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第12話 アークデーモン



《あらぁ〜私が居ない間にそんな事になってたの!?》


その辺を飛び回って戻ってきたローザさんと合流し、状況を説明した。

ちょっと離れている間にこんな大事になっていたらその反応も当然だろう。


「取り敢えずローザ、アークデーモンが出現しそうな場所を探すのを手伝ってくれんか?」


《もちろんよぉ!ていうか、多分もう見つけてるわ!》


え、早!もう!?


《何か思い出せないかとあちこち飛び回ってたら、東の森の方がスッゴイ嫌な気配で満ちてたの!私気持ち悪くなっちゃって急いで引き返してきちゃったもの!絶対あそこが出現場所だと思うわ!》


おぉ!

屋上に置いてかれた時はどうなのと思ったけど、物凄い良い仕事してくれてる!


「そりゃあちょうど良かったのぅ!時間が無さそうじゃ。早速乗せて行ってくれるか?」


《えぇ!さあみんな乗って乗って〜》


促され、全員でローザさんの背に乗る。

直ぐに飛び立ち、東の方角へと向かった。

ドラゴンの飛行スピードであっという間に森に到達する。


「う…っ」


そこで、俺は思わず顔を顰めた。

ローザさんが言っていた通り、とても禍々しい気配を感じたからだ。


「大丈夫か?」


「はい…。けどこれ、凄いですね…」


背中に手を添えてくれたシュルツさんに何とか返答する。

こんなに嫌な感じを覚えたのは初めてだ。


「無理しない方が良いっすよ?ヤバいと思ったら、じいちゃんに任せて離脱するのが懸命っす」


クヴァルダさんも心配して声を掛けてくれる。

確かに、俺では逆に足手纏いになるかもしれない。

みんなの邪魔にならないよう、戦線離脱も視野に入れとこう。


「あそこ…500m先の地点じゃな、この気配の出所は。ローザ、あそこへ向かってくれ」


《オッケーぇ!》


リュデルさんが場所を特定し、ローザさんに指し示す。

近づいたその場所からは可視できるほどの禍々しい何かが湧き出ていた。

間違いなくあそこにゲートがある。


「…来るぞ!」


そうリュデルさんが言った途端、黒い稲妻のようなモノがその場所から弾けた。

その直後、何かが飛び出してくる。


《あぁ…久しぶりだなぁ》


空を見上げるようにしながら呟いたのは、俺と同じくらいの年頃の少年だった。

貴族のような気品のある服と裏地が赤色の黒いマント、そのマントを突き破るように背中から大きな悪魔の羽が生えている。

青白い肌に水色の髪、そして赤い眼をしたその顔は…恐ろしいほどに整っていた。


《あれ?お出迎えなんて初めてだね》


「…!」


俺達の方へ目を向け、微笑みながら言う美しい少年。

そんな見た目とは裏腹に途轍もない圧に押しつぶされそうになり、あれがアークデーモンだと確信した。

脅威を肌で感じ、汗が背中を伝っていく。


《今回は趣向を変えてみたんだけど、まさかこんなに早くこの姿をお披露目できるなんてね。嬉しいなぁ》


ただ言葉を発しているだけなのに、体がどんどん重くなる。


――グラッ


と、突然ローザさんが傾いた。


《うぅ…!》


頭を押さえるようにしてそのまま落下していき、俺達も慌ててローザさんの背から飛び降りる。

苦しそうなローザさんも何とか着地はしたが、呼吸も荒い。


《ごめ…なさ…。急に、頭が…》


「無理せん方がええ。お主はここで休んでおれ」


ドラゴンにまでこんなに多大な影響を与えるなんて…アークデーモンの恐ろしさにゾッとする。


と、直ぐ真横から声がした。


《大丈夫?楽にしてあげようか》


本当に、全く気付かなかった。

いつの間にか至近距離にアークデーモンはいて、苦しんで動けないローザさんに鋭い爪を迫らせている。


だが、全く反応出来なかった俺と違いリュデルさんが剣をアークデーモンへ素早く振り抜いた。

その攻撃を受け、アークデーモンは200mほど先まで木々を折りながら飛ばされる。


「行くぞ!ジーゼはここでローザと待っておれ!」


ジーゼさんを残し、直ぐにアークデーモンの方へ駆け出すリュデルさん。

俺達も急いで後に続く。


リュデルさんの攻撃を喰らった筈のアークデーモンは、あまりダメージを受けた様子も無く口を開いた。


