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第16話 王都イシュピール



「ちょっと待ってクヴァルダ!流石にこれはどうかと思うわ…!」


赤面しながら叫んだミナスさんが居るのは椅子に座っているクヴァルダさんの足の間。

ずっと立ったまま話を聞くのも疲れるだろうとクヴァルダさんが椅子を沢山出してくれた所までは良かったが、何故かミナスさんを自分と一緒に座らせたのだ。


「え?さっき寂しかったって言ってなかったっすか?」


「アンタは何でそんな極端なのよ!!加減ってものを知らないの!?」


耐えきれなくなったのか椅子から飛び退くミナスさん。

ありゃ?って顔してるクヴァルダさんに悪気は無さそう。


ふぅ、今日はアツいな。


「コホン。じゃあ改めて、要石(かなめいし)の壊し方について話すわね」


クヴァルダさんに自分用にも椅子を出してもらい、咳払いして仕切り直すミナスさん。

わかりやすいようにと再びタブレットを取り出した。


「さっき、この世界と魔界の周期による影響の話はしたわよね?実は…この世界に影響を与えているもう一つの世界があるの。それが、魔界と対をなす存在…聖界(せいかい)よ」


聖界!

昔読んだ絵本に出てきたの見たことある!


「この聖界は魔界とは完全に相反する存在で、お互いを打ち消し合う力があると言われているわ。そして聖界も一定の周期で移動していて、この世界に最接近した際には聖気(せいき)を生み出しているの」


「じゃあ、その聖気が要石を壊す鍵になるという事…か」


「ええ!流石お義兄さん理解が早い!」


褒めるミナスさんの横で「さすが義兄さんっす!!」と便乗しているクヴァルダさん。

懲りないなぁ。


「でも、聖気ってだけじゃ扱う事は出来ないわ。目にも見えないしね。ただ、聖気を吸い込んで変化した鉱物があるのよ。その鉱物を使えば、要石を壊せる可能性があるわ」


「もしかして、その鉱物を使って聖剣とか作れば良いんすか?」


「剣に限定する必要は無いけど…まぁ、そういう事ね」


「ならオレの出番っすね!腕が鳴るっす!」


え、聖剣!?

うわぁワクワクする!

本当に作れるの?

すごい!


「そんで!その鉱物は何て言うんすか?」


「え?えーとね…」


少しだけ言い淀むミナスさん。

そして小さく言った。


「聖なる鉱物ニャルハルコン…」


…。

なんて?


「ニャルハルコン」


聞き間違いじゃなかった。

随分と…可愛らしいお名前で。


「ちょっと皆んなしてそんな顔で見ないでよ!あたしが名付けた訳じゃないんだから!!」


そうだよね。

ごめん、つい。


それからミナスさんは空気を変えるように再び咳払いした。


「ただね、1つ問題があって…。瘴気は地上に沸くんだけど、聖気が沸くのって海の底…深海の方なのよ。だから鉱物を採るにも海底に行かなきゃいけないの」


え!?そうなの!?

なんかイメージだと空に近い所に沸きそうなのに!

あ、でもメルフローラにあったのは真逆の物だったな…。


「泳いで行けばええんかの?」


「あはは、いくら勇者様でも流石に無理ですよぉ」


「それもそうじゃのう…ばあさんを濡らす訳にもいかんしな」


なんか似たような会話聞いた事ある。

ミナスさん気付いてないけど、これ絶対リュデルさん潜って行った事あるやつだ。

若き頃の勇者規格外。


「じゃあ、魔動潜水艦を使うんすか?」


「ううん。残念だけど水圧に耐えられなくて、深度500m以上潜れる潜水艦は今のところ存在しないの。鉱物があるのは深度1000m地点だから、全然届かないわ」


「え!?じゃあ詰んでるじゃないすか!」


「それなんだけど…1つだけ方法があるわ。海底にも国があるのは知ってる?」


海底に国!?

え、何それ俺のワクワクが止まらない!


「海底の王国『アビシフィカ』。人魚達の住む国ね。実はこの国にそこへ転移する魔道具が存在するのよ」


海底の王国!人魚!転移!

ワクワク単語のオンパレードだ!

うっはー!!


