみて頂戴」


「また次…!?」


店に辿り着いた俺は…なぜかミナスさんとジーゼさんの着せ替え人形と化していた。


最初の内は真剣に選んでくれてありがたいなと思ってたけど!

これ絶対遊ばれてる!

一体いま何着目!?

もう許して…!


助けを求め、男性陣の方へと目を向ける。


――フイ


しかし、何も言えないようでそっと視線を逸らすリュデルさんとクヴァルダさんとシュルツさん。

なんてこった。

あの3人でも敵わない相手に俺が敵うわけがないじゃないか。


結局俺も疲れ果てて自分の意見を言う余裕も無く、女性2人に全て決めてもらう形となった。

さらば全身鎧の夢…。



「うんうん、良いじゃないっすかリオルくん!」


「似合っておるぞ!」


褒めてくれるクヴァルダさんとリュデルさんからプイッと顔を背ける。

今更持ち上げたって遅いぞ。


とは思いつつも、完成したコーデを実は俺も気に入っている。

見た目の割に結構丈夫だし、決めてもらって正解だったかもしれない。


「ミナスさんジーゼさん、ありがとう」


「いいのよ〜!」


「ふふふ、とっても楽しかったわぁ」


確かに2人ともすごい満足そうな顔してる。

店に来る前よりも元気になったんじゃなかろうか。


取り敢えず新しい服も購入したという事でみんなで外へと出た。

すると、隣の店のショーウィンドウに飾られているウエディングドレスに目が行く。


「これ見ると昨日の結婚式思い出すなぁ」


「あぁ、そうだな」


俺の言葉に頷くシュルツさん。

最初はどうなる事かと思ったけど結婚式が無事に行えて本当に良かった。


後ろでミナスさんとジーゼさんも同じようにドレスを見る。


「ミーヤさん達の式…本当に素敵でしたよね」


「えぇ。おじいさんとの式をちょっと思い出しちゃったわ」


リュデルさんも思い返すように目を閉じる。


「あの時のばあさん…とても綺麗じゃったなぁ」


「まぁおじいさんったら」


相変わらずラブラブな事で。


そんな仲良し老夫婦の横で、ドレスをジッと見ていたミナスさんが不意にクヴァルダさんを見た。


「ねぇクヴァルダ」


「ん?何すか?」


「あたし達も結婚しない?」


「ぶふぉ!?」


えぇえ!?

ぎゃ、逆プロポーズ!?

うわわミナスさん大胆!!


「いっ、いやいきなり何言い出すんすか!?」


当然のことながら物凄く動揺するクヴァルダさん。

しかしミナスさんは追い詰めるように迫る。


「いきなりじゃないわよ!前々から考えてたわ!大体あたしもう25よ?アンタが決めるの待ってたら行き遅れになっちゃうわ!」


「いやいや!25歳なんてまだ若いっすよ?」


「アンタの大好きなお姉さんは21歳でお義兄さんと結婚したじゃないの!」


「うぐっ」


お姉さんを例に出されてクヴァルダさんは言葉に詰まった。

それでも覚悟は決まらないようでオロオロしている。


まぁ大事なことだもんね。


「さぁどうするの?結婚するの?しないの?」


「う、えと、その…」


「お義兄さん!お義兄さんからも何か言ってやってください!」


あ、ミナスさんが最終兵器を投入した!


「そう…だな」


ミナスさんに話を振られ、少し考えるようにしながらもクヴァルダさんに目を向けるシュルツさん。

視線を受けてクヴァルダさんはピクっと反応する。


「…クヴァルダ。こういうのはきちんとケジメをつけた方が良い」


「よし結婚しようっす!!」


即決した。


「二言は無いわね!?じゃあこれにサインして!」


ええ!?

婚姻届がすぐ出てきた!

用意してたの!?


「よしわかったっす!!今机出すっすね!」


と、即行でマジックバッグから机を取り出すクヴァルダさん。

さっきまで動揺しまくってたのに一度覚悟を決めると迷いが無い。


「証人はじいちゃんと義兄さんで良いっすかね?」


「そうね。お願いして良いですか?」


「あぁ」


「うむ、ええぞ」


なんか分かんないけどシュルツさんとリュデルさんもアッサリ受け入れて書き込んでる。

状況に一番ついていけてないのは俺かもしれない。


「よし出来たっす!」


「じゃあ早速役所へ行きましょう!」


「了解っす!!」


書き上げた婚姻届を持って直ぐに走っていく2人。


そして約30分後に仲睦まじく戻ってきた。


「お待たせっすー!」


「晴れて夫婦になりましたぁ!」


わぁー、俺知らなかった。

人ってこんな一瞬で夫婦になれるんだね。


「おめでとう〜」


「めでたいのぅ」


孫の婚姻に嬉しそうなジーゼさんとリュデルさん。

お祝いされてクヴァルダさん達も嬉しそうだ。


「籍は入れましたけど、式とかは色々落ち着いてからにしますね」


「あーそうっすね。ばあちゃんのベッド作りの方が優先っすからね」


じゃあ結婚式とかは旅が終わってからになるのかな?

とりあえず今日はみんなで祝ってあげたら良いかもしれない。


「シュルツさん、今夜は2人のお祝いとかする?」


「ん、まぁそれも良いが…」


チラリとクヴァルダさんを見るシュルツさん。

それに応えるようにクヴァルダさんが手の平をこちらに向ける。


「いや、それには及ばないっす」


言いながら一度ミナスさんと視線を合わせ、横並びになって2人同時に相手に手を伸ばした。


――ガシッ ガシッ


クヴァルダさんがミナスさんの肩に、ミナスさんはクヴァルダさんの腰に手を回す。

そして2人とも空に向かって拳を突き上げその先を見た。


「今夜は結婚初夜っすからね!良いホテルに泊まるっすよ!」


「最上階のスイートルームよ!絶対!!」


「任せとけっす!!」


おぉ、この夫婦息ピッタリだ。

そっか、新婚だし二人きりで過ごす時間も必要だよね。


「今夜は寝かさないっすよ〜」「きゃ、クヴァルダったら♡」という決まり文句を言いながらウキウキと歩く2人。

すごい。新婚さんっぽい。


そんな幸せそうな2人を邪魔しないよう、俺達は手を振って静かに見送った。

こちらはいつも通りに普通の宿に泊まる事にする。





この時はとても平和なもので、俺達は知る由も無かった。

運命の時が、刻々と近づいていたという事を――。





挿絵(By みてみん)

別に無くしても良かったけど、トレードマークのマントとバンダナを残されたリオルくんw


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)

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