《ビックリしたなぁ。受け止めたのにこんなに飛ばされるなんて思わなかったよ》


臨戦態勢に入る俺達に、服の土を払い落としながら微笑む。


《あ、自己紹介してなかったね。僕はアークデーモンのゼノ。よろしく…ね!》


言いながら、自分を攻撃したリュデルさんに鋭い爪を向ける。

それを剣で受け止めるリュデルさん。


「こんな攻撃じゃあ傷一つ付けられんぞ?」


《へぇ。本当に強いんだね》


そうして2人が会話している間に、クヴァルダさんも動く。


「変質加工 ツルハシ クラッシュ!」


ツルハシの鉄部分が大きく鋭く伸び、それをゼノの脳天へと振り下ろした。

躊躇なくいったのすごい。


ゼノは直ぐ様後ろに跳んで避け、クヴァルダさんのツルハシは地面に深く突き刺さる。


《危ないなぁ。こんなの喰らったら死んじゃうよ?》


「望むところっす」


刺さったツルハシを簡単に引き抜きゼノに向けるクヴァルダさん。

続くようにシュルツさんも動く。


「絶息術式 インフリクト ポノー」


《痛ったぁ!?》


振ったメスから飛ばされた魔力の塊を受けたゼノが声を上げる。

見た目に変化は無いので、恐らく純粋に痛みだけを与えたのだろう。

こわい。


《うわ、その攻撃ズルいなぁ。避けるしか防ぎようないじゃん》


「そうか。デーモンにも効いたようで良かったよ」


《おっとと》


ゼノの動きが僅かに鈍ったのを見越して続け様に斬り掛かるシュルツさん。

素早い攻撃に、慌ててゼノも避けている。


と、攻撃を避けたゼノがこちら側へと跳んできた。

俺も見学だけしている訳にはいかない。


「天流剣技 時雨(しぐれ) ネロ!」


せめて一撃でも当たるようにと、連続突き攻撃を繰り出した。

けれどそれを身を翻して避けるゼノ。


くそ、掠りもしなかった!


《驚いたなぁ。君ら皆んな強いんだね?それなら、これはどうかな?『放血』》


そう言ってゼノが手を振ると、爪の先から血の刃が無数に飛んできた。

全員がそれを避け、俺もなんとか避け切る。


《はは、やっぱり避けるよね?でもこれならどう?『収束』》


次はどんな攻撃が来るのかと身構えた。

だが、ゼノはその場から動こうとしない。


ん?不発?

と思ったが、リュデルさんが叫んだ。


「後ろじゃ!」


この声で振り返ると、先程飛ばされた刃がまるでブーメランのようにこちらに戻ってきていた。

気付くのが遅れてしまった為、慌てて避けたものの俺とクヴァルダさんは僅かに攻撃を喰らってしまう。


「う…!?」


「ちょっ、なんか吸われたっす!」


本当にちょっとした切り傷程度の筈が、瞬間的に吸い取られたような感覚を受けた。

血の刃はそのままゼノの中へと戻っていき、ゼノは舌舐めずりをする。


《残念。ちょっとしか吸えなかったな。でも、お陰で痛みは消えたよ。ありがとう》


ニコリと笑うゼノに背筋が凍った。


もしかして吸血された!?

しかもそれで回復してる!?


いくら攻撃しても回復されては勝ち目が無い。

回避必須じゃんか!


「これは長引かせられんな」


そう言って、リュデルさんが闘気を発した。


「天流剣技 疾風 レイヴン!」


《!》


俺が使う時とは段違いに大きい風の刃が飛んでいく。

大きいだけではなく、まるで鳥のように形まで変化している。

あまりに速い斬撃は避ける事を許さず、ゼノに直撃した。


《ぐ…あぁあ!》


初めて、ゼノがまともにダメージを受ける。

本人もここまで強力な攻撃だとは思わなかったのだろう。

さっきまであった余裕が影を潜めた。


《く…!放血!収束!》


回復しなければと焦ったのか、先程と同じ攻撃コンボを繰り出すゼノ。


何が来るかわかってて喰らうもんか!


当然のように全て避けた俺達にゼノは歯を食い縛る。


《ならこれはどう?『ブラッドフェスタ』!》


リュデルさんの真上に血の塊が飛ばされた。

それが広がったかと思うと、槍のような形になった血の雨が降り注いだ。

あんな数では避けられる気がしない。


「天流剣技 (かすみ) スペクトラム」


リュデルさんの姿が揺らいで…ぇえ!?

全部その場で避けてる!

どうなってるの!?