「ただこの転移装置…王家が管理してるから王城にあるのよね」


「「え」」


クヴァルダさんとハモると共にワクワクが一気に沈静する。

王家が管理…ですと?


「それはつまり…王家の許可を得ないと使えないと?」


「そうなります」


シュルツさんの質問に頷くミナスさん。


いやそれ…結局詰んでない?

王家の許可とかどうやって取るの?


流石にミナスさんも王家から許可を貰う方法までは分からないようで、俺達はうーんと頭を悩ませる。

しかし、リュデルさんとジーゼさんは何でもないように言った。


「なんじゃ、そんな事か。さっさと王都へ行くぞぃ」


「王都なんて久しぶりねぇ」


「行く前に連絡はしとくかのぅ」


なんて言いながら実は持っていたらしい魔導フォンを取り出すリュデルさん。


「「「連絡?」」」


と今度はミナスさんも含めてハモる。

そしてその相手が誰なのかを、俺達は王都に着いてから知る事になった。








「おぉーっ、リュー君ジゼちゃん会うのは久しぶりじゃな!」


「ユー君も元気そうで良かったぞ」


「安心したわぁ」


そんな親しげなやり取りをするリュデルさん達の横で、俺達は全員カチンコチンになっていた。

現在居るのは王都イシュピールにある王城の豪華な応接室。

そして目の前にいらっしゃるのはなんと先王様だ。


護衛の人たちメッチャ目光らせてるじゃん。

怖すぎる。

俺胃が痛くなりそう。


「ちょ、ちょっと、ユーバー様と勇者達が友達なんて聞いてないわよ…!」


「オレも知らなかったっすよ!あ、けど20年前に現王が即位する時『ユーくんもついに引退かぁ』って言ってた気がするっす」


「それじゃないの!」


なんて小声でミナスさんとクヴァルダさんがやり取りしている。


後で聞いた話だと70年前に功績を讃えられて城に招かれた際に、15歳でまだ王子だったユーバー様と仲良くなったとか。

いや普通王族とこんな仲良くなる?


「ユー君は今は何しとるんじゃ?」


「とっくに引退した身じゃからな。時折息子の相談に乗るくらいでのんびり暮らしとるわ。リュー君達はどうなんじゃ?」


「そうじゃな、最近だとアークデーモンを倒したわい」


「ははは、そーかそー…」


あ、先王様が固まった。


「なんかアッサリ国の危機を救っとるこの勇者ー!!!」


先程まで朗らかに話していた先王様が頭を抱えながら立ち上がった。

護衛の人達もどう反応したら良いか分からず困惑してるじゃん。


「何をサラッと報告しとんじゃ!勲章もんじゃぞ!!?」


「面倒くさいからええわい」


「面…えぇ…」


天を仰いでからもう一度座り直す先王様。

余程衝撃だったのか「勇者様方にもっと良い茶を出さんかバカもんが!」とテーブルをバンバン叩いてる。

ごちそうさまです。


「と…取り敢えず経緯とここに来た理由を順に説明してもらえるか?」


そう質問され、俺達は出来るだけ分かりやすいように先王様にこれまでの事を説明した。

顔色を何色にも変えながら聞いていた先王様は、何とか状況を飲み込む。


「なる…ほどな。つまり要石を破壊する為に、アビシフィカへの転移装置を使いたいと?」


「うむ、その通りじゃ」


「そうか。国としても要石の存在は一大事じゃからな、致し方ない。向こうの国への通達や使用許可を取るのは私がやろう。…。あーーーー…ワシ引退したんじゃがなぁ。忙しくなりそうじゃなぁ。あーーーーー…」


先王様本音ダダ漏れてますよ。


と、急にリュデルさんに向き直った。


「時にリュー君や、こちらからの頼まれごとも引き受ける気は無いかの?」


「ん?なんじゃ?」


「実は魔物の群れが攻めてきてるせいで今現在ナウでこの王都ピンチでな。ぶっちゃけこんな所で茶を飲んでる場合ですらない」


「「「え!?」」」


今度はこちら側が大声を上げてしまった。


護衛の人達メチャクチャ首を縦に振ってる!

ガチじゃん何で和やかに話してたの!