流石に今のを全て避けられるとは思わなかったゼノも目を見開いている。

それでも、攻撃の手を休めはしなかった。


《これで終わりだと思わないで。行け!『ヘルハウンド』》


先程の技で地面に広がった血溜まりに手を翳すゼノ。

すると血が蠢き出し、3体の凶暴そうな犬が召喚された。

紫がかった黒い毛皮に光る目で、まさに地獄の猟犬といった感じだ。


うわ!

こっち来た!


「変質加工 鎌 シヤー」


「絶息術式 インフリクト プリギー」


直ぐにクヴァルダさんとシュルツさんはそれぞれ一体ずつ切り裂き倒した。

2人に続くべく俺も技を出す。


「天流剣技 暁 アナラビ!」


飛び掛かってきた猟犬をなんとか俺も両断した。

斬られた事で血を撒き散らせながら消える猟犬。


と、その様子を見ていたゼノがニッと笑って指を鳴らした。


《『焼却』》


――パチンッ


次の瞬間、撒き散らされた血が一気に燃え上がった。

突然の事に対応できない。


――バッ


そんな俺を、一瞬でこちらまで飛んできたリュデルさんが抱えてその場から離れた。

けれどほんの僅かに炎が腕を掠める。


「リュデルさ…うっ!」


「すまん。一瞬遅れてしもうた」


少し掠めただけなのに、その部分が焼けて激痛が走った。

もしリュデルさんが来てくれなかったら確実に死んでいたと思う。


「シュルツ!治療を!」


「はい!」


自力で炎攻撃を避けていたシュルツさんが直ぐに俺の治療に走ってきてくれる。


「蘇生術式 ヒール エンガヴマ」


魔力が薄く伸び、まるで皮膚の代わりになるかの様に火傷した部分を包み込む。

お陰で痛みもだいぶ抑えられた。


「大丈夫だ、この程度なら痕も残らないよ。痛むか?」


「少し…。でも、このくらいなら平気です」


「よし。だが無理はしないように」


そうして、再び全員で立ち向かう。


けれど、今のところリュデルさんの攻撃しかまともに当たっていない。

このままでは戦闘も長引くばかりだ。

どうしたら…


と、悩んだ時だった。


《エアクロー!》


突然空からゼノ目掛けて飛んできた斬撃。

咄嗟にゼノは避けたが、いくつか命中する。


え!?

今のって…ローザさん!?


《ごめんねみんな!遅れちゃったけど、私も頑張って戦うわ!》


「ワタシもいるわよ〜」


ローザさんの背にはジーゼさんも乗っている。

すると突然、身体が軽くなった。


「これは…身体強化!」


流石ジーゼさんの強化!

さっきまでと感覚が全然違う!


ジーゼさんの支援を受けた俺達は、それぞれ先程とは比べ物にならない動きで攻撃を開始した。


《な…一体どうなって…!?》


急に変わった動きにゼノも対応できず、リュデルさん以外の俺達の攻撃も通り始める。

こうなればアークデーモンといえどなす術が無いだろう。


《ぐ…こ、の…》


すると、急にゼノの様子がおかしくなった。

異変に気付き一旦攻撃の手を止める。


《ガァァアアア!!》


ゼノは叫び声と共にゴキゴキと音を立てて変形し始めた。


一回り大きくなり、服と共に皮膚まで破れて筋肉が剥き出しのような身体になる。

背中からは4本の腕が生え、美しかった顔は目と鼻が潰れ獰猛そうな口だけが残った。

その口とは別に、胸にも縦に裂けるような形で口器が現れる。

肋骨がまるで牙のようになっていた。


グロ。


《よく…も…。全員殺してやる!!》


叫んだゼノから発せられる邪気は先程と段違いだ。

これが本当のゼノの姿という事だろう。

全員が再び気を引き締める。


と、カタカタとローザさんが震え出した。

また具合が悪くなってしまったのかと心配で目を向ける。


《あの…姿…。全部、思い出したわ…!!》


ん?

思い出した??


《よくも…よくも私を焼き殺して、ペシュメルガを苦しめてくれたわね!!絶対に許さないんだから!!》


え…えぇぇええ!?

ちょ、ちょっと待って!

それってまさか…!?


《何…だ、お前は》


《忘れたとは言わせないわ!私は500年前…あんたに殺された女よ!!》


うわぁあやっぱり!!

て事は…ローザさんは国王様の婚約者だったの!!?



あまりに衝撃的な事実に、俺達はあんぐりと口を開ける事しか出来なかった。





初めての共闘。

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