因みにミナスさんもタブレットを取り出して「あ、ホントだ!」と声を上げてる。

すごい、ちゃんと連絡きてたんだ。


「リュー君達が来る本当に直前に連絡が入ったのだ。天啓かと思ったわい。今前線で騎士団が足の速い小型の魔物から討伐しているが、大型の魔物が王都付近へ到達するのも時間の問題じゃ。民達への避難勧告もこれからで間に合うかわからんし…なんとか討伐に協力してくれんか?というかそれ何とかせんと転移装置も使わせてもらえん」


そりゃそうだ。


「ふむ、もちろんじゃ。直ぐに向かおう」


「場所はどこなの?」


「王都から南の平野で迎え撃っておる。強いヤツさえ何とかしてくれれば、あとは騎士団でどうにか出来るはずじゃ。折角訪ねてきてくれたところ申し訳ないが…よろしく頼む」


「任せい。よし、行くぞ」


リュデルさんの言葉に頷いて全員で立ち上がった。

王城を飛び出し、広くて人通りも多い王都を駆け抜ける。


アークデーモンの時の経験からか、急な事態への対応が早くなってる気がするな。


「ねぇクヴァルダ、一応言っておくけどあたし戦闘は得意じゃないからね?」


「わかってるっす!オレらに任せて見学してても良いっすよ!」


ミナスさんは戦闘苦手なのか。

そうだよね、よく考えたらお医者さんや職人さんが戦える方がおかしいんだよね。


でも、その割には身のこなしが軽い。

かなりの速度で走ってるのに普通に付いてきてるし、街を歩く人々を躱わすのもシュルツさんばりに隙が無い。

情報屋さんだから隠密活動が得意なのかな?


因みに、ジーゼさんの強化のおかげで俺ですら街の人達の目にも止まらないスピードで走れてる。

これは気持ちいい!


「リオル、お前も無理はするな。まだ火傷も治っていないからな」


「うん!」


シュルツさん、あれから俺への話し方にも遠慮が無くなったな。

へへ…いやクヴァルダさんそんな目で見ないで!


そんな睨みから逃げるように走り、あっという間に街を抜ける。

先王様が言っていた平野にも直ぐに到達できた。


「あ、あれじゃないすか!?」


クヴァルダさんが指し示した方を見ると、遠くで騎士達が沢山の魔物と戦っているのが見える。

その中でも特に目立っているのが、銀の髪や瞳にやたらと煌びやレイナードさんじゃん!!


「レイナードさーん!」


「んん!?君達どうしてここに!?」


小型の魔物を斬り伏せながら驚いたようにこちらに振り向くレイナードさん。

剣舞の時は分からなかったけど、ちゃんと戦えるんだね。


「ちょっとした流れで助っ人に来たんすよ〜」


「それは有難い!段々魔物の数が増えてきてマズいと思っていたところだ!勇者が居れば百人力じゃないか!」


そうレイナードさんが言った直後、《グォォォォオオ!》という魔物の野太い叫び声が響いた。

見ると、土煙を上げながら中型や大型の魔物達がどんどん向かってきている。


「立ち話をしている暇は無さそうだね…。詳しい話は奴らを倒してからするとして、とにかく今は協力をお願いするよ!」


その言葉に頷き、全員戦闘態勢に入る。

数は多いけれどアークデーモンに比べたらなんて事ない。

さっさと倒すぞー!


と、思っていたのだが、騎士の人達が戦いの手は止めないものの訝しんで話し始めた。


「あれが…例の勇者達?」


「ドラゴン倒したって聞いたけど…お年だし正直そうは見えないよな?」


普通に戦闘を任せてくれようとしているレイナードさんと違い、戸惑いを見せる。


うん、まぁ、90歳のお爺さんと瀕死のお婆さんだもんね。

そうなるか。


「実は他の人が倒したとか…?」


「けど他って…医者と職人と女と子供だぞ?」


そうやって聞くとヤバいなこのメンツ。


そんな声に「お前達失礼だぞ!」とレイナードさんが一括し「「「すみません!」」」と謝る騎士達。


ありがとうレイナードさん。

騎士達に共感してごめんね。


そんなやり取りをしている間に、魔物達はもう目の前まで迫っていた。

とにかく、今は戦闘に集中だ!



そうして俺達は、半信半疑な騎士達と共に魔物の大群と対峙したのだった。




最初はプリコンのみの登場で考えてた筈のレイナードさんがまた出てきましたw